The Wasteless Land./田中宏輔2
れた敷石(しきいし)のうえを
溜め息まじりに言葉を交わしながら、恋人たちが通り過ぎて行く。
広場に残っていたカップルたちも、夜が更け、噴水が止まると、ぽつぽつと帰りはじめた。
ひとの動く気配がしたので振り返ると、植え込みの楡の樹の後ろから、丸顔の女の子が顔を覗かせた。
あまりに若すぎると思ったが、そばにまでくると、それほどでもないことがわかった。
たどたどしいフランス語で、あなた、ガブリエル伯父さんでしょ、と訊ねられた。
あらかじめ電話で教えられていたとおりに、そうだよ、きみの伯父さんだよ、と答えると
彼女は微笑んで、地下鉄に乗るのね、と言い、ぼくの腕をとって歩き出した。
すみ
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