鳥になりたいと思う
小さな鳥になりたい
大きな翼で高く飛べなくてもいい
深い谷を見下ろす勇気は無いから
あなたの手のひらで鳴いて
頭をそっと撫でてほしいだけ
息がかかるだけでいい
....
冬休み最後の日
オルゴールがゆっくりと
視界に足跡をつけていく
私は一人ピアノの前に座り
昨日の夜 街灯の下に忘れた
温もりを何度も探してる
忘れたのではない
私は置いてきた
....
ノックする音が聞こえた
私はゆっくりドアノブを回して押した
「こんにちは」
優しく懐かしい声
顔が見えないくらいの
たくさんのシンビジウムを抱えて
大好きな人が目の前にいる
....
1月の庭に雪だるまが一人
小さいけれどダイヤの糸が
月あかりに透けて光る
子供の小さな手で創られた
小さな雪だるまの中に
温かい陽が灯る
小さな薄い羽根が
繭のような
雪だるま ....
歩道の片隅で汚れた雪が
恥ずかしそうに
早く溶けてしまいと言っている
子供が走りながら
雪を蹴ってゆく
綺麗な雪が陽を浴びる
ありがとうと言いながら
雪は溶けて消えた
枯れ ....
神様が地球に水槽を造った
人は海と呼んだ
すべてが生まれる水槽
海は産みという言葉と同じ魂
いったいどれだけの
月と太陽が
現れては消えたのだろう
長い長い時間が
月日という言 ....
色あせた花の耳飾り
3歳の誕生日に
ポケットに入ってた
今日はもう卒業式
明日からはおとな
窓辺に新しい耳飾りがあった
あの時の妖精だろうか
ありがとう
私は元気だよ
雪の精の墓地のような
石灰華段に座り見下ろせば
トロイアの木馬が運ばれていく
黒髪に陽が一滴跳ねたような花
木馬にも花飾りを内緒で乗せて
命の陽が消えないようにと祈る
アフリカの満月は
コノハズクの目に似てる
梟の歌にあわせて
花を織る妖精
日焼けした笑顔
月影の人形劇
絵本が開くように
森の中をパタパタと
花が開いて埋め尽くす
新しい季節がはじまる
暦をめくる妖精たちの声
もういいかい
もういいよ
冬いろの花壇に
陽の匂いの妖精が
舞い降りる
鉄塔の影は魔女のワンピース
すき間だらけのその先で
カラスの影が口を開く
私の足もとで呪文を唱える
黄昏に現れたのは
救いを求める少女かもしれない
魂の尻尾がとても綺麗に見えた
もう魔女 ....
タンタンタン・・・
トントントン・・・
溶け出す雪
屋根から屋根へ
朝聞こえたのは
きっと朝食の音
まな板の音
タンタンタン・・・
トントントン・・・
流れる雪
屋根か ....
寂しい時は砂利道を歩けば
話し相手がいるみたい
ほらスズメが横目で飛んで行った
カラスまで電線からこっちを見てる
小さなつぼみたちは
ラズベリーのソフトクリーム
公園の ....
アルプスのてっぺんに
イチョウの種が降る
鳥が咥えて鳴いた
美しい声が連峰に木霊する
種を落とした妖精は
女神のような歌の持ち主を
ラ・イチョウと名付けた
白く透き通る薬包紙
瓶詰めのハーブ水
薬箱から漏れる香り
眠れない夜は
深い井戸にいる
もう一人に自分に
妖精の薬箱を渡してあげる
夢中で雪を数え
最後の雪を指さし
足もとを見たら
あんなに逢った雪が
たったひとつになっていた
ここにおいでと言った
私は雪の中で眠った
雪が溶けるまで
月は丸いから優しい色だから
魂はきっと月に似てると思う
天香久山で見上げるうさぎは
ふるさとだと思うだろうか
飛鳥寺の朱塗りの柱を背に
卑弥呼は駆け落ちを誘う歌を詠む
六花の数だけ
雨粒の数ほど
根から染み渡る
尊い魂がある
今はただ白く光る
花の中にいるように
祈りの目を閉じて
涙で瞼を洗う
時は川の様に過ぎて
追いつけない魂が
....
蜜蜂の羽音が聞こえる
春は童話の匂いがする
蕾がたっぷり用意され
妖精は祝辞を読み上げる
昨日には二度と出会えない
閉じた花の中に記憶され
真夜中に妖精が
生まれた星に清書する
風が水面に話しかける
月が揺れる池はミラーボールか
ミモザを沈めたカクテルのよう
美しい記 ....
新しい時間に乗って
やり直せばいい
花のように何度でも
いくつも咲いて見ればいい
上手に咲かせるまで
種をたくさん蒔いて毎晩祈った
いつか雪の精が言った
綺麗ね私の好きな色よと
....
さよならの導火線は
遠い夏の線香花火
最後の夏だったから
雪が溶けたら
春が来たら
そう言って
花咲爺さんに化けた妖精
笑って平気なふりしてた
手品師が出せるのは造花
二 ....
御簾をあげてください
ああ桃の花が咲いている
今日の風はいい匂い
あしたは庭に行けるかしら
もう一年も経ってしまった
夢を見た人形と遊ぶ夢を
紙雛が私を囲んで笑っていた
病は治るよと ....
群衆を華麗なステップでかき分け
黄昏に伝説の船を漕ぎ出すけれど
雨だれのように繰り返し砕けそう
見送る人波のなかで手を振るあなた
くちびるを必死に読む
息継ぎしながら
愛の言葉が箇条書 ....
きりん座の長い首が見える
北回りの夜間飛行が点滅してる
月明かりに見える飛行機雲
夜を一つ下さいな
眠れないのです
本物の夜を売って下さいな
夜を一つ下さいな
夢の入場券を一 ....
庭の隅っこに
忘れ去られた小さな器
雪解けの下から
ブルークローバー
空耳だろうか
寄せ植えの準備は出来たよと
そんな声が聞こえた
妖精の声だろうか
強がりの言葉を交換したら
隠せない後悔にふるえて
愛に凍える雪だるまになる
頬を流れるのは涙じゃない
瞳に降る粉雪が溶けただけ
季節最後の雪雲たちは
冬の尻尾のように消えていく
黄昏 ....
花は光の粒で創られている
小さな子がお辞儀をするように
朝露は落ちて光に帰っていく
誕生日に買った花瓶
薄く透き通る黄色いガラス
食卓の窓辺に置かれ
水仙が部屋を見渡している
母の誕生日に咲く庭の水仙
可哀想だけど
そう言って摘んでくる
朝の澄んだ霊気を ....
虹に腰掛け紬ぐ
さくら色の糸車
束ねればシルク色
雪解けを待つ芽に
花びらを編み始める
春にお似合いの色で
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