劇場が閉まって帰路に着く

幕が降りても人生は続く

意味もなく価値もなく理由もなく人生は続く

それでも一度灯ってしまったら消えない明かりがある

人生が終わってもまだ消えない
 ....
渋谷駅地下数百メートルから横浜まで。

ラジオも聞かず音楽もかけずニュースも開かず、ずらりと並んだ後頭部と、その奥に映る半透明な自分と流れる景色を眺めながら、浮かんでくる言葉とその意味を考える。
 ....
音楽がなっている、君は目蓋を閉じる

音楽がなっている、君は口元を緩める

音楽がなっている、君は手足を動かす

音楽がなっている、君は汗をかく

音楽がなっている、君は涙を流す

 ....
人が消えて世界が残った

主人が消えてペットが残った

生徒が消えて消しゴムが残った

教師が消えてチョークが残った

バイトが消えて履歴書が残った

店長が消えてマニュアルが残っ ....
素晴らしい夜のかけ算。

雑魚寝の朝。

名前も知らない彼らと踊った数時間。

大事なことは何一つ解決しないけど、そこには音楽があった。


見たくないから目を閉じたのに浮かんでくる ....
今までとこれからのあいだ、

クリスマスと大晦日のあいだ、

仕事収めと収まらないのあいだ、

夜と朝のあいだ、

頭の先とつま先のあいだ、

始まりとお終いのあいだ、

指先 ....
彼にとってどうでもいいことが、
彼女にとっての切実。

彼女にとって取るに足らないことが、
彼にとっての切実。

ため息と共に空に消えた君の透明な青春は、
今夜誰かの青い夢になる。

 ....
夢の中で、
歌うことも笑うことも靴を履くことも忘れる。

夢の後で、
体の中に風が吹いているのを感じる。

窓の外、
静かな空に煙をくゆらす。

振り返ると、
空っぽの住処。

 ....
福原冠(8)
タイトル カテゴリ Point 日付
幕が降りても続く人生自由詩121/8/1 22:41
渋谷駅から横浜まで、あるいは横浜駅から渋谷まで自由詩421/3/19 0:53
音楽がなっている自由詩121/2/12 23:21
人が消えて自由詩221/1/16 12:24
UNDONE自由詩220/8/14 14:35
視野自由詩120/8/8 2:35
透明な青春自由詩220/7/27 16:47
夢の中、夢の後自由詩620/7/25 2:07

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