土を運ぶダンプカー
小さい山と 山の間の雲
錆びた青い橋
古くなった黒い緑

肌寒い出張先にて
父が死んだ時のための弔辞を考える
巨大なビルに入り口ひとつ
入り口にはいると部屋ひとつ
部屋の中にはモニターと小窓と非接触ICリーダーがある

リーダーに手の甲を近づける
奥でリフトの動く音がする
モニターにいつも同じ揺れ ....
青虫と呼ばれても 気にしない
歩くのが遅くても 気にしない

あいつらは 知ってる
大人になったら 生えてくる

黒い骨組 尖った石突き
真っ赤な翼膜 脈打って
はばたく風で 花を散ら ....
年上のガキども
滑り台一つに
ブランコ二つ

あの団地の公園
砂場に爆竹
レンガの花壇

階段おりてぐちゃぐちゃ
虹色の空がじがじが
覚えてるのは強烈な夕方の匂い

焼却炉 ア ....
数十年前にどくどくと輝いていた目玉は
今はくすんだ鈍色に光っている
毎日がくがくと腹を立てていた神経は
今は誰かに怒られないかと怯えている

鈍くなっている
鈍くなっていることに鈍くなって ....
背中が痛い 歯が痛い
いい大人になったのに
じくじくじくじく痛みやがる
鎮痛剤が欠かせない マッサージが欠かせない

指が重い 足が重い
大人の責任 プレッシャー
じくじくじくじく乗っか ....
子供の頃のある秋の日
滑り台の下を掘ると
もぞもぞと何か動いた
見つけたのは 妖怪の幼虫

普通の芋虫に似ていて
体は白くて顔は黒い
目が一つしかなくて
その周りに 赤い隈取り

 ....
荷台に何かを載せている
どこからともなくやってくる
毎日毎日

誰もその顔を見たことがない
どこかで誰かが祈っている
毎日毎日

中身は何かわからない
目の前を通りすぎて行くだけ
 ....
あの柔らかな爪
あの柔らかな腰
あの柔らかな産毛

匂いを嗅ぐと 痺れてしまう
疲れた顔を見て 逸らせなくなる

俺の硬い指
俺の硬い肩
俺の硬い視線

当たってしまえば 裂けて ....
上司に怒られていても
映画で泣いてしまっても
ボーナスがでても
公園でタバコが吸えなくても
どうってことはないんだけど

胸の大きな女を抱いている時
ゲームで負け続けている時
心臓とは ....
俺が家に帰って
スイッチをパチリとやると
部屋中が明るくなりやるがる

いろんなボタンをぐいぐいやると
いろんな電波がぐるぐる出て
部屋中のマシンが動き出す

やつらは先回りしている
 ....
硬い雲達に負けないように
灰色の煙突はまっすぐと立つ
足元でうるさい虫どもの声も気にせず
頭の上を滑る飛行機にも動じない

空がただ高くなるたびに
煙突はぐんぐんのびた
空が夕焼け色にな ....
夏がやってくる
七月あたりにやってくる
雨に飽きた頃にやってくる

無味無感触の綿菓子を押し付けられるような
生命の力強さを押し売りされるような
掃除好きの父親に自室を勝手に片付けられるよ ....
景色はぼやけてはっきりせず、
もう夕方なのにこの電車から降りれないでいる。

手の中で蝉の抜け殻がクシャクシャと潰れて、
自電車ごと川に落ちる。
そうめんはどろどろに伸びていて、
五百円玉 ....
神は
試練を乗り越えられるものにだけ
試練を与えるという

どこからともなく響いてくる
この目覚まし時計の音も
試練だというのか

さっさと止めろ
二分おきに鳴らすな
あと一時間し ....
窓を少し開けると
冷たい風が耳を冷ます
匂いはせず
音は尖って聞こえる

虫はいなくなる
喜んでいなくなる
葉は散ってゆく
喜んで散ってゆく

重い雲と張り詰めた空気
灰色の世界 ....
缶コーヒーは年中冷たいものを飲む

電話先の声はたどたどしくなった
昼間は腕まくりをするようになった
うどん屋でざる蕎麦を食うようになった

相変わらず私は居眠りしてばかり
愛を注がれることもなく
特に考えることもなし
われら屑の葦
水辺で汚くぬかるむだけ
プランクトンは
しゃかしゃか動いて泳いだり
一つが二つになったりする

