ぷかぷかと
浮かんでいるように見えますか
それは
沈み損ねたのですよ

強風に 微風に
打たれては向きを変え
大波に 小波に
押され引かれ流されて

陽を 月光を 星明かりを水と
 ....
{引用=糞ありて 四季もまたあり}

菜の花に{ルビ撓垂=しなだ}れ掛る犬の糞



糞踏みて叫ぶ声あり花の陰



この窓へ糞かけたるか{ルビ巣立鳥=すだちどり}



 ....
子供がひとり
園庭の松の木の半ばに
枝葉の中に隠れるように腰かけて
松葉相撲をしていた
何度も何度も
敗れた方を空中へ散らし
亡骸を見送る
間もなく次の葉をむしり取り戦わせる
何度も何 ....
体内を流れる時間の
表面に浮かんだネップ
渓流を割る石のように
折々に
かき乱す
いっそ家禽になれたらと切望するほどに
自由であることが――――――――。
{引用=
職人は均質に仕上げ ....
ここは箱庭、{ルビ葡萄色=えびいろ}地獄、
むわっと暑く、空気も葡萄色、味はない。
残念ですね、空気じゃ腹は膨れない。

煮えたぎる土鍋は、
カセットコンロに鎮座して、
ぐつぐつぐつぐつ黄 ....
 自傷する人や死にたい人をネットで見かけると、たまに、無力感がぶわわわっと首筋を撫でる。「私も自傷した事が、死にたいと思った事がある。」と言ったところでどうだい、その人は私ではない。私にはない希望と絶 .... これまでに人は
この世界に塵芥のごとく
いいえ、もっと些末な
不織布マスクになら引っ掛かるような
やっぱりすり抜けるような
ええ、そんなアレでした。

たとえば私の裡の、あるひとつの考え ....
休日の昼下りの
煙草には新鮮なコーヒーが必要だ
  コーヒーには甘ったるいチョコレート
  チョコレートにはソリチュード
私は私だけの為に
深煎りのマンデリンをハンドドリップで淹れて

 ....
もうその土地は更地にして
地主さんへ返したそうですが

礼文の古い家 元は漁師の 父方の親戚の家には
ものすごく腰の曲がったおばあさんが
何年ものあいだ 一人で住んでおりました

私の母 ....
飼い慣らされた平和ボケ
上等だよ
懐に武器を持ち
兵器の影を平和と呼ぶ世界に
{ルビ私=庶民}がしがみつき生きる価値があるのかい

   * * *

対話を放棄したのか
そこへ至る ....
東京の街へは二度と来るものか

、と誓った夏の終わりの東京。
ノンアルコールを片手に私はヤモリだった。

   * * *

{ルビ「あれ? 未成年だっけ?」=大人の男の人の声}が私に当 ....
日が昇っては沈むように
うつろう
私は
早く死ななければならないのですが
また手が塞がっているふりをするのでしょう
ふかふかの 布団の中にだけ在る しじま
獰猛な憂鬱を{ルビ誘=いざな}う 呼吸 冬空にしがみつく枯れ葉
私の食道の裾 擽る赤黒い衝動
その指先の なんと神経質そうなことか

   朝を妨げな ....
ズッキーニ座流星群は今夜がピークだよ♪
そう言いながら目の前を横切る鰊を
とりあえず一撫でして歩き出す
何時がオススメだとか、方角はどっちだとか?
……ッどおぉぉぅでもいいよ。

空は
 ....
小川の中に立つてゐた

ほんたうに小さな
足首が溺れない深さの
跨いで越えられさうな幅の
小さな川の流れの中に
私はひとり

世界を廻る水の一端に触れてゐる

とまることのない流れ ....
夜をあたたかにする
二月の雪は
ほとんど真っ直ぐに降る
小石を詰めた財布が
昏い水に沈むように
語られない常識
掴み損ねた本能

常磐色の烏が一羽、胡桃の枝から生えていた。

   * * *

共感はエメラルド
しかし憧憬はすでに色褪せ
疑念は大気に溶けひろがっている

 ....
高齢の母子が凍死していた
アパートの一室を目がけ
放水車が生温いゼリー液をまいている

青空にキラキラと
イチゴフレーバーはキラキラと

少し固まりながら落ちてくる
ゼリーに辺りは満た ....
日の出の少し前
薄闇に息づく 乾いた唇へシロップを垂らす
これは永眠への備え

しかし、それを十分に行える生物は
私の知る限り猫のみである


   “cock-a-doodle-do ....
だだっ広い雪原の片隅
柏はカラカラと葉を震わせ、
息苦しさを覚えるほどに白い小径を
雪焼けした子供たちが駆けていく。

