真夜中に目を覚ますと
キッチンのテーブルに誰か座っている
見れば自分ではないか
寝ないのか、と問うと、寝るのか、と答える
最近どう、と問うと、知ってるくせに、と答える
仕方がないので向かい側 ....
この石の中では
絶えず雨が降っている

そう言って一粒の小石を
娘の手のひらに載せた
その人は叔父だった
いつでも青いマントを着ていた

血の繋がりはないけれど
とある出来事があって ....
ドーナツの穴に住み
植物や動物と会話する
周りを囲んだドーナツに
扉が開くことがあり
人が訪ねて来たりする
右手を上げて少しあいさつ
「おはよう」だったか
「おやすみ」だったか
どちら ....
同僚は羊
羊のくせに出席を取り
羊のくせに宿題を出す
羊なりにはものを考え
羊なりには会議で発言
羊なのに給料をもらい
羊なのにネクタイをしている
あるとき
夕暮れの屋上で呟いた
羊 ....
羊のいない街などに
住みたくはない

眠れない夜に
数えるものがなにもない

夜中まで起きていて
地球でたった一人になって
季節の星座に笑われる

地上に貼りついているものの
そ ....
教えてください
あなたの一番優しいところを
教えてください
あなたの一番疚しいところを
教えてください
あなたの一番嬉しいところを
教えてください
あなたの一番寂しいところを
  
 ....
   わたしもそれなりに
   大きな別れを経験したことがあるけれど
   それらすべてに共通しているのは
   ライオンがいた、ということだ

   動物園が舞台であるわけでも
    ....
あれは
だれかを
思わせる夕焼け

非常口から
眺めていたっけ
ベランダからも
眺めていたっけ
心の窓が
開いていたっけ
絵の具がこぼれて
しまっていたっけ

わたしらを造っ ....
信者が姿を消した
あんなに何かを祈っていたのに
礼拝堂はもぬけの殻
村の人たちは捜索を始めた
くもり空の下
くだものの飴と傘をたずさえ
情報はなにひとつない
あっぱれな行方のくらまし
 ....
ふたりが離れてゆくときは
理由はなにも言わなくていい

ただ一冊の青い本を
ふたりの間に置けばいい

ページをめくれば顔を出すだろう
散歩していた黒猫や
わずかな値段で売られたスズメ
 ....
サキソフォンが夜の道を歩いていた
あたり一帯高級な黒の絵の具を塗りたくったようで
サキソフォンだけが金色に輝いていた
暗闇は光を理解しなかった
途方に暮れかけたころ
黒くて大きな人がどこから ....
仕事をさぼって美術館
展示室をうろついていると
赤いワンピースの女がついて来る
立ち止り絵を眺める横で
ぼそぼそと蘊蓄を語るのだ
頼んでもいないのに不躾な
学芸員にしてはずいぶん
粗野で ....
教会で信者らが祈りを捧げていると
その中に猫が混ざっている
猫は両手を合わせ
皆と同じ祈りの姿勢
神父がわけを尋ねると
猫は見上げて答えた
「ねこのきょうかいは
 こちらではないですか? ....
おはようございません

ペンは
僕自身より大きい

今日一日でひとつでも
いいのが書けたらおなぐさみ

この世の中の怖いこと
ミサイルや放射能
悪い噂や不意のお別れ

どれを取 ....
静かに暮らしたい
   
朝にはパンを焼き
夜には水を飲み

平日は黙って出かけ
休日は車を洗い

あまり欲しがらず
あまりいやがらず

その日あったことはすべて忘れ
一生の終 ....
音もなく
夕暮れがやって来る

偽物の
月が出ている

熱いコーヒーが
冷めているのは
誰かがこっそり
取り代えたから

トランプのカードが
入れ代わるように

駅のホーム ....
俺の天使は壊れている
フリーマーケットで
三千円で買ってきたやつ
今日日
天使の値段は三千円さ
中古で三千円
新品でも五千円しないさ
牛乳を飲むかと尋ねると
首を横に振る
パンを食べ ....
すべての
あどけないものよ
すべての
おとろえたものよ
すべての
あざやかなものよ
すべての
かげりゆくものよ
すべての
にげまどうものよ
すべての
おいかけるものよ
すべての ....
僕は地球の人になる
道路標識をよく見て
交通ルールはしっかり守る
ご贔屓のチームがあって
試合結果に一喜一憂する
ほどほどに勤勉で
ほどほどに怒りを覚え
ほどほどにやさしく
ほどほどに ....
朝を折りたたみ
昼を折りたたみ
犬を折りたたみ
猫を折りたたみ
自宅を折りたたみ
通りを折りたたみ
横断歩道を折りたたみ
バイパスを折りたたみ
街を折りたたみ
都市を折りたたみ
飛 ....
透明な紳士が
君の側にいる

