舗装された過ぎた道路は西に伸びる
隠された向日葵の種は
次はいつ芽吹けばよいのかと
首をかしげ
夏は立ち尽くしている
都会育ちの猫は
酷い体臭を払い除けながら
夜を寝床として
彼の恋人 ....
読み違えた時刻表と
溶けるような蒼さ
誰にも触れられないまま
街を逃げる
此処は誰にとっても何処でもない
気が付けば
喋らない受話器を静かに置いていた
ミシンで縫い付けた ....
霞んでく
思考は蛍光灯に溶けてくね
かざした掌みたいに
いつも通っていた映画館には浮浪者が身を潜めるよ
街の看板娘は他所から来た男と出ていった
いつか言った言葉をもう一度繰り返そうじゃな ....
日記帳に日々を組み込む
折れた紫陽花の花々が朝露に香る
雄弁に人々の虚ろな影を語る気がして
気が付けば真夜中
退屈が織り成す誰にも見えない戦闘服で
エアガンを撃ち鳴らす少年
飛び立つ鳥 ....
かたく閉じた両耳が震えた
ぐらつくほど景色は紅く燃え
わたし舟、かすかに揺れた気がして
しばらくこのままでありたいと
きえゆく視界に願った
なまえには最初から意味なんてないんだろう
つ ....
想像が織り成す有限の優先席
わだかまりに組み込んだ数々の感情と
何か言いたげな己の細い口元と
ゆるり、ゆるりと環状線を
ありきたりの道筋で
また感情線の掌
曖昧で、白く溶けて
ま ....
闇が完成度を増して体温を奪っていった
わめくテレビの音量も増すばかりで
寄り添う意味を静かに飲み込んでゆく
此処にバスは停まらないらしく
誰も近づくことはなかった
何処にでもある ....
通り雨が春の香りを全て洗い流したことを告げた
淡い緑色をしたカーテンを揺らす風が
頬を少しだけ撫でてくれている
そういうふうに風が流れている
男が乗り込んだ電車は
いつもより ....
降り続く5月の雨のにおいに
そのアパートの住人は気付かないふりをしている
僕は僕であって欲しかった
少なくとも鏡の前では或いは
君や君以外の誰かの瞳に投影される僕の影ですら
既に僕ではな ....
砂の川は春が近いこの街を
いとも簡単にすり抜けていた
乾いた季節
小さな子供の遊ぶ声が
離れていても鼓動まで届いて
影の居なくなった景色
埃を纏った詩人は川を渡る
....
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