The Wasteless Land./田中宏輔2
てみれば、ぼくの愛しい妻、マルガレーテに似ているような気がしてきた。
この胸の奥深くに仕舞い込まれた、ぼくの花、ぼくの愛しいマルガレーテの面影に。
色褪せることのない、その面影。すべての花のなかで、もっとも清純で、可愛らしい花よ。
おいおい、悪魔め、その臭い息を、ぼくの耳もとに吹きかけるな。
マルガレーテがいなくなってからというもの、ずっと、ぼくのこころは、枯れた泉のようだった。
ただ、マルガレーテと過ごした日々が、そのすばらしい思い出だけが、ぼくを生かしてきた。
たとえ、どれほど美しい女性を見かけても、こころ惹かれることなどなかった。けっして、なかった。
つねに、ぼくの愛しい妻、マ
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