三十代の父親が
生まれたばかりの自分の息子を
社宅のマンションの一二階の窓から
投げ落とした


覚せい剤が欲しい実母は
再婚相手の男とつるんで
小学生の娘に
売春をさせていた

 ....
赤茶けたカーテンを捲って覗く
窓のむこうの電柱
電球の切れかかった外灯が
ぱちぱちと
青白く点滅しているのを きみはぼんやりと眺めている
けれども そのように
いずれパチンと爆ぜて
途切 ....


赤トンボたちが
飛行機のルーツのように飛行している
一日ごとに冷たくなる風が
透明に流れている青空の清れつさと
黄いろい木々の退廃を同時に包含している
秋の午後
パズルのピー ....
硬く無機質な書類の文字列と女に
ぼくはいつも復讐する
三階の更衣室から
白く冷たい廊下をえて
いつも非常階段を下るハイヒールの響き
その規則ただしいリズム
それがミリタリーにぼくに木霊する ....
夕暮れどき
一日の仕事を終え
石段を弾むようにかけおりて
家路へと急ぐ、うしろ髪を簡素にたばねた初老の少女
時刻を告げるためのモノラルのスピーカーが
懐かしい音楽の一節で
夕暮れのあたり一 ....
なにも書かれていない
紙の上から立ちのぼる
青白い砂漠
その雪原のただなかで
花にも瞼があることを教えてくれた人が
透明なグランドピアノを弾いてくれる
その滑らかな指のうごきで
雪のよう ....
寒波が孤独と手をくんで
夜と星がふるえる


色おちした布団のなか
小さなぬいぐるみのようにつつまれながら
大きなぬいぐるみにつつまれて
ねむる
小さなぬいぐるみをつつみこむように
 ....
ヒラリ
ひとつひとつの
想いは
幻のように生まれては
虹色の色あいの
花ビラとなり
刻々と
その色あいを変化させながら
宙へと
おだやかに 無数に舞っていた
(おぼろな感覚だけを
 ....
いつも気になっていたのは
君の鼓動、
タイムリミットのある
運命みたいに
乱ざつに履きかえた内靴と外靴
しろくおもみのないものが
花びらの速度で降りつづける夜
水平線の見える
駐車場へ ....
木製の昼の頭蓋の
硬さとおなじだけ
いつまでも揺蕩っていたい
すこしだけ曲げた
指さきと指さきとで
共有しあう
些細な、ひとひらの花弁をひとつの接点として
子供がつくった水色のゼリィーの ....


太陽が冷たい大気をとおして
八角形にかくばっている
冬の朝
道路は人びとのいとなみに活気づいている
みなの吐くしろい息が揺れている


むこうの馬小屋のひらかれた窓から
茶色 ....
過ぎていった季節を常夜灯のように思う
わたしは揺り椅子の二つの脚に停留の錨を下ろし
アンテナの代わりに
机のうえの海に花瓶と丈高い花を置いて
自分のなかの未知なる惑星を探りだす
(わたしは丈 ....
ハラリ
腰までながい黒い頭髪
ぼくの初恋の少年の恥じらいを取り戻させるもの


――垣間見える
年上だったあの女(ひと)の面影


フワリ
仄かなリンスの香り
お澄ましのお姉さん ....
暗い夜 かの女はやって来る
静まりかえった廊下にうつろに木霊する甘い声
その濡れたような声 きつく漂ってくる麝香の香り
そのとき ぼくはいつも自然に布団の中で目覚めている


やがて襖はお ....
湿った黒髪の纏わりつく夜
子供のように無邪気な指先
で確かめる暗がりのなか憂
欝な鏡面のように光る素裸
のゼラチン質、顔を埋めて
息も絶え絶えに幾度となく
試みられる潜水、ふと見上
げれ ....
メロウなサックス 黒いランジェリーの黒魔術
交錯するグラスの水晶の煌めき じっとりと焼
き爛れてゆく黒い蛇の腰つき そのすこし萎び
た手の冷やかさ 垣間見える策士の法令線 狡
猾な蛇の舌と舌  ....
とおくの海から聞こえる
漁船のエンジン音が
夜の上空にどんよりと膜を張る
夜露に濡れた家々の屋根が
魚の腹のように光る
窓の奥で、
そのようにしっとりと濡れていく
濡れていく
まるで母 ....
液体の膨張がぼくを支配する
そのしぶきが吹き零れようとするのを抑える
漁火のように照る女の
光るふたつのオニキス
そこに浮かぶ小さな彗星の軌跡
じりじりと焼き爛れる腰の捻り
ぼくの血管の鉱 ....
   1

やさしいきみはあまやかな声の中に居た
水のせせらぎの癒しにも似た音色
きみは水で形成されたうつくしい水精(ナンフ)だった
ぼくはひとつの水槽の中に入るように きみのなかに熔けてゆ ....
本田憲嵩(259)
タイトル カテゴリ Point 日付
断絶自由詩317/2/13 1:14
ボトルシップ自由詩517/2/12 17:34
自由詩16*17/1/25 12:08
ケ・リ自由詩217/1/25 1:28
夕暮れ自由詩917/1/20 2:01
氷結自由詩1317/1/15 0:06
ぬいぐるみ自由詩517/1/10 23:50
凍結(ver.2)自由詩417/1/9 13:56
融解自由詩717/1/6 11:04
淡い水色の自由詩317/1/6 10:58
冬のしっぽ自由詩5*17/1/5 12:33
星星自由詩517/1/3 2:10
凍結自由詩116/5/6 3:07
骨女自由詩216/5/6 3:04
流星自由詩116/5/5 1:48
黒魔術(改)自由詩016/5/5 1:47
魚(改)自由詩416/5/5 1:46
沸点自由詩116/5/4 1:44
水精自由詩316/5/4 1:31

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