あなたを知りたいと望み
偽りのボクが生まれた
真実は常に残酷で
手に余るエゴに身悶えた
いずれ忘れて薄れゆくと
まるで意味のない慰めに縋ることで己を保った
未だ棄て切れぬ情念に ....
信じていた。
奇跡を、言葉を、人柄を
信じている。
教えを、心を、意義を
信じているのだ。
皆、私も
だから
真実でなければならない。
嘘にしてはならない。
....
貴方の全てを
私の中に奪い取ってしまっても
それはもう貴方でないから
私は寂しいのですね
私の全てが
貴方の中に奪い取られたとしても
それはもう私でないから
貴方も寂しい ....
先人の樹
枝葉を震わす声
溜息と体温
地に染みる涙
紺青と朱
遠くを往く影
足跡に触れる夢
発つ雛鳥の名残
祈りと昇る歌
{ルビ須=すべか}らく迎える救済の機
錆びないように油をさして
繰り返し終着駅だと叫ぶ
スピーカー越しの君の眼は
老いた牢屋の有刺鉄線
B玉をはじくように嘗め回し
避雷針を倒して遊ぶ
此処は{ルビ何処=いずこ}の鬼 ....
口角を上げろ
目尻も下げておけ
腹立たしいか
口角を上げろ
惨めで憎いか
口角を上げろ
眉間の皺より笑い皺
形だけでも構わないから
心は後からついてくる
きっと
指を折る
数えては吐き出される
諦めにも似た焦燥
焦がれたのも今は昔
仕草も顔も声も朧
百年待ちました。
それでも、
あなたは、
まだ、
覚えてもいない幸福の味を求めて彷徨う
目は潰れ耳は千切れ鼻は失くし
皮膚は擦り切れただれ口は開かない
それでも存在を知ってしまっているから
何処にも無いなんて信じられなくて
....
天が下りる
肺を圧し潰す
耳裏の風切り羽が散る
音はもう無い
手足を置き去りにして
夜を転がる
擦り切れ残った頭蓋だけ
あの天蓋へ反して
何処にもいかないでね。
そばに居てね。
君の{ルビ心=ことば}が全てだったのに
どうして置いていくの
何処にもいない僕が笑うのは
優しい思い出の世界にしたいから
いっそ忘れ ....
嗚呼
此処は夢の中なのだと気がついて
脱ぎ捨てるように目が覚めた
はて
どんな夢だったか
あそこに置いてきた私の抜け殻は
憑き物がなくなった今
あの場所でどうしているだろう
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