かえらぬ木霊/ただのみきや
 
声の濁り
野葡萄の斑な実りに似て
服毒の
文字の乱れか
へび白く
あらわな
舌の結び目から
糸を引く
忘却へ
産み落とされた
いわれなき申し子の
実らぬ指を
串に刺し
野焼きの詠唱
捲る朝
鳥のふるえを
耳から吊るす
真水をなくした
母は合わせの貝閉ざす
けものくさい
父は嗅ぎ
父は舐め
歯を立てて
あきらめきれず
地蔵になった
赤い小さなあの下着
静かな稲光
いつまでも
いくらまっても


            (2025年11月2日)















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