 チリリ
    チリリ

  チリチリ
      チリリ
 ....
干上がりかけた沢の縁
山椒魚は怒るまい
ペンケのダムもパンケの家も
知らずに不幸と泣くだろか
ただ生きるのみの今世に
祖父の語つた魚に逢へずとも

  謳歌せよと、
  忘れられ、た、 ....
殺意とは海底からくつくつと湧くあぶく

潮のうねりに揉まれ
白波に紛れるように

  混ざり合う
        記録されない日常
  を構成する
         切り捨てられる方を ....
己の肉を削ぎ落とし平然と泳ぐ
あの人たちの刃は
余程よく研がれているのだろう。

捨てられた、肉片。その腐る様、
鮮やかに、グレイッシュの。
あるじから存在を否定された、
小さな瑕のある ....
紫外線量だけはいっちょ前に初夏の
寒いオホーツクの波間へ海鵜が潜って
ぴょこりと浮かぶ
嘴の一つが淡く 光った。
あれは
いつかの私の恋心だろうか……

潮風を爽やかに甘いだけだと思って ....
{引用=無垢な滴よ
そのドアの向こうには何があると思う?
こちらとあちらが
交わらない為に生まれた
無垢な欲望よ}


私の部屋には壁がない
けれど、室内にはじっとりと
危うさが飽和 ....
私を綴じる雨の影よ、色褪せないでおくれ
と白衣の数学教諭のお情けの入っていたブリキ缶が匿う
  なんという薄っぺらな人生!
  そう書き添えたら手拭いで蜂を叩き落とし
  生死は確認せずに恭し ....
子供の頃から私は高い場所が好きだった。
家の中なら、
天井に散らばした星に手が届くロフトベッド、
に、寝ていれば、
リビングの、
話し声が遠くなるから。

床に布団を敷いて寝ると、
柱 ....
春や こんこん
はぁやく こんこん

春や こんこん
うちへさ こんこん

こんこん

こんこん

もしも、はよう着いたとて
何するつもりもあるまいが

春や こんこん

 ....
おすまししたミシンさんの濁った油には、
シルクピンと埃と三月の寂しさを愛しくさせる成分、
例えば、先輩の輝かしい功績やひたむきな放課後、
後輩のまっすぐな憧れや貪欲な昼休み、
その間に挟まれた ....
例えば今、息を吐く。
そして、二度と吸うことが無くてもいい――

結論からいえば
その日は私の声音に含まれる死神の衣擦れが
転覆病の金魚の側線を掠めただけだった
パクパクする半透明な唇を読 ....
(53)
タイトル カテゴリ Point 日付
認識に関する五つ目の欠片を溶くには多過ぎる水の表面に自由詩225/12/20 19:34
(糞俳句)俳句2*25/10/3 23:49
相対的に大きな松と宇宙を育む自由詩3*25/9/23 22:21
認識に関する四つ目の欠片にぶつけた足の爪の三つの折り目自由詩3*25/9/13 19:58
飛び散れ葡萄色自由詩0*25/9/11 22:31
冷奴自由詩4*25/9/6 15:22
ここにある塵の一辺と等しい辺を持つ塵はいくつ存在したか自由詩4*25/8/27 23:52
ワンルームに満たされるもの自由詩124/8/4 17:17
漁師の家 うつくしい硝子自由詩8*24/3/17 13:14
労働者は使える頭数が揃っていれば、きのこ派かたけのこ派かは問 ...自由詩224/2/29 23:57
無精卵は孵らない自由詩224/1/29 0:15
五行歌自由詩123/5/14 14:28
無題(ふかふかの 布団の中にだけ在る しじま)自由詩023/1/29 13:51
帰路 〜ズッキーニ座流星群のあった日〜自由詩0*22/10/19 23:06
水鏡自由詩122/8/13 1:15
五行歌自由詩222/7/6 17:39
認識に関する三つ目の切片を囲う九つの蝋燭自由詩122/1/20 0:45
イチゴゼリー(無果汁、ゼロカロリー)自由詩0*22/1/20 0:10
認識に関する二つ目の切片に至るまでに拾われた七つのパンくず自由詩020/3/14 16:49
硝子のてんとう虫は凍空を飛ぶ自由詩120/1/21 21:22
挽歌自由詩4*19/11/7 17:37
素心自由詩019/10/24 19:26
収集癖自由詩0*19/10/8 17:39
自由詩019/8/14 18:56
結露凍結自由詩319/4/28 15:25
終末にはほど遠い平日の自由詩019/4/9 23:26
秋の夕暮れ、水溜まりはおおよそ零度自由詩519/3/20 16:41
雪割り自由詩219/3/13 15:47
卒業自由詩519/3/7 14:41
淀みに浮かぶ、あれやそれ自由詩219/2/14 16:20

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