あたらしいものなど何もない
失われて
失われゆく幾十年

あたらしく見えたものは
全部他人のお仕着せだった

地平線を
見たことがあるか
都では地平線が見えない

わたしの住む千 ....
川口の方へ
バスではこばれていると
ひかりに透かして
平熱の町が浮かんだ
病院前駅では
うかがい知れないおもいに黙るひとたちが乗り
次の駅で降りるボタンを
別のひとがつよく押す
一様に ....
しごとの失たいを
星の運行とむすぶのは慣れている
傷を季節と分かちあう
古い知恵

深い疲れのおり
壁にかかった絵をみる
樹氷のある
白い湖の畔

南うまれのわたしが
みないかも ....
生きものを傷める
永い夏は終り
エノコログサは緩み安堵のやわらかさで
午後の風に踊る

一本一本でありながら
一帯そのまま総体の伸びやかさで
秋空を仰ぐすがた

空は
宇宙の闇と光 ....
淋しさとは
消えゆく炎の眩しさです と先日聞いた
ひとの言葉を思い出す

七輪で
ひとり肉片を炙っている

網のすき間から
火が時にやわらかく伸びるのを見ているが
すぐに消え ....
八月の
草加健康センター

高温のサウナで
汗を流していると
空襲の火の海で逃げ惑う人々を
想像する

熱い 熱いと
泣きながら 親や子を亡くして
祈りながら川に飛び込んだひとが
 ....
令和の五月
夏のようでも冬のようでもある夢の白昼
暑さに震えて
五反野駅前を歩いた

わたしのわるい眼では
通行人の姿が見えない影だけが揺らぐ

バス停では
不揃いの椅子が並ぶ
ど ....
生身のひとが
都市に残っている噂とは逆に
鉄路を踏んでゆくと
霊とすれ違った

稀にたたずむ
かつてのひとの家宅は
いま わたしの背丈を遥かに超える蔓草が
幾世紀の愛憎を晴らすように
 ....
水を巡るすがたで
雪崩れる岩は
草や花に縁どられている

上の岩は
黒く新しい
あたりの華奢な塔をぜんぶ砕いて
覆い尽くした

かつて
音を奏でる生きものがこの地表を歩み
独特に ....
どうして
こんなに平穏なのか
冥土へと導く と信じられたホトトギスも
いまは五月の鳥

森を抜け
砂の砦みたいな監的哨跡にのぼって
海のまえに出ると
もう詩に出会った気がした

壁 ....
姿見池には
何も映らない 別名は影見池

梅と詩文を愛惜したひとが
西へ行く路
水鏡を覗き
月に宛てて歌を呟いた

古代の風景は
異国のお伽話よりもわからない

ありもしない罪に ....
幼いとき
旧電車通り と大人たちが呼ぶ
ながい一本道を渡り
手習いを教わった

空も海もしらない
蛍光灯の平板な光がまぶしい

美しくも醜くもない
手本を右に
半紙をよごしてばかり ....
古書店に入ると
老夫婦が内田百閒の日記について
話を交わしていた

百閒先生は
なして小倉については何も
書いちょらんのかねえ と

うねる波の発音に
懐かしい歌謡を聞き分けた

 ....
きみに逢うために
踏んだ路を歩きなおすのは

 唯是西行
 不左遷

と かの詩神ほどの気概や嘆きを抱いていた訳でも
まして花の匂いに誘われたからでも
ない

梅が枝を
敵意のす ....
あおざめ
咳に胸をたたかれ
血が垂れる
効く と言われて
空缶に溜まった何かの肝を
啜れない身が

はたらけばいい
赤い服地をかざすひとにあこがれ
明くる春 山を越えた
紡ぐ糸 ....
茎を裁ちながら
植物は不死
という伝説を信じていた

根があれば
枯れても甦るよ
と友人が教えてくれた
でも切り花は無理だね

びんに差している
茎を
昨日よりも裁つ
活性 ....
形代 律(16)
タイトル カテゴリ Point 日付
あたらしいもの自由詩425/3/31 15:05
土曜日自由詩625/2/8 22:33
水星逆行自由詩1125/2/2 12:23
2024年秋自由詩424/11/20 2:41
「淋しさとは」自由詩424/8/28 23:29
草加健康センター自由詩224/8/11 22:23
五反野自由詩5+24/5/19 9:02
後年自由詩824/5/17 2:58
河口湖自由詩124/5/5 19:14
離島自由詩1024/2/18 21:00
姿見池自由詩5*24/2/3 9:09
手習い自由詩6*24/1/15 3:59
歌謡自由詩4+24/1/11 22:45
自由詩424/1/5 3:51
諏訪自由詩518/8/5 0:32
礼儀自由詩117/3/26 0:08

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