雪だるま/山下ヤモリ
みんながぐっすり寝たころに
あたりがじんわり冷え込んで
気がついたらわたしは佇んでいた
どこにも行けず
なんにも喋れず
しんしんと降る悲しみのなかで
わたしは佇んでいる
冷たさとともに空からバケツが降ってきて
誰かが刺した木の枝がぐさりと沈み込む
どこにも行けず
なんにも喋れず
しんしんと降る悲しみのなかで
わたしは佇んでいる
誰かがマフラーを巻いてくれて
じんわり
じんわりじんわりと溶けていく
しんしんと降る悲しみのなかで
あたたかさの方に消えてゆこう
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