身がうずむほど雪が降った
ささくれだったヒイラギの枝が
きしんで首を垂らしている
穏やかにその生命を垂らしている
槍のような葉先が ひどく艶やかに
朝霧を すんと突いていた
火を焚べて ....
宇宙はすべらかに濡れていた
青色の 薄羽のささらぎのような
おぞましくも おおらかな大河の
地の底からふるえてくる鼓動のような
無数の幾何学に彩られているのだから
止まり続ける道理などないの ....
ココナッツミルクの香りがする
まるい真珠のような指先を
おれの しわがれた手が抱いている
息を吸うたびに埃が肺をすえてしまって
こひゅー、こひゅー、と鳴り続けている
おれの くぼんだ双眸が
....
かたい窓の桟に生えていた
新芽がやわく唸っている
幸福の一つも知らない
夕日の一端を浴びている
美しいものは無礼にも
わたしの瞳に棲みついた
それが滴って根をたぎらせて
舌を痺らせて ....
柔らかな石が降っている
濡れた空気が呼吸する
むろんだ朝日が土を踏むように
おまえは優しく燃えている
穏やかな顔が溶けている
暗い木陰がただ揺れる
首が上擦っている
うだったいのちが ....
喉が静かに萎れてる
瞼がおもたく透けている
わたしは岩背を踏みしめて
裾野の灯りに目を凝らす
冷たいあなたの肌を撫で
しなだれながら 咲いている
わたしの毛皮は月光を
打ち据え輝くも ....
乾いていて冷たいそれを
おれは か細いからだに縫っている
目や耳や口すら覆っている
輝いたことなど一つもないが
揺れ動かず しんとしていて
煮詰めて固めたざらめのよう
黒々してて 鈍重で
....
うもれてしまって みたいな
水の中は暗くて 入れなくなるから
青褪めた月光そのものが
ぼくらの海の底になる
ただならぬ命が泳いでいる
やわらかく沈みながら
やさしく浮かびながら
空飛 ....
おびただしい埃が 肺を満たしている
生きているだけで その分だけで
身を汚すほどの 罪が
この部屋に打ち捨てられて 項垂れている
伸び荒んだ前髪が 目を刺している
おれは訳もなく 息を潜める ....
歩いていると
轢かれたら死ぬ車が
なんでもなく 頬を通り過ぎていた
風が肌を擦れて 痛い
土煙がつく
爪先に汚れが詰まる
家に帰って
幾つもの肉を食べた この手で
擦り寄ってきた ....
学校のことを 思い出そうとすると
ぼやけた記憶した浮かばないのは
僕にとって 青春というものは
伝統的で矛盾した 色彩の衝突であったからだ
延々と神さまが 夜空を覗き込んでいる
からか ....
まどらかな 朝の空気が
うすくのばした 綿みたいに
街中を したたっている
ぐ
誰かが眠っているであろう
真っ赤な屋根の お家が
折れた 背骨みたいに
やわらかく
押し潰されて ....
ぼくは世界の真ん中の通天閣の上で回るぐるぐると回るただあなたを待っているえも言えぬままに待っている優しさにさ身を摘まれ優しさに身を包まれ優しさにさ身を詰まれ優しさにさ身を浮かべ優しくあろうとするんだよ ....
編まれた愛を 起点として
この からだに 空いた穴が
揺れてく景色を 透過する
この 人生を 描画する
街を焦がした 夕日が沈む
頬にすれた 夏風の匂い
浴びた 花火の灯り さえ そう ....
受信機は今日も空っぽです
天気は晴れ 時々 鉄の破片
流れ落ちる 身を梳くような
鋭い 言葉に 気をつけましょう
空は その様相を変えたとしても
美しさを 損なうことはないのですよ
あ ....
指先をつたう 雷鳴
かかる
雨のなか 歌う少年
六弦に潜む 幽霊
誰か 聞こえねぇのかな
生きる希望と やらに ぶら下がる
縫われた からだで 息を吐く
風とともにぜんぶ剥がれて
....
なんか
毎日ハンバーグでもいい気がする
なんか
スーツって窮屈に感じる
なんか
人に優しくできる日がある
なんか
たまには水風呂でもいい気がする
なんか
いつまでも眠りたいと思う日が ....
視界は三角 さよなら視覚
あなたも あなたも
どうにも 臨界点
なんでもね あきあき
明日は 明日は
晴れたらいいな って
くらくらくら 見ててね
朱ぞめた 頬 へべれけ け
....
あーーーあ
この湯船が 森の奥の隠れた湖だったら
やたら ちかちかする
黄色の照明は そう 月光!
夜のほとりに しんと沈む
この濡れた指先は
水底をうごめく
なんて恐ろしいの! 水生怪 ....
街の波ぎわで ひと吹かせ
青げた煙がのぼる
冷たい宇宙は たなび風
くじらの 死骸がみえる
吸息
染まって 染まって 染まって いた
過ぎ去ってしまう さまざまに
昔読んだことばかり ....
ありふれた表現のなかに
ひとりで住んでいた
古紙のあたたかさに沈む
からだは文字になった
ペン先が 宙を書いている
濡れた宇宙が 呼吸する
それが滴って 喉に咲く
明日が爆ぜる
....
まばたき
銀色の砂
こまやかに
肌をうつ波
カモメが泳ぐ
はばひろい青雲
となりで眠る
天使のあなた
あなたは前世
ちいさな猫だった
お空を見るのが好きな
きらきらのおめ ....
鈍い感覚に息をつがえて
とおく とおくの あの子のもとまで
運命みたいに飛び込んだ!
忘れてた ぼくは 最後の神さま
糸がほどけぬ わずらわしい子
黒い掃き溜め 虹色のはね
青輪光の ....
駅前の広場には 冷たい光が流れてて
わたしたち まるで 水族館のなか
ふたりで買った 炭酸水が
手のなかで 静かにゆれる
君は なにも言わずに
じっと ボトルの気泡を数えてた
わたしも ....
わたしが眠るのは 夜を越えるため
青い目をした狼が 林の奥で睨んでる
黒ざめた毛皮は 荒々しくなびき
木の根のように 重苦しくたたずむ
生きていれば 喰われるので
わたしは目を瞑る
死 ....
主体 オーソドックス
詩的情景に内包された因果から
比喩の限界を 探求しなさい
ガラスは虹色の反射 矛盾的伝統色彩
触れ合う指先の共鳴は 電子の瞬き
黒い金属の海たちの 冴え渡るような獣 ....
伸びやかに ひびかせてみて
小さな耳を 掻き抱いて
月の端から生えた 竜の顎が
頸木に巻かれて うなだれる
ここは 空にいちばん 近いところ
星さえ望めば 奪えそう
宇宙には 葛藤があ ....
暗闇に咲いた 手と花
青いまなざしが 頬をすべって
夜の波となった
見渡す限り それが続くので
どうか そのままで
追記 意味などない
揺籠のなか 酩酊
燃えてゆくからだが ひどく痛 ....
ひゅーっ ひゅーっ
燕は白い つめたい風にのされ
空気のはざまを 飛ばされていたのでした
雨粒が羽毛にはじけ じわっと広がり
群青のからだに 水をふくませて
そうしたかと思えば すぐに去って ....
わけもわからず寂しいので
寂しくない を考えた
青い部屋のなか 外を見たとき
あなたが眠る 姿を見たとき
誰かを待って 立っているとき
帰り道を 歌って歩いてみたとき
わたしが わたし ....
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