それはもう、最初から決められているものなのだと思う。
[ チェス ]
チェスの盤に向かいながら「道玄坂いろは」はそう呟いた。
保健室のカーテンで区切られた一角、消毒液の臭い ....
時折、
ぎゅっと胸を締め付けるような寂しさが襲ってきてやって、
つんと涙がこみ上げてくる。
このどうしようもない寂しさに抗うすべを
わたしは知らなくて、
ただ、寂しさの渦巻く胸を押さえ、
....
{引用=
「犬が人間を襲い、80代の老人が死亡」
− こんなニュースがつい先日飛び込んできた。
犬は即捕獲され殺処分。 目があった途端に襲い掛かったそう。 犬種はここでは控えておく。
....
生きている実感って、
なんだろうなぁ、なんて考えてみて、
堂々巡りの思考を辿って
回答を弾き出せたことは、
いまだかつて一度たりとてありはしない。
うすぼんやりとした膜の内側にいる自分と ....
彼女の言葉は静かな慟哭、
彼女の日記は静かな悲鳴、
突きつけられる、
突きつけられる、
ただ真っ直ぐにその痛みを、
想像するしかない痛みを、
痛みをフォークで突き刺して、
....
「家族」とはなんとも不思議な集合体だとわたしは思う。
父親は、実家ではなく少し離れた場所で家族を養うために働いている。
母親は、家族のために食事を作り洗濯をし、そしてパートへと出かけていく ....
『{ルビ神譜庭園=キルケゴール・ディ・カプリチオ}』の庭院に、
ゆらりひっそり佇むは冷たき"{ルビ呪言蒐集=ツギハギ}"の金属片、
纏う気配の冷たさで己の脆さ ....
シュガーな声でスパイシーな言葉を吐き出し
その毒にやられたならチクリと解毒剤を打ってあげる。
女の子はね、
甘い甘いお砂糖と少しばかりの香辛料でできているのよ?
な ....
甘やかな言葉の奥底には少しばかりの棘を、
緩やかな微笑の深層には少しばかりの毒を、
穏やかな佇みの裏側には少しばかりの針を、
無垢な少女を装いながら
細やかな針のような棘の ....
はるのやわらかなくうき、
ひかりをはらんだはるかぜは
うつらうつらとねむけをさそって
とおくにきこえるねこのなきごえ
かぜときのこうさおん
ぼんやりふんわりねむくてねむく ....
先に断っておきます。
これは、本当にわたしの思うところであって何が正しいとか何が間違っているとか、そういうのはぜんぜんわかりません。100人いれば、100通りの考え方がある中の「わたし」の考え方 ....
今、
後ろを振り返って今まで歩いてきた道を
蛍光塗料かなんかでくっきり浮かび上がらせて、
上空から眺めてみたら
いったいどんな線図が描かれているのだろう。
僕はまっすぐに歩きたくて
....
紅いきんぎょ が 鉢に一匹
ゆらりゆぅらり 薄い羽衣靡かせて
天の水面 で {ルビ喘々=あえあえ}ぐ
えらは 最早 役立たず、 紅い唇戦慄かせ
健気健気 に、 {ルビ喘 ....
"Don't Kiss My Tail"
あたしの尻尾にキスをしないで、
あたしは気高い黒猫乙女。
つんと澄ました鼻先も、
....
さめざめふる のは はるのあめ。
おとめの なみだ を、 まねて みせ、
あまい あまだれ ひとしずく、
ぽつりぽつり と、 ないて みせ
かなしかなしと ....
耽溺するはわたくしの血液に溶け込んだ
幾千錠という薬物たちの澱
ぐるりぐるりと
この身体の隅々まで余すことなく
細やかに張り巡らされた血管を抜け
微量の毒は澱と成り沈殿す
....
冬の空気に触れた肌が
ぴりりと脳神経を刺激して
眠った脳を揺り起こす
冬の匂いはまだしないのに
悴む手先と吐く息が
これからの冬の訪れを静かに告げ
ひっそりと誰にもサヨナラを言 ....
世界は何でできているのだろう、とあの日晴天の空が見渡せる屋上で君は錆びかけたフェンス越しにどこか遠くを見ながら僕に問うた。
僕の答えは簡潔で、立った一言「知らない」と答えた。
君は疑問ばかりを ....
秋の空気はどこかやわらかく感じるのは如何してでしょうか?
夏の熱を孕んだ空気がやわらかく溶け始め、冬の身を切るような冷たさを孕む空気の合間の一瞬をわたしはずいぶん好いております。
カーテン ....
秋の長夜の晩は、
てのひらサイズの文庫を片手に、
白熱電灯の下、鈴虫達の求婚歌をBGMに
一文字一文字刻み込まれた作者の言葉を読み解きませう。
秋の長夜の晩は、
少しばかりの退屈を御供に ....
明日は確実にやってくるけど、
手帳のスケジュール欄、明日の予定は空白で
手帳に差さっぱなしのボールペンはもう長いこと蓋が開くこともなく
乾いたインクの匂いは軽薄で真白な手帳は滑稽だ
....
何かを創り出そうとするには物語を紡ぐには
少しばかりの狂気が必要だとわたしは思うのだよ。
正常な思考・嗜好・施行は不必要
多少ばかりの異常ともとれる思考が芸術には必要でしょ?
画一的な ....
プールの水底でわたしはじっと空を見上げる
水面は太陽のひかりを反射して
きらりきらきら眩しく輝き
いっそう深く深くにわたしを沈めゆく
人魚になれれば涙も忘れて
このちっぽけな塩素の海 ....
明日雨が降ったなら、
遠い海へ行きましょう
灰色に曇った空と濁った海が
空と海との境界線を掻き消して
きっと遠く遠くへ
わたしを連れて行ってくれるはずだから
胸が詰まって息ができずに
涙があふれて
わたしは自分の涙で
満ち満ちた水底へ
あっという間に堕ちていく
沈む沈む沈む
深い深い水底へ
ぷくりぷくりと
気泡が昇がり
海面はゆらゆら ....
二者択一の取捨選択
同じリスクを背負って生きるのと死ぬのなら、
今のわたしはどちらを選ぶのかしらねぇ
まぁ、きっとその場の気分なんだろうけども
死んだら焼かれて白骨になってそれでお終い ....
夜の静けさは
時折無償にわたしを切なくして
どこか遠く遠くへとわたしを急かす
その衝動に抗わずに
流されるままふらふらと
月夜の夜道をパジャマ姿で歩いたら
どこかどこかへ辿り着 ....
弱いわたしは
記憶を心の奥底深くに仕舞い込み
雁字搦めの無茶苦茶に
厳重に厳重に鎖を巻いて鍵をかけた
時折壊れた個所から漏れてくる
記憶の欠片を見ない振りして
ただ強がって茶化 ....
わたしが好むのは 鈍い銀色
じわりじわり 時間の流れに侵されて
鈍く光沢を失った 銀の成れの果て
わたしが嫌うのは 輝く金色
きらりきらり 時間の流れに逆らって
煌びやかま ....
寄せては返す小波のように、
哀しみだけが胸を満たす。
何が哀しいのか、
何に泣きたいのかすらわからないのに、
ただただ
僕は涙にならない涙を流し
声にならない悲鳴を叫び続け ....
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