The Wasteless Land./田中宏輔2
 
る、この二人のやりとりも、また、一つの芝居、一つの幻に違いない。
ならば、なぜ、なにゆえ、この胸の奥深く、情欲の湧き水が、岩の狭間(はざま)に噴き上がるのか。
まことに、愛着(あいぢやく)の道は、その根の深きもの。これを求むること、やむ時なし。
まるで、岩から岩へと激する滝が、欲望に荒れ狂いながら深淵に落ち込むようなものだ。
親指を噛んで、そら、悪魔よ、このひと垂(た)らしの血でいいのか。
グレートヘンが、いや、あの娘が、ハンカチを落とした。
おお、悪魔よ。あのハンカチを、取ってきておくれ。
ダ!
ダ・ニムス! ほら受け取るがいい。
おお、この芳(かぐわ)しい香りよ。
なんたる
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