金属のシマウマ、あるいは驚異についての論考/牛坂夏輝
出が、やはり、遭難した音楽家の恋愛譚のように、冷たい痙攣をしながら、私たちの外部を揺らした。「ぼくの、バターライスの夢、果樹園、果樹園」その声は、一九世紀の展覧会において、ベートーベンに酷似した人物の横で、突如、発現した。偉大な吟遊詩人の困難、偉大な枕カバー、その他、折り重なっている巨大な鳥の群れ、それらが、軽蔑された経験として、展覧会では並べられた。それは、非ユークリッド幾何学の発見である。私たちは意味のない獲得物について、どう考えるだろうか。それを考えることは、またもや、驚異について考えることに、等しくなってくる。例えば、来世の欲求や、リスボンから東京にやって来た、緩慢な肖像画の精神を持った美
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