The Wasteless Land./田中宏輔2
 
ゼントを買うために、彼は、父親から譲り受けた
もとは祖父のものであった、上等の金時計を売らなければならなかった。
ミス・マーサ・ミーチャムは四十歳、通りの角で、小さなパン屋を営んでいる。
最近、彼女は、自分の店にくる客の一人に、思いを寄せている。
男は、いつも(新しいパンの半分の値段の)古パンを二個、買って行く。
こんど、彼のすきをみて、古パンのなかに、上等のバターをたっぷり入れてあげましょう。
彼女は、吊革につかまりながら、ジムのまえで、そんなことを考えていた。
馬の足を持つ、このねじくれた霊、メフィストーフェレスなる
わたしには、こうした事情が、すぐにわかるのだ。
二人の耳も
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