晩秋の綿毛/本田憲嵩
 
綿毛、その種、
ほとんど重さのない、
雪のしたの土のなかでも、春へと耐えしのぶ、
石ではない、ちいさな有機の礎、
晩秋のくもり空の下、
とてもめずらしい、
綿毛のタンポポが、白い球体のまま一輪だけ、
そのかたちを未だ留めている、
けれども、いずれ強い風が吹いて、


――ふと視線をうつせば、
  白い頭髪の老婆が、
  黄色い通園帽をかぶった女児を連れて、むこう側へと歩いてゆく――
  そのように、未来(つぎ)へと繋いで、


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