誰も知らない(改訂版)/涙(ルイ)
 
すらないということなのか


人ひとりの命にどれだけの価値があるんだろうか
身近な人じゃなくても
見ず知らずの誰かでも

男は会社の駒としてこき使われ
社会の犠牲になって死んだ

その男は もしかしたら自分だったかもしれない
もしかしたら そこでケータイ弄ってるあなただったかもしれない
明日どうなるのかなんて 誰にもわからない
今いる私たちのいる場所は 決して安全な場所なんかじゃない
それでも私たちは 振替運行の証明書を手に
朝っぱらからイライラさせんなよ 
メーワクだよまったく
そうして足早に それぞれ勤務先へと向かっていく
いつか自分が 白線の外側に立っているかもしれないなんて
想像すらできないままに


今日 ひとりの男が電車に飛び込んで死んだ
理由は誰も知らない








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