図書館は今日も
中身の無い棚ばかりで
全部で五冊ぐらいしか本が無かった
世の中を模して
広すぎるように建てられている
CDレンタルの店員は
僕がばらまいた小銭を
借りてきた笑顔で拾っ ....
夜の紺色に
黒ずんだ雲がかかり
死んだような空
どれだけ早く走っても
生まれる風は
どこへも連れて行ってくれない
ただ
頬を氷のように撫でていく
帰ってきてしまう
暖房の ....
吐き出したくてたまらない
感情が
弱さのために
置き去りにされていく
そうして自身は守られている
紛らわす娯楽が
今は溢れていて
でも何かが残る
痛みの無いかさぶたのように ....
やわらかい
何かがほしい
温かい
何かがほしい
事情を知らない友達の
変わらない笑み
昔好きだった絵本の
死なない猫
何も無かった日の夜の
窓から漏れる生活
....
午前四時の境界線で
起きながらにして
幻想を見る
朦朧としながら
その目に浮かぶのは
白い暗闇
理由も無く心地良いその場所では
発想は尽きず
狭い価値観も
放射状に広がってい ....
蛇口が捻られたのに気付いて
必死で押さえつけるけれど
耐え切れず
当たり前のように
落ちる
雫
浴槽には
透明で
不思議な色に染まった水が たまっていて
新入りは 小さな音を ....
曇り空を見るといつも
全てのことを正当化してしまえる
気になるけれど
その度に
雨が降ってくる
言葉は便利で
音楽は優しく
都合のいいお話は
いつだって楽しい
でも残念な ....
秋の終わり
街路樹の狭間で
主人の居ないくもの巣が
所在無さげに揺れている
いつの間にか
冷たくなった空気に
震える肌
きつい陽射しを負う背中だけが
何かがにじむように熱 ....
上昇していく海を
泳いでいた
常に水面から顔を出しているのに
何故か息苦しい
いっそ
どこまでも沈んで
深海魚の餌になりたかった
けれど
空気を吸いすぎてしまったからか
....
じいちゃんが火葬された
あっけなかった
歪んだ炎の真っ赤な色や
煙がひたすら立ち上るところを
なんだかわからないけど想像していた
けれど実際は
でっかい鉄筋の建物の中で
僕が親戚 ....
自己嫌悪が庭に降り積もって
草木は見えなくなりました
どうにも塀が成長しすぎて
背伸びしないと外が見えません
日を追うごとに高くなります
礼儀も何もなく覗きに来ていた
屈託なく笑う あ ....
一人の子供が山を登っています
とっても急な斜面です
それでもあきらめたりはしません
山の上には凄い景色があるんだと
おじさんが教えてくれたからです
子供は時々休んでは
また同じ夢を見ま ....
じわり じわりと
滲んでゆく景色に
何も浮かばない
黒いばかりの失敗の後にも
得るものは ありますか
歩きながら
理由付けに必死
空にも
この街にも
何も無かった一日 ....
才能がないミュージシャンが
なかなか進まない車のアクセルを踏み続けている
どうやらエンジンがかかっていない
父親と喧嘩した高校生が
車に向かってサッカーボールを蹴り続けている
ゴールが見 ....
開会式の行進
のはずなのに
みんな何故だか走っていて
走るのは遅くない
はずなのに
何故だかだんだん
取り残されていって
仕方がないから
後ろのクラスに合わせようと
スピード ....
枯れた心
砂漠 を実際に見たことはないけれど
死んだような
人の目と 魚の目 どちらの方が濁っているだろう
ください
まだ実際 薬 の厄介にはなっていないけれど
愚か
自分 ....
靴紐がほどけて
その存在を見せ付けてくる
埋められるための空白は
ただ待つことしか出来ないのに
生きることを言葉で表現できたなら
どんなに幸せだろう
もしそれが可能なら
生き ....
テーブルに突っ伏していると
教室を思い出す
騒がしいクラスメイトの声
10分の休み時間
顔を上げ現実に戻ると
雨が降っていて
久々に歩きたくなった
誰もが傘を広げて
顔の ....
突き抜ける衝動 響く鼓動 貫き
戦地を逃れた銃弾 透明な空へ
管理された思考 解放
もう耐えることを忘れていた
保護を断って
どこか どこかへ
自由という
不幸を背 ....
近づいて そしていつも消えて
わかっていながら
誰もいない部屋で待っていた
いつまでも
窓はちゃんとある
カーテンは少し分厚い
少しだけ外の空気が流れてくる
訪ねて来てく ....
獣のように叫んでいた
その時あれは狂気そのものだった
何故そうなったのかは覚えていないが
あれが何やらわめいていたのだけは覚えていた
そしてそのままベッドに倒れこんで
今ようやく ....
アンケート用紙にずらっと並んだ
「いいえ」を眺めていたら
「え」が物凄く変なもののように思えた
何だこの曲線は バランスがおかしい
「い」はこんなに整然として綺麗なのに
だんだん ....
今より少し争いが多くて
自分から吹飛ぶ人とか
きれいな焼け野原とかが
少しだけ増えていた
そんな時代の話
ある日突然
とてつもなく大きな虹が
世界中の架け橋となり
....
玄関のドアを開けたら
鈴虫がいた
小さい頃の歌 思い出す
リンリンリンリン リィンリン
鳴くのを待って
じっと見つめる
鳴かない
睨み合う
僕が負けて
歩き出す
....
無性に腹が立つことがある
それが全て
考え方の違いで片付けられる
認めることが出来ない
君は僕とは違うんだね
それではすまされない
内側に膿がたまり
侵食されていく
....
こんな都会だから星は輝かない
空を見上げもせず そう思い込んでいた
見えているものを確かめていくのは
立ち止まってみないと難しいのかもしれない
考え込んだ夜 外はあまりに綺麗で
窓の ....
自分が全て悪いことは理屈では分かる
でも言い訳を探さずにはいられない
弱さを覆い隠したい
自分でも自分の心が分からない
でも誰かに分かって欲しいと願う
甘えている
自分のことをどう ....
伝えることは
誤解を生むこと
そう理解した日から
少年は口を閉ざした
はい と いいえ
があれば充分だった
長い間そうして過ごした
これでもう あのはがゆい思いを
味わなくてい ....
くもっていく
息をすればするほど
生きれば生きるほど
くもっていく
もう見えない
それが外か内かわからないけれど
気にしても仕方がない
もう見えない
途方にくれていたら
....
争いが世界から消えたら
と考えると
恐ろしい
そこには生気の感じられない
町があるだろう
生まれて来ただけで奇跡
と考えると
恐ろしい
なら もういいかなと
思ってし ....
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