お母ちゃんの指になったと母は言ひ
母だけが味方の人生峠道
ひ孫から祖母まで包む紙おむつ
縁とは不思議なものよ妻の尻
何とまあ年々父は欠けてゆく
母と二人墓で打ち明けられた ....
ここに子猫の首がある………
どうせ君には
私の言葉は
わからないだらう
涙
猫鳴廻恋恋
人噤臥愁愁
一去知難遇
鏡中暗涙流
涙
猫は鳴き、恋恋として廻り
人は噤み、愁愁として臥す
一たび去りて、遇ひ難きを知り
鏡中、暗涙流る
....
楽しかった恋の思ひ出
つらかった恋の思ひ出
恋にもいろいろあるけれど
イヤなことしか思ひ出せない恋もあり…
どんな恋にせよ、終はった恋の思ひ出は、
取り返しのつかない、ひとり言です
フロリダ出身の二十一歳の
James Byron Deanに似た男娼が
その指に香油を塗りたくり
ポケモンに夢中になってゐる少年から
葡萄酒色の大きな真珠をつまみ取ると
少年のゆるんだ口元か ....
【ジュゴン】
目覚めると、恋人がジュゴンになってゐた。慌てて抱へあげ風呂に入れたが、彼女はとても不機嫌さうだった。湯に食塩を入れると、少し機嫌が直った。あとは食べ物だ。ふえるわかめを湯に入れてみても ....
年暮れぬ子猫追ひ追ふ道すがら
病み猫にのしかかるなり冬の音
sick cat is dying
and covered with the sound of
serious winter
....
【青猫】
夜がふらりとやって来た。ポケットに一杯の子猫をつめ込んで。「どいつもこいつも元気だぜ。安くしとくよ!」小さな青猫を手に載せてみる。三百円だと夜は言った。「青猫はいい匂ひがするよ」さう言ふと ....
【催眠術師】
「…サテ次ハ催眠術デス。ドナタカ御協力ヲ…」私の恋人がハイと手を上げた。「オオ何ト美シイ方デセウ。ソレデハ、アナタガ一番美シイト思ッテヰルモノハ何デスカ?」口を開きかけた瞬間、彼女は一 ....
【雑踏】
地下街の雑踏で見知らぬ若い男に肩を叩かれた。「はい?」何やらまくしたてられるが全く理解できない。何語だらう。男は段々激してきて私の肩を小突く。「何するんですか!」男は声高になり、またドンと ....
【小児病棟】
「僕死ぬんかなぁ」点滴パックを換へながら答へた。「いつかは皆死ぬわ」「看護婦さんはいつ死ぬの」「そのうちね」少年はため息をつく。「僕なぁ、妹殺してしもた」「えっ?」「喧嘩して、死んだら ....
【ラブレター】
「彼女とヨリが戻ったよ、有り難う!」「よかったわね!」「うん、君のアドバイス通り、手書きのラブレターを彼女に渡したら、もう大喜びでさ」それはあたしが欲しかったもの。「君のおかげだよ。 ....
【おせっかい】
地球の要人達に出迎へられた宇宙人が質問した。「人類のお手本となるやうな立派な人間は誰ですか?」アメリカ大統領が立ち上がった。「まあ私でせうな」二人が握手すると、宇宙人はポンッと大統領 ....
【牛歩】
講義が終はった夕暮れ時、皆で学食に向かふ途中で、不審な動きをする男を見た。彼は歩道の真ん中を、ほとんど足踏みするやうにゆるゆる歩いて行く。事情を知ってゐる友人によれば、彼は母親にかう言はれ ....
小春日に匂へ真珠の首飾り
散る散らぬ恋の微妙や冬の薔薇
―――インフルエンザに―――
母の手やクシャミを避けてセキ避けて
しづかさや車椅子押す冬の坂
冬霧に猫のため息まぎ ....
満月や野分のあとはちりほこり
脚二本欠けて眠れり秋の蜘蛛
物音や今年は柿のはづれ年
銀杏をつぶして行けり救急車
行秋や祭りのあとの歯の痛み
晩秋や恥を数へて夜もすがら
....
秋雨や恋は流れて猫の糞
長き夜に蜘蛛一匹の弱りかな
恋もせで何が詩人ぞ虫時雨
三日月や少し曲がれる猫の首
朝顔や猫の寝様はぐんにゃりと
秋風やつまらなさうな猫の面
出刃入りて観念したか大西瓜
しづかさや黄菊白菊祖母の骨
夕暮れやヤンマにゆづる散歩道
....
若きアルルカンよ
画家を抱け
詩人に抱かれよ
トルコ石で作ったパステルで
お前のあらゆる窪みを描かう
お前のあらゆる出っ張りは
湿った言葉に痙攣するだらう
美しきアルルカ ....
こねこがぐったりしてゐるよ
こねこがぐったりしてゐるよ
もうひとふんばりしてみるか
こねこがぐったりしてるから
春の夜や猫には猫のつらきこと
夏は来ぬ恋しそびれしブサ猫に
野良猫の目ヤニ粘れる薄暑かな
五月雨や猫のつはりはじんじんと
猫の児のぬめりを洗へ夏の雨
老猫の黒毛ねとつく西日かな
....
カウンターに座るやいなや、まだ何も注文してゐないのに、大盛りのカレーライスがドンと目の前に置かれた
「ハイ、お待ち! ネコカレーだよ!」
ぐったりとした子猫に、たっぷりとカレーがかけられてゐる
....
惜花
東風颯颯歩黄塵
句句閑吟愁色新
花影連綿湖畔夕
詩人鬱勃故園春
芳枝百囀能迎客
悪酒千言不動人
酩酊弄花花不語
呑声空臥夢花頻
花を惜しむ
東風 颯颯 黄塵を ....
夕影は一ツや婆と懐炉猫
鶯の出鼻くじくかうかれ猫
赤むけののどで口説くや猫の恋
ふてぶてしき乳のはれなり猫の妻
呻吟やごろりと動く猫の腹
大きな顔の猫見て見ぬふり
子猫 ....
猫公園にて奇妙な男を見る。
その男は私の隣りに車を停めると、後部座席から猫のエサを取り出し、群がる野良猫たちに与へ始めた。ドアを開けた時、私の車にガツンと当たったが、男はまったく知らんぷり。とて ....
純愛はゴム一枚の薄さかな
オレの子か百歩譲って神の子か
何をする所かレディースクリニック
堕ろす朝は猫なで声の色男
産む機械ではなく堕ろす機械なり
捨てるより堕ろした方がにぎ ....
冬雨吟
誰知凍蝶愁
誰解盲猫夢
夜雨両心寒
酔吟同苦痛
冬の雨に吟ず
誰が知る凍蝶の愁ひ
誰が解く盲猫の夢
夜雨 両心寒からん
酔吟 苦痛を同じうす
冬の雨 ....
めづらしき冬なりオバマ大統領
正月や生まれ変はっても日本人
そこだけは春のやうなり猫ハウス
ポジティブなアクビをひとつ猫の冬
通学路に凍れる猫の骸かな
香箱を組む ....
初空や猫の匂ひの懐かしき
お愛想もちう位なりねこが春
初夢はせつなきものぞ恋の病み
年立つもかはることなし恋あはれ
祖母恋しおせち料理の塩からさ
家のなき人もをる ....
「ビックリがゐなくなったの」と可愛らしい少女がつぶやく。
「ビックリって?」
コレ、と言って指さしたのは、私の原稿に書かれた『!』だった。
「どこからゐなくなったの?」
コレ、と言って差し出し ....
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