The Wasteless Land./田中宏輔2
といえば、岩の山、岩の谷、岩と岩ばかりの風景だった。
しかし、どんなにかわいた岩の下にも、水がある。
どれほどかわいた岩地でも、その下には、かならず水が流れているのだ。
もとをたどれば、詩人という言葉は
小石のうえを流れる水の音を表わすアラム語に行きつく。
こころの奥底に、流れる水がなければ、詩など書けるはずもない。
ひとを愛し、人生を愛してこそ、詩人であるのだから。
いまひとたび、そのかわいた岩々の裂け目から水を噴き出させ
その胸のなかに、情欲の泉を溢れ出させてやろう。
悪戯(いたずら)好きのわたしが、ほんとうに好きなのは
神の目に正しい道を歩まんとする者を
その道から踏み
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)