月の子守唄/りつ
 
午前2時の沈黙は
私を深海へと誘(いざな)う

そこにあなたはいない
私はゆっくりと呼吸しながら沈澱する
ひかりも届かぬ真宙の海で
腕も脚も折り畳まれたように
小さく蹲り
このまま永久(とわ)に眠ろうか
最後の一呼吸も放たぬままに
静かに腐乱する骸になろうか

泡にもなれなかった想いを
昇華する術(すべ)を知らない
時が濾過し
透明に還るまで
仄かに淡く色づき
こころうちを漂っている
ずっと信じていたかった
この想いを

月よ
子守唄を唄ってくれないか
波音が寄せては帰りながら
遠ざかっていくように
この想い出が風化するまで

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