全行引用による自伝詩。 08/田中宏輔2
 
ると、真っ暗になるので、なに見えなくなります。川岸が闇に呑まれて、自分がどこにいるのかわからなくなってしまい、気づかぬうちに川岸に頭から突っこんでしまうでしょう。反対に、まるで固い地面のように見える黒い影にでくわすこともあります。それが地面ではないことを見分けられなければ、ありもしないものを避けるために夜のなかをむだにしてしまいます。操舵手はどうやってそれらを見分けると思いますか、ヨーク船長?」フラムはヨークに答えるひまを与えなかった。「記憶に頼るんですよ。昼間のうちに川の姿を憶えてしまうんですよ。隅から隅まで。あらゆる曲がり角、川岸のあらゆる建物、あらゆる木材置場、深みに浅瀬、すれちがう場所、な
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