春夕べ   もっぷ/エヴァル−ジュ
 


付箋を一つください私まだ三歳のまま外景の中

かの冬が懐かしいかもまだ私母なる海で旅をしていた

雪が降る音と覚えた改元の夜の遠くの母の心音

二月から待たれていると知りながら躊躇っていた三月生まれ

三月のまだ浅い日の朝早くありったけ泣く(愛を知りたい)

産声の願いの尻尾引きずったままで靴紐結んで転ぶ
遊具より砂場ばかりのまだ二歳飽きれば新しい海を訪ねて

春夕焼けむずかったままの生い立ちをあやしてくれて今歌を恋う

姉一人妹一人の生活を東京の中で思い描く夜


両国の回向院まで手を繋ぐ姉と妹水色の初夏

もう恋はしないと決めた寂しさを一人のものと
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