全行引用による自伝詩。 05/田中宏輔2
 
ンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』6、菅野昭正訳)

一輪の花は百輪の花よりも花やかさを思はせるのです。
(川端康成『美しい日本の私』)

 いったんこの世にあらはれた美は、決してほろびない、と詩人高村光太郎(一八八三ー一九五六)は書いた。「美は次ぎ次ぎとうつりかはりながら、前の美が死なない。」民族の興亡常ないが、その興亡のあとに殘るものは、その民族の持つ美である。そのほかのものは皆、傳承と記録のなかに殘るのみである。「美を高める民族は、人間の魂と生命を高める民族である。」
(川端康成『ほろびぬ美』)

「いやあ、これは本当に驚いたなあ」、とギョームは言った。
 彼女はひどく早口で言
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