詩は書かれなかったのではなく抹殺されたのだとしたら誰がみつけてくれるだろう
ということで刑事コロンボが呼ばれてさっそく詩の埋め合わせをはじめることになった
まず机の引き出しをあけ、つぎにメ ....
デフリンピックの初めて日の目を浴びた障害物競走で
披露される前にはがれおちてしまったマスキングテープ
幾年もかけて磨きあげてきた模様は内側に巻かれたまま
障害を越えて百メートルコースを彩ることな ....
裸の枝に実る柿
菊西 夕座
季節が頭をめぐらせて仰ぐ空へと囁くたびに
懐かしさは生まれた日の ....
すんだらなにになるべかな
すんだらでなくてしんだらだべ
すんだからすんだらなにになるべかよ
んだからすんだらでなくてしんだらだべよ
すんだからさっきからすんだらいうてるだべ
だけんどさっきか ....
夢はいつもかえつて行つた 山の麓のさびしい村に
コロンボはホシを追っていった 山裾にレインコートの裾をかぶせ
水引草に風が立ち
かつての慶事から結び目はほどけ
草ひばりのうたひやま ....
ゲジゲイジュの姫君は百たりて笑い転げ こらえきれずに突っ伏してなおも笑った
もうしぶんのない美貌が指揮者を射止め 彼女の胸にオーケストラを響かせたから
そのハーモニーは格調ある百の手を揃え ....
歴史ばかり雄弁な片割れ石碑のどこにも書いていないが
多賀城の南門から素足をのぞかせた未開の少女が入ってきて
わたしの首になめらかな両腕をかけて影へみちびきいれた
そのときからわたしの胸には真紅の ....
Ⅰ.
夢はすべからくすべすべとしたまるい顔
ひとよんでのっぺらぼうという名の妖怪
さそわれて、肩たたかれて、ふりむけば
人まちがいだろうけれど「なんかようかい」
夜空は月の目玉を ....
人間らしさとは微妙にズレていることかと思います。
浮き沈みがあればこそ夕陽に泣いて朝日に笑うのかな
そうした解釈もまたどこかズレている気がします。
そういう君はいったいなんです
善行知能です。 ....
地に足をつけろと人はいうが、どっしり根をおろしている木でさえ
地につけて広げているのは手のほうだった。
というのも木はけっしてお手上げ状態ではないし、
尻上がりに高くなっていくばかりか、
靴な ....
箒川を渡って
俺は俺を続けるよ
心をあの場所に残したまま
踊ろうマチルダ『箒川を渡って』
バスケットは得意じゃないけれど ショットを ....
――明さんの迷った目には、煤も香を吐く花かと映り、蜘蛛の巣は名香の薫が靡く、と心時めき、この世の一切を一室に縮めて、そして、海よりもなお広い、金銀珠玉の御殿とも、宮とも見えて、{ルビ令室=おくがた} ....
孤独であることに耐えられない火は死後に静寂を灯した
夜があけて光あふれる里山の草木に{ルビ微風=そよかぜ}はあたためられている
碧い空がうららかな輝きにみちた礼装で黙祷をささげる
海は静粛な空気 ....
花からも葉っぱからもはがれおちた「は」の文字は
「はがれて」からもはなれ、「はなれて」からもはずれ
文字と文字にはさまれた位置の「は」にもなれず
ついには最後尾の「君の名は」の「は」に追いやられ ....
街の片隅に腰掛けていたのは、造園会社の2階がテラスになっている白い建物だった
高架橋の上から街医者になった気分で眺め、車を走らせながらざっくりと診断してみる
街並みを待合室に例えたときに、 ....
生まれたのはアメンボ横丁、ではなくて未分化横丁の横っちょの方
あまり覚えていないのは、そのほうがいいと道が途中で折れていたから
その折れた「く」の字の突き当りからちょろちょろとわきでている地下水の ....
「くうみ」が空っぽの身だからといって無意味などころか最大のより所にもなる
ということで神は服をお脱ぎになって今夜はすっかり「くうみ」となりおおせた
神の不在をなげくどころか不在にこそ神の裸体がある ....
愛惜の遠路をのばすわかれ歌
~海がしずめば星がのぼり、星がしずめば海がひろがる~
愛のめくばせはむなしさの海を一瞥でかきけし
なみだの一滴をはてしない夜空の星へとかえる
ひとつの ....
言葉の通じない川に言葉がさらわれて
おととけななな、おととけななな、と笑う川
いますぐに言葉をはなしたまえと川に告げれば
おととけななな、おととけななな、と運ぶかーぜ
風でな ....
家は設計されたときに自らの完成をみる
建築家の立原道造がときを引き詩をたてる
はじめから死の骨組みで編まれた愛の生家
居住者は光の柱に舞うだけの静謐な塵埃
建築は頂を完全な月の満ち欠け ....
「いつか」は、いつかやってくる
だがやってきたのは刑事コロンボだった
「いつか」はどうしたんです、刑事?
