深さを知っていれば
誰の心も
覗く必要はない
酒を飲んで
楽しくなって笑い合い
滑らかな表面の
心地いいあたりで互いに漂う
浅い関係の
なんという絶妙な距離
純粋 ....
時々
体の壊れる音がする
それとも
心の壊れる音か
耳鳴りは
永遠に続くかのような蝉時雨
悲しくはない
目を閉じれば
あの夏にいる
道はつづいてゆく
途切れながらも果てしなく
途次の三叉路で
焼きそばの匂いにさそわれて
この街道に至る
次の五叉路では
上海の娘が待っていて
サイレンのように
髪を偏西風に ....
――あなたは、聴くだろう。
日々の深層の穴へ
ひとすじの{ルビ釣瓶=つるべ}が…下降する、あの音を。
――漆黒の闇にて
遥かな昔に創造された、あなたという人。
遺伝子に刻まれた、ひとつの ....
途中雨が降ってきた。傘をさすのも買うのもめんどくさくてそのまま歩いた。
昭和通りの路地に店を探した。
愛する男を独り占めしたくて、痴情の果てに男の性器を切り落とした女は、六十を過ぎてなお妖艶 ....
ぼくは師匠にうでを見込まれて、理髪店を一軒任されるようになった。へたくそが髪を切ると、髪が伸びるとそこだけ浮いたようになるのだが、師匠に教わったやり方だとそうはならなかった。
髪の毛というのは伸 ....
和夫くんはさすがだった。秋が深まるころにはいじめられなくなっていた。
和夫くんのお父さんが無実になった訳ではなかった。
小学生の頃から和夫くんを知っているひとなら、先生からもつねに一目置かれ ....
藤の花が咲いています
あなたの知らないところで
藤の花が咲いています
あなたの見えないところで
今はもう打ち捨てられた山林の
雑木林が煙る春
柔らかな新芽の真新しい色
....
巨大災害に備えて何かするのは
結局運よく助かった場合の
事後対応のためだ
被害に遭わなかった俺達は
悲惨な光景を目の当たりにして
「やっぱり身を委ねるしかないのだな・・・」
と気付いて ....
我が身にはこれからも
あまりゆかりのない言葉
新学期
なぜだかわからないが
断固として幼稚園にも行かず
日々放浪していた僕にあたえられた
小学校という世界の箱庭で
やっと社会 ....
ねぇ…
真実も偽りも
本当も嘘も
現実も理想も
全てを見たあなたに
今何を映してるの?
このあおい夜を切り取って縫い付けた右腿は
ぐずぐずと黒く膿んでしまったから
風通しの良い洋服を探している
ふやけて黄ばんだ気に入りの本にはさんだ言葉をまだおぼえているか
いいえわすれて ....
どうしてまた
と 問う度に空瓶はふえ
瓶の立つ数とおなじだけ
言葉を見失う
不運と幸運を釣り合うように計ってのせた菓子盆
運ぶうちに混ざり合ったこれをいったい何と言う
花びらが散って
緑が眩しい輝く気持ち
身体中で吸い込む
新しい季節のはじまり
いい匂い
鮮やかな破裂と
飛び散る細胞
広がる感覚
蠢く命と呼吸音
吐き出す息と
春風がどこまでも
....
鍵を右に回したなら
右の扉の錠が回って
鍵を左に回したなら
左の扉の錠前が回る
フィギャーノート創始者の
マルックとカールロに会った2006年
彼らは「北方派五分楽団」の演奏を観て
指導者が素晴らしいとコメントしたけど
ボクが指導者だと知った時に
信じられないという ....
海岸に沿った
緩やかな下り坂を
自転車に乗ったきみが
麦わら帽子を
左手で押さえながら
駆け抜ける
両足が離れたペダルは
クルクルと空気を
掻き回している
きみの後を
女性警官 ....
胸の上の微小な斑点は
ほんの少しの
風力だけでその
配置を変えてしまい
圧力は少しずつ逸れていく
本棚は不格好に撓み
空の瓶底が
真新しい壁と同じ色になったら
抽斗を開ける
清潔な
....
夕方のショッピングモールで見かけた
こげ茶のブレザーと黒いリュック
早足の後姿は あの頃と同じで
リュックから にょきっと突き出て揺れているゴボウ
器用な指先を思い出す
鉛筆を削 ....
巨人もバドミントンも
既に過去の出来事に成りつつある
何故なら
それ以上の事件や事故や
災害があった場合
まったく取るに足らないことだからだ
普段如何に我々が
どうでもいいことに ....
雨上がりの街は
誰もいない
私は歩いた
そこにある道を歩いて行った
休日は 友達と 酒を飲んでいたが
人ごみは嫌いになり
公園に咲く花を眺めたりしていた
私も歳をとったのかもしれない ....
何が好きですか
あなたは
何が好きですか
野菜は何が好きですか?
私は毎日トマトが食べたい
アイスクリームの味は
何が好きですか?
私は濃いビターチョコが好き
....
ボディブローのように
じわじわ効いてくるのは
僕の中にも君が居るから
君の中にも居るらしい僕の片鱗を
君がこよなく憎むように
その嘲りは抗い難い誘惑
拒むにしても
逃げるにし ....
風が風を離れ 人が人を離れ
のぞきこみあう空は 青く
もくもく 雲 かげリいだく
つきとめられ つきつけられ
ほしい ほしくない
のぞむ のぞまない
組み込まれた祈りも呪いも ....
目の前に、
どろどろとしたへどろの塊のような、
いきものが現れる。
いきものは異臭を放ちながら、
目だけをぎょろぎょろさせている。
いきものは何も言わない。
よく見るといきものの身体には、 ....
思念の淵で息をしている、
私の息づかい。
耳から流れ込む、
目の海の水を、
飲み込んでは吐き繰り返しながら。
呼吸が荒くなる。
海になった私の指から、
あふれてくる思いを、
窓硝子に叩 ....
中学にあがってはじめての夏休みが終わり二学期が始まると、ぼくは和夫くんと帰り道を一緒にしなくなった。喧嘩をしたわけではない。和夫くんが喧嘩をするはずがない。ぼくが和夫くんを嫌いになるはずもない。
....
家に帰るとお母さんがおはぎをたくさんつくっていた。だからぼくは太るのだ。いじめられるのだ。それにしてもきょうは量が多い。ぼくがどうしたの聞くと和夫くんのお寺に持っていくのだという。
今夜おおきな ....
和夫くんは幼い頃から股関節を患っていた。
学校の帰り道、ぼくは和夫くんと歩くようにしていた。
和夫くんは高名な宗教家の息子さんで学校でも人望があった。和夫くんが松葉づえをつきながらすたすたと ....
海岸線が
あったはずじゃあなかったのか
爪先ばかりが切り落とされて転がっている
早く食えと差し出している手の青さ
困ったように笑う口の中に
取り戻せない爪先を押し込んだ
海岸線は見つけられ ....
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