詩の日めくり 二〇一五年八月一日─三十一日/田中宏輔
 
五年八月二十一日 「『言葉は見ていた。』 第一回」


まあ
あの殺された言葉って
わたし
よく知ってるわ
よくいっしょにある詩人の文章のなかに書き込まれたもの
え?
知らない?
ほら
あの朗読中にぶりぶり、うんこ垂れる詩人よ
ええ
その人よ
その詩人よ
だけど
どうして殺されてしまったのかしらね

あの言葉ね
詩人に悪気はなかったと思うのよ
きっと
何か理由があったのよ
え?
そうよ
じつは
わたし見ちゃったのよ
その詩人が
別の詩人の原稿を剽窃したところ
そこに
あの言葉がいたのよ
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