警部だけど、頚部損傷だから刑事でいいや
頸部損傷とは?
コウサツされました
絞殺さ ....
いつかは、いつかやってくる。
だがそのまえに
犯人はいつかを盗んでしまった
いま刑事コロンボがやってきて
わたしにたずねている
「いつかったかね?」
見つかってません。
いや、そうじゃな ....
坂の最後に名が落ちていたら
さかなにあげてください
と坂が頭をあげて願いでた
ひとに頼むなら頭を下げろ
と坂をふんであがっていくと
坂が途中から逆立ちをして
先に下げておくべきでした
と ....
――私はきいてゐる、さう! たしかに
私は きいてゐる その影の うたつてゐるのを……
立原道造「真冬のかたみに・・・・」
――耳をひたした沈黙(しじま) ....
歯がはえて、歯たちがきれいにそろったら
きみはもう、はたちをむかえたおとなです
居ならんで、自他がひとつに緊密し
糧をえる、顎の砦を築くのです
歯のひとつ、それがきみの立場でも
べつ ....
――彼の眼中には、アッリア・マルチェッラのあの漆黒の黒い眼と、
多くの世紀に打ち勝ち、
天変地異すらそれを保存しようとした、見事な胸しかなかった。
....
――完成された時のなかでは、空想だったあの人も、生まれ、生きて、心をふるわせ、
すべてのとまってしまった血をもういちどあたためてくれる。そのとき、わたしの血は、空想から現実へと輸血さ ....
――その信念が彼の妄想を厳粛なものにし、
ぼくにとって真実と同じくらい印象的で興味ぶかいものにしています
メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』
....
うちらのいのちはこんもりとしげった森ではありません
そこのわれてるひと匙にすくわれこぼれる朝露です
かの俳優はめをとじて出ばんがくるまでうごきません
さんりく産の朝採りがとかいの露店にならぶ ....
ワニのひっくりかえった庭 ~きょうも仕事づくえに牙たてて~
――ではみなさん、
喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
テンポ正しく、握手をしましょう。
....
菊西 夕座
(73)
タイトル
カテゴリ
Point
日付
償いの刑事コロンボ
自由詩
4*
25/12/1 0:25
心をほどけばパレード模様のマスキングテープ
自由詩
7*
25/11/24 15:51
裸の枝に実る柿
自由詩
13*
25/10/25 10:34
亡まりし人とは平行し変形
自由詩
6+*
25/10/12 10:31
刑事コロンボ、立原道造の詩「のちのおもひに」を追う
自由詩
6*
25/10/5 16:35
百を足りて伏しやまず
自由詩
4*
25/9/23 17:09
真紅の門からひろがる空漠をぬけていく南風
自由詩
6*
25/9/13 1:33
月は夜を統べる、幻想の義眼を髑髏にはめて。
自由詩
8*
25/8/15 14:23
人工知能AIよりもズレ工知能のほうがえーわい
自由詩
5*
25/8/2 22:01
木は逆立ちをし、闇は闇を止みてしまい、主はパスをお受けになら ...
自由詩
4*
25/7/13 20:55
放浪の篭球 ~踊ろうマチルダの歌で天国を通過する~
自由詩
2*
25/7/6 3:56
天国は展開の極意 四章
自由詩
2*
25/6/22 23:34
天国は展開の極意 三章~音のない花火が胸を静かに鳴動させる~
自由詩
2*
25/6/8 11:52
天国は展開の極意 二章~いまも生きております、はずれの音で~ ...
自由詩
1*
25/6/1 19:05
詩をめぐる診断
自由詩
2*
25/5/25 15:09
未分化横丁、ついてこないで、刑事アメンボ
自由詩
2*
25/5/3 22:11
執着を消し去る入魂トロールマシン ~トロールの神話~
自由詩
3*
25/4/20 10:56
愛惜の遠路をのばすわかれ歌
自由詩
3*
25/4/5 15:42
川にはまった言葉の泳法
自由詩
5*
25/3/8 9:29
死の家に住まう光の先鋭化
自由詩
7*
25/3/1 15:12
いつかの刑事コロンボ
自由詩
5*
25/2/2 14:15
刑事コロンボ、「いつか」の先をゆく
自由詩
2*
25/1/27 0:16
かさなる坂には逆らえない
自由詩
2*
25/1/9 0:13
天国は展開の極意
自由詩
1*
25/1/3 11:15
せめてきみの歯くらい人間であれ
自由詩
6*
24/12/21 9:24
くぼみをうめるあやかな幻想
自由詩
1*
24/12/15 13:29
しあわせよりも血あわせ
自由詩
1*
24/11/10 11:04
愛の影
自由詩
2*
24/11/4 22:26
虚を磨く
自由詩
1*
24/11/2 13:47
ワニのひっくりかえった庭 ~きょうも仕事づくえに牙たてて~
自由詩
2*
24/10/27 17:32
1
2
3
0.26sec.