小屋/草野大悟2
 
が阻んだ。客たちの絶叫と犬たちの怒号が飛びかい、小屋は騒然となった。従業員と残りのダンサーたちは、犬の一群がなだれ込んできた直後、小屋の非常口から逃げようとした。しかし、そこにも犬たちが待っていた。涎を垂らし、薄ら笑いを浮かべながら逃げてきた者たちの喉仏に食らいついた。
 逃げまどうウサギたちを、犬たちが容赦なくかみ砕いていった。ウサギの白い毛には、まっ赤な血が付着し、犬が激しく首をふるたびに、くわえられているウサギから血しぶきが飛び散り、白いスクリーンに血まみれの絵を描いた。
 小屋の中は血の海になり、内臓を食いちぎられたウサギの死体が、あちこちに転がっていた。ウサギたちに逃げ場はなかった。
[次のページ]
戻る   Point(1)