金属のシマウマ、あるいは驚異についての論考/牛坂夏輝
 
持つ。逆行する形で演奏される緻密な構造を持つ終結部を欠いた船着き場が、私たちの望む形で、驚異を喚起する。喚起については、ペンデレツキ作曲の「ヤコブの夢」という楽曲を聴くことで、ある理解が深まり、私たちはその音楽を聴いて、あの樹液を舐める青年を、再び思い出したのだ。その表情は、持続的な文明における、火炎放射器の習慣的な主観性を、浮かべているようだった。彼は、自らの眼球をくり抜いて「ぼくは、夜に目覚め、鳥たちにバターロールを配る、ぼくは、念入りな殉教者として、ボルドー産の赤ワインを、音楽に変える」と語りながら、山脈をおりていく。彼の様子を見て、私たちは、静けさとは、ほとんどが呪いであると気づいた。砂が
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