色づき色あせて/ただのみきや
 

つぎつぎ埋もれいまは記憶の古層
時は触れた先から砂となって崩れ
いまの暮らしが足跡を記し
明日の労苦が上書きをくりかえす

生きることは
埋葬すること
ちっぽけなわたしのすべてが
埋葬され切ったとき
その総体はどれほどだろう
発掘されることは決してないが

なかったことにはならない
永遠のどこかに埋もれたまま
完全なる「わたし」
エジプトのファラオより
楼蘭の美女よりも
死に封印された生の完成形

目覚めれば
季節の車輪はカタコト
色づき色あせて
歌うように踊るように
つらつら つらつらと
ことのは散らす 秋


          (2025年10月26日)









戻る   Point(6)