柵  もっぷ/エヴァル−ジュ
 

片道切符の傷心たちがちっとも少しも

涙など覚えないはずだと私が泣く

彼らは柵との永訣と柵との再会を慣れて

東京へも決してきているはずだから

『おかえり』『ただいま』

未明に共鳴する魂の温もりは
(スマートフォンの冷たい光)

このコートのポケットには

私の孤独は陽光から逃れ

遠ざかってゆく帰省列車の

往復きっぷを買うその日が

永遠に

永遠に訪れないことを
知っている


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