雪が降り積もるだけで
街中から静けさが聞こえてくるのはどうして
昨日通り過ぎた雨が
夜明け前にはすっかり凍りついて
ただ触れている胸の中心だけが溶けて
そこに雫を落とした
ふや ....
涙が溢れ出てしまいそうになる
そんな一人ぼっちの帰り道には
「上を向いて歩こう」と
みんな口をそろえて謳うけれど
見上げればちぎれそうな眼差しの星たち
あっという間に滲んで何も見 ....
いつしか繋がっていたことも忘れていたでしょ
見知らぬ土地に行って、一人で上手に生きたとしても
僕はなんにも変わらないと思っている
空から落ちてきた一筋の光
もう一度、僕らを結びつけ ....
北西からの冷たい冬の風
少し青空が覗けているけれど
私の頭上、分厚い雲はまだ去らない
大人だから、辛いときも耐えなくちゃ、ね
誰もなんにも言ってはくれないけれど
守られる前に守ってもらう ....
雨が涙を少し残して去った後
生温い風のにおい
また春を積み重ねて
いつの間にか大人になんかなって
“新しい今の暮らしは愛おしいものです”
誰にどう説明すればいいのかも分からず
切なげな ....
失った視力はもう取り戻せない
そのことにまだ気付いていない僕ら
不必要なわけではないけれど
そう必要でもなかった
それだから失った
矛盾は何もないはず
ふと理由もなく失望する日は
誰 ....
四月のよく晴れた日
教室の窓際の席で頬杖をつきながら
虚ろなその目にさす光は
誰かが悪戯に映した空
悲しい影を落とした睫毛を縁取る萌黄
かたく結ばれた唇に新しい桜色
そのバックグラウン ....
なんでみんな、いつの間に
どこに消えていったんだろう、と
膝を抱えて考える夜に
私は静かにノートをひらく
たっぷりクリームを
指にとって少し舐める
しあわせが簡単であるように
明日恋 ....
ひとつしかない身体が傷ついていく
潰えては芽生える花のように
太陽が昇り、一日の終わる頃に
気泡のような涙を浮かべて
あともう少しだけ頑張って、なんて
純粋で、自分勝手な願い
アンチロ ....
夏の陽射しの眩しさの中から
隔離されたような
ひんやりとした影を落とす
白さに飲まれた暗い部屋
鼻孔を抜けていく他人の匂いが
なんだか心地良くて
初めての記憶が懐かしい過去を
呼び起 ....
ほつれる心と身体の端くれを
いつも不器用な指で玉結びするの
やわらかな皮膚にあたる異物感を感じて
ちょっとだけ安心したら眠るんだ
誰かに会いたいって思ったまんまで
はりめぐらされたピアノ ....
教室の窓際の席でさ
ルーズリーフのページがひらひらめくられて
あの子はそれを器用に切り取って
便箋に書いた“彼が好き”って
夏休み前の放課後
先生に呼び出し食らってね
“君 ....
泣きそうな声でコール
終電が出ていくよ合図
逢いたくなって週末に
雨の糸を照らすタクシーのヘッドライト
どうしても伝わらない体温を
一本の波に預けて空に投げる
だらしなく膝 ....
春になったら
当たり前のように聞こえてくると思っていたんだ
にわか雨と土の香
遥か陽射し、青々とした歌
太陽が落ちた場所から染まっていく
冷えた腕を隠す前に
呼ぼうとして心に刻んだ名前 ....
社会で生きていくことの意味について悩んでいる私に対して、「まだそんなこと考えてんだ」と鼻で笑っていたけれど
四月一日、その人の刑はもう執行されて、遥か遠くに旅立った。
私はそれを最後ま ....
少し軽めのコートを着た日
春一番が吹いた日
君のため息がこぽこぽと空を昇って
雨を降らせた日
手をはなした瞬間は
何も考えてなどいなかった
執行猶予が間もないから、と言って
君は ....
朝が墜落する前の静けさに
私とあなたは手を繋いで
ただ狭いベッドにぶら下がっていた
午前五時、東京という街
徹夜明けで、熱のひかない目蓋
ピンク色の境界線がぼやけている、口唇
....
びろうどの夜に横たわる、ぎんのつき
チョコレイトの包み紙
きらきらした薄い桜色の花みたいな
甘さがうつってしまった
この指先から離れればひとたび
冷めた夜につれていかれる
あなたの ....
一社しか面接を受けていないのに
不採用の通知や電話が毎日のように届く。
大して入社したかったわけじゃないから別にいいけど。
なんでこんなに頑張るんだろう。
イミなく傷つくことを繰り返し ....
寄せては返す波の連続
満ちても荒れても
規律正しい
君の横顔を思い出す
海みたいな塩からい
あたしの涙
飲まないでいい
優しい笑顔でいて
正しいということを
身体で感じて ....
右斜め、肩の上にはいつも
くだけた表情の君が当たり前のようにいて
「ずっと傍にいる」とささやく、涼しい風が
耳元に吹いてきた、冬が始まる予感を読んだのでした
目を閉じれば風向きが変わったこ ....
ほぐれていく組織
空間の中で一人の身体は
たゆたい
しずくになる
ほころんでいく意識
小さな月と太陽が
ベッドの脇で遊んでいる
影のない蒼い部屋
仕方ないの
合わない靴でも
こういう時代だから
かかとの尖った気持ち
ほんとうは憧れてたけど
大人になって、女の子になって
ヒールを履くようになるなんて
思ってもみなかった
こ ....
冬風浴びて、錆付いた公園のすべりだい
てっぺん見上げたら
薄っぺらい陽の光がやさしくて
その冷たさは一体何度だっただろう
思い出そうとしている
ブランコの軋むリズム
思い出 ....
あたたくて大きな腕、海みたいにたゆたう夜
肋骨ごと壊されそうなくらいにきつく抱きしめられて
まるで小鳥みたいに震えていた、僕の
この赤い心臓を、たとえば掌でぎゅと掴んでみて
潮騒のように押し寄 ....
振り向いてくれない 冷たくてうすい猫の耳です
気まぐれに揺れるリズムの 尻尾を乱暴につかみます
いい匂いのするおうちに 僕もはやく帰りたい
やわらかい布団に包まって 37℃の温度を感じていたい
....
あなたが変えた世界に立っている
それは今にも滲みそうな私
誰の世界
そこには手が届かない
一人ぼっちの世界
割れそうな頭
鳴り止まない音
駆け巡る言葉
あなたの、影、残骸
何 ....
目の前に立ちはだかっていた惑いは消え
頭の中で吹き荒れていた風が止んだ
今は怖いくらい静かになった生活に
呆然と足が竦んでいるだけのこと
その後はいかがですか
風邪など引いていませんか
....
恐る恐る結んだ声が
誰の目にも止まらなくてよかった
途切れそうなほど小さく続ける
名前のない歌
明日になったら忘れられる歌
身体の内側を洗うように
想いを言葉にぶちまけても
....
甘ったるい香りがする石鹸を買ってしまった
ピンク色の泡とともに湧き立つその香りは
苺みたいに美味しそうで
乙女を恋する気持ちにさせる
甘酸っぱい記憶に連れて行かれる
涙で洗い流してしまう ....
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