趣味のいいネクタイ
よくみがかれた革靴
透明だから見えないけれど

天使でもなく
守護霊でもない

呪ったりしてない
助けてもくれない

ただ見 ....
団地は
隣人の集合体だ
   
そこには
それぞれのお話
   
それぞれの事情
それぞれの理由
それぞれの歴史
それぞれの食物
それぞれの欲求
それぞれの体位
それぞれの安息 ....
 親しくなった同僚から、自宅に招待された。仕事が終わった後、小一時間ほど電車に揺られていくと、自宅は校外の一軒家である。同居している家族もおらず、気ままな一人暮らしだそうだ。
 飲み物と簡単な手料理 ....
夕焼けを信じます

とても遠くて
あたたかいもの

まいにち見ていても
絶対にさわれないもの

すべての
つくられたものを
だいだい色に
染める絵の具です

女を
男を
 ....
もうこれで、と思ったときも
ページをめくると鳥がいた
青色の羽をしていた

羽毛が抜け落ちるのを
少し気にしながら
西日の当たる部屋
ソファの上で笑ったり

片方は詩人で
片方は旅 ....
紙で飛行機を、なんて
誰が考えたことだろう
一体どれだけ乗れるというのか
世界には70億もの
人間があふれているのに
私たちには牙や鱗がないかわり
言葉というものを持っていて
言葉にある ....
子どものころ
友人の家に遊びに行ったときのことだ
リビングでTVゲームなどして遊んでいると
友人は思い出したように
家での仕事を忘れていたから
ちょっと地下室へ行ってくる、と言う
地下室と ....
家に戻ると白象がいる
リビングの大部分を占める巨体
なぜかしくしく泣いている
いったいどうやって
窓も玄関も
そんな大きさはないのに
どんなに宥めても
泣き止むことがない
仕方なく
 ....
東の空が金色に染まっている
バイパスは渋滞していなかった
感じのよい人と話した
仕事は首尾よく片付いた
昼の定食は美味しかった
久方ぶりにメールが届いた
休暇は上手く取れそうだった
過払 ....
夜明けにだけ
列車の着く駅があるという
そこでは誰も降りないが
そこから誰か乗りこむという
言葉は置いてゆくという
言葉にはできないものを
探しにでかけるところだという
あたらしいものは ....
やまうちあつし(477)
タイトル カテゴリ Point 日付
自分ばかり自由詩317/12/16 7:27
アメジスト自由詩517/12/4 21:12
ミスタードーナツ自由詩217/11/26 16:49
羊の同僚自由詩5*17/10/28 17:47
羊の街自由詩317/10/27 12:44
聖教育自由詩017/10/14 13:49
サヨナライオン自由詩3*17/10/7 7:45
you焼け自由詩4*17/10/6 12:16
信者行方不明自由詩3*17/9/9 18:04
青い本自由詩5*17/9/2 10:45
サキソフォンが夜の道を歩いていた自由詩4*17/8/26 21:28
絵心自由詩4*17/8/21 20:07
世界の祈り自由詩017/8/18 17:42
詩人の挨拶自由詩117/8/15 16:48
ねがい自由詩117/8/12 12:33
うそつき自由詩2*17/8/10 17:05
壊れた天使自由詩217/7/31 21:32
ひかりのあいさつ自由詩217/7/30 17:16
地球の人自由詩117/7/23 16:18
折り紙自由詩10*17/7/18 13:48
透明紳士自由詩117/7/17 16:48
隣人愛自由詩117/7/15 12:34
鹿の王自由詩117/7/11 9:07
信者自由詩317/7/8 16:25
空の教会自由詩8*17/7/6 15:18
紙の飛行機自由詩317/6/21 9:58
昔の魚自由詩3*17/6/19 11:33
living自由詩1*17/6/17 7:12
比較的良い一日自由詩017/6/12 17:25
夜明駅自由詩6*17/5/19 17:52

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