蟻は
虫の死体を集めたり
卵をお世話したりする

私は
ラーメン屋に入ったり
女を抱いたりもする

ガイ ....
遠くの山頭 雪かぶり
溶ける気配の 無いうちは
家路の途中の その道も
一人歩きを 楽しんで

結露の窓辺に 気付かずに
雪の光に 照らされて
数多の本を 読み捨てて
溢れる知識は 何 ....
凄く寒い
寒すぎてお腹痛くなってきた
いいぞもっと寒くなれ

冬のやつは好きだ
あいつは本気で寒くするから
虫とかも全部殺すし
葉っぱも死ぬ

夏のやつはダメだ
ただ暑くしとけば皆 ....
尻尾の長い鳥の絵とかきんぴかの文字で春を迎える旨とか
そこかしこに張り出されてる

家族やら友達同士で寺だの神社だのに行ったり
屋台が出たりしてふわふわした心持ちになってる

新しい着物だ ....
長いこと彼の声を聞いてない
もう三ヶ月くらい
家の外は寒く
雪が残ってる

彼は普通の顔で
普通の声で
文句を言ってる

きっとどこかの暗い場所にいるのだ
そこは凄く暖かくて苛立っ ....
真っ暗い巣穴の底から
怪しい女の声がする
そいつは知ってる女で
冬が嫌いだと叫んでいる

何故か電気がつかない

私の嫌いなことばかりして
全く何も共感できない
それなのに私の寝床に ....
秋立って 盆が過ぎ
虫の声 増しに増し
日中は 酷暑にて
夏の日よ 思い出に

盛衰の 無慈悲さよ
誰も皆 是非も無く
黒い冬 無常さよ
私一人 心待ち
夕方 喫煙所に入ると
クーラーが効いていて
とても煙たかった

今日も一生懸命仕事をサボった
煙草の火は燃え続けていて
灰皿に灰だけを落としていく
雨が降っている
傘にも人にもビルにも

テレビを全く見ないので
梅雨が明けたかどうかはわからない

そんな私にも雨が降る
皆同じように濡れていく
砂浜の太陽は燃え上がり
空気の密度が上がって
我々を押し潰そうとする

一心不乱に水をかく
不細工に水面を蹴りつける
魂を少しでも前に押し出さなくちゃいけない
柔らかい光から逃げようと
藤棚を下から眺める
滝のよう流れる花びらが
春の喜びを押し付けてくる

地面いっぱいに散らばる藤を見て
また俺だけが生き残ったのだと思う
春を感じすぎたのだ
 ....
しんしんに張った空気が
白い息を粉々に薄めていく
冷たくて暗い夜には
誰だって一人ぼっちになった気持ちだった筈だ

去年の冬を思い出そうとしても
上手く思い出せないでいる
額から汗を滴ら ....
藤山 誠(60)
タイトル カテゴリ Point 日付
三月下旬自由詩025/3/17 10:41
ロボットの葬式自由詩124/10/10 17:06
青虫の羽自由詩224/9/20 15:43
幼少期についてのメモ自由詩2+*24/9/18 19:08
じいさん自由詩324/9/18 3:31
大人の身体自由詩221/6/27 8:30
妖怪の幼虫自由詩219/10/21 15:11
トラックと神様自由詩019/10/18 10:57
あこがれ自由詩1*19/10/17 17:05
魂のようなもの自由詩3*19/10/17 5:08
電気の部屋自由詩018/7/24 3:02
焼却センター自由詩2*18/7/21 0:27
盛夏の考自由詩018/7/19 4:40
夏電車にて自由詩018/7/18 2:06
黄昏の天啓自由詩217/11/7 6:11
冬茜自由詩117/11/7 6:02
葉桜自由詩117/4/27 4:15
屑の葦自由詩017/4/25 18:27
昇順巡り自由詩017/1/31 3:42
寒道行進自由詩017/1/27 3:52
枯渇自由詩117/1/17 5:06
紅白蒲鉾自由詩017/1/17 4:44
峻厳の冬自由詩117/1/16 9:01
暗闇女自由詩016/11/21 2:34
処暑向かい自由詩016/8/17 11:53
曇りの夕暮れ自由詩216/7/27 16:34
夏始め自由詩116/7/26 11:07
海辺自由詩116/7/23 13:24
藤尽きて自由詩116/7/22 4:25
夏夜の心臓自由詩016/7/22 2:45

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