ただ少し口に入ればいい
最初の動機はそんなもの
何となく物足りなくて
少しだけ勿体無くて
細かく噛み砕いてみると
随分と違う味がするもので
気がつけば虜になっている
僕にとって君 ....
泣いているかと思えば暖かく
微笑んでいるかと思えば寒い
まるで誰かさんのような季節
明日はどんな声を聞かせるの
笑顔さえ見られたら
それで満足だからとか
殊勝な戯言を口にして
もう少 ....
携帯電話を所在なげに弄りながら
待っていることがあります
至極どうでもいい話題に
途轍もなく軽々しい返答を
返してもらいたいだけなのです
想いが重いなどという
性質の悪い冗句を口にして ....
言葉は発するそのたびに
重さを無くすものだろう
夕暮れを黄昏と言い換えて
寂しさを知ったフリをした
恋情に過去を積み重ね
大切さを説こうと試みた
引き出そうとする単語は
聞き覚え ....
問いかける様に見つめられると
結局辿り付けない気になって
どんな言葉も相応しくないと
いつも口をつぐんでしまう
伝えたいことがあるのに
薄暗い照明と騒がしい音楽と
楽しげな笑い声に包ま ....
跳ねる小虫がとても目障りで
ティッシュを数枚重ねて包み
一思いに握りつぶした時
口の端は確かに歪んでいた
誰かが主張する正しさとやらの裏側には
賛同と共感を請う自己愛が垣間見えて
どう ....
緑色の風が薫る農道から
また少し小さくなった背中に
懐かしさと見馴れなさがやって来て
目頭を抑えることも忘れ
あてがわれた離れ屋に駆け込んだ
何で報いる事ができるのか
口に出そうとする ....
打ちのめさせられる瞬間というものは
いつも予想外にくるものであって
勝手に積み上げていた心は
たとえどんなに軽々しくても
崩れ落ちる音を聞く毎に
馬鹿なのは自分だと思い知る
風が吹いて ....
付けられた足跡から
微かにだけど漂う香り
気のせいだとは分かっている
思い違いだと笑いたくなる
けれども
だとしても
季節が過ぎると共に
溜息を零す度に
桜の花弁を踏む毎に
....
喉元を不快さが過ぎる時
改めて今日の終わりを感じ
過ぎていくテールランプの向こう側
誰かの背負う寂しさが見えた気がした
近所の本屋まで向かう道のり
学生や親子連れとすれ違い
公営住宅の ....
今年もまた気付かぬ内に
桜が散りかけていた
当てもなくふらついても
ただ足が痛むだけだと
思い知っているだろうに
例えば昨夜
家路に続く坂道の
向こう側に浮かんだ月に
見とれて ....
今日がまた過ぎていく
静かに確かにゆっくりと
たゆたう隙間も無いほどに
日常を告げる音が一つ
扉の向こうから誘ってくる
差し出される指はどれも
明日から伸びてくるばかり
もし彼岸 ....
窓ガラスに映る赤ら顔の男を
一瞬、俺ではない、と否定
喉の違和感や肩の痛みが
何を教えてくれている
頭痛胸焼け自己嫌悪
孤独を幾重に積み上げて
言の葉は溜息に掻き消える
半笑いで ....
無言で積み重ねていく
毎日に奪われていくのは
ただ明日ばかりじゃない
物語を読み耽りながら
十年前の今頃を振り返っても
霞がかった記憶の端で
今と同じように不貞腐れてつつ
部屋の ....
駅から宿に向かう道の両脇に
悪趣味な電飾に彩られた街路樹が
等間隔に我が身を嘆いていた
不自然に丈の短いスカートを履く
太い足の女達と何度すれ違っても
何を誘っているのか分かりやしない
....
これが何本目だったか
数えるのは野暮と言うものだ
どれだけ飲んでも酔えはしないで
こつこつと刻む夜が在る
一日中雨が降っていて
何時間寝ていただろう
疲れはまるで取れないが
もう既に ....
開いたノートをじっと見つめて
思いついた幾つかの単語を
暫く睨みつけていたけれど
繋ぐ言葉など一つも思いつかずに
ただの愚痴でページが埋まっていく
休みが取れないとか
出会いがまるで無 ....
少し遅れて冬が訪れた
待っていたということも
疎んじていたわけでもなく
ただポケットに両手を突っ込み
何か特別に思い煩う気持も浮かべず
ぼんやりと立ち尽くしたまま
ひゅうひゅうと喚 ....
笑わせることができない道化が居た
目を見張る容姿も持たず
気の利いた台詞も吐けず
当たり前のことを
当たり前にこなせない
そんな道化が居た
いつ頃からそうだったか
何一つ覚え ....
冷たさが空を行き交い
街路樹震える夕暮れに
一つ伸びた影を踏みつけながら
辿る家路はいつも寂しい
今日もまた自分を蔑みながら
紛らわした孤独に積み重ねた後悔を
一杯の冷酒で紛らわした帰 ....
冷え込んだ風が鳴いていると思ったら
微かだけど雪が混じっていたんだね
昨夜見た夢の中で
君は幼い頃の髪形で
何度か見た笑顔を向けて
優しく手を繋いでくれていた
懐かしい風景に囲まれ ....
ここに詩人を名乗る者が居るとしよう
いや、言葉により自らを詩人と定義してなくとも
心中において自ら詩人たりえると自覚している者が居るとしよう
彼奴が自ら詩人足りえるためにとる手段といえば
....
草臥れた声を変わらない歌に込め
枯れ葉に乗せて飛ばしたら
果てへと届いてくれるだろうか
鑑みて
猫背を庇って歩きつつ
とうに潰えた不相応さは
もう窓ガラスにさえ映らない
それ ....
何もかも解ったふりをして
相対論をただ受け入れていれば
物分りの良い紳士として評価されることくらい
知らないとでも思っているのだろうか
ただ私が幸せであればいい
ただあなたが幸せであれば ....
今日の酒ははこれまでと
天井の窓を眺めつつ
グラスの氷を持て余し
もはや今日となった明日を
どんな顔で迎えようか
せいぜい二日酔いが関の山
縋りつき泣き出したい本音
一度しか聞いたこ ....
この世で一番に苦く美味い酒は
心が独りぼっちになった時になって
初めて味わえるもんなんだぜ
独りぼっちになる為に
どうしたら良いのかって言えば
まぁ割と単純で簡単なことでさ
例えば ....
空がずっと遠くまで透けている
背中越しに髪を巻き上げた
涼風に乗って飛べるのなら
まだ誰も知らない世界へ
連れてってくれるならと
心から願うこともある
でも肩に下げた鞄も
歩き続 ....
生きているだけで
ただ価値があると言う
戯言を口にしていた頃から
僕の中での世界の価値は
どれだけ値札を上げたのだろう
ほんの少し前までは
掴もうと手を伸ばした雲も
冷えた風に早々に ....
ハウステンボス駅に続く
長いレンガ道は凸凹で
今朝踏み入った水溜りを
たっぷり吸い上げた靴は
とてもとても重く感じた
時々涼しげな
大半は生温い風が
二つしかないホームを
せわしく ....
「悩みなんて無いんだろうな」
笑えない戯言で寂しさを紛らわせるたび
誰から皮肉混じりに呟くの声が聞こえた
十年後の展望など描いていない
貯金どころか借金さえある
誰がために働いているかと ....
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