神さまの足に蹴っ飛ばされて
コロコロと顔色を変えるような
サイコロ人間になるよりは
ポーカーフェイスな魚になって
ぴちぴち生きていきたい


どこからともなく聞こえてくるのは
つぶやく ....
 秋の雲、と聞くと鱗雲のような、空の高い層にある雲を思い浮かべるが、その日の雲はロールパンのようにふわふわとした、いわゆる綿雲だった。言ってみれば季節はずれのその雲の形に、それでも僕が秋を感じたのは、 .... 読んでいた文庫本を閉じて
窓の外に目を移せば
桜の枝に風はなく
文字に疲れた目に飛び込んでくるのは
夕焼け 夕焼け 夕焼け
ばかり


今日の夕焼けは
まるで
いつか見た夕焼けのよ ....
台風が来る
南の海の匂いと一緒に
置いてきた心を運んでくる
まっすぐに僕を目がけて


近づく力のかたまりに
胸の奥が震える
雲を巻き込む大きな螺旋が
心臓の鼓動と響き合う
どきど ....
わずかばかりの乗客を乗せた
昼下がりの鈍行列車の
窓を少しだけ開いてみると
六月の薫風がそっと忍びこんできて
僕の睫毛を醒ますのだった


この車両は最後尾なので
終着駅に到着する
 ....
いつもの店のいつもの席で
ちょうどよく酔ったその後で
独活の酢味噌和えという旬のものを
うすうす噛んで
うすうす僕は
ひっそりとニンゲンをやめるのだった


右の席からは仕事の話
左 ....
江ノ電鎌倉高校前駅と
腰越駅とのその間で
窓という窓が突然
ぱっと明るい海となり
ゆるいカーブの水平線に
乗客はみな取り囲まれてしまうのだった


すばやく走る波の線
空の始まるとこ ....
髪についた雪を払って
傘も持たずに街を歩けば
見慣れた景色は別世界
眩しいほどの銀世界


ふかぶかと残したはずの足跡も
振り返ればもう微か
念のため確かめてみたけど
両足ともにちゃ ....
水の中では
泡が言葉だ
生まれたそばからはじけて
君に伝わることはない


同じ水槽の中にいるのに
君の夢が僕には見えない
同じだけれど違う生き物
互いに互いを選び合えずに


 ....
いろつやかたち
どれをとっても
こんなに優しいものはない

両手でそっと抱いてみる


たましいは傷つきやすくて
触れあうたびに痛がっている
薄皮を爪ではがせば
そこには
今に ....
僕の一番深いところにある
尽きることない泉から
喜びや悲しみや
くすぐったい気持ちなんかが
湧きだしてきてとまらない


ありとあらゆる才能の中で
生きて死ぬのが一番の才能
そう言っ ....
掃除を終えた綺麗な部屋に
いっぱいの日差しが入ってくる
本棚の背表紙もそろえたし
机にだって塵ひとつない
今のこの部屋には
神さまだって住めるけれど
そうするわけにもいかないし
背もたれ ....
ある冬晴れの日のその空と
同じ色の表紙をした
日記を買った
他に種類はたくさんあったのだが
それはひときわ僕の目を惹いて
一度手に取り
一度戻して
もう一度手に取り買ったのだった

 ....
みんな昔はサルだったと
自分で自分を慰めて
路地裏を抜けたところにある
月のよく見える広場から
積木でできたビル街を
にらみつけた
雲のはやい夜


笑わない神さまが作り上げた
ウ ....
高鳴る鼓動 胸の奥
線路は続くよどこまでも
ポケットに手を突っ込んで
汚れた靴で旅に出る


マンネリ化した毎日を
変化球でどうにか凌ぎ
水でうすめた番組を
膝をかかえて受け入れて
 ....
湯気の体が
空をつんざく音に
いったん裏返りまたもどる
王冠の金色よりも
はげしい色と形をして


夕立の前に吹いていた風は
僕の胸に火をつけていった
残忍で透明な蠍の火種
その影 ....
どこかでたしかに会ったことある人に
挨拶してはみたものの
結局あれは誰だったのか
日が暮れるまで思い出せなかった


減るものじゃないけれど
宙に消えた「こんにちは」が
なんだか寂しい ....
帰り際に君が残していった
つれない言葉のひとかたまりが
僕を軽々吹き飛ばし
ふりだしにまで戻してしまう


まるで魔法だね
はだしで睦み合った日々を
真下に眺めながら


いつも ....
水たまりに浮かべた
葉っぱの
軽さ


しゃぼん玉を泳がせる
そよ風の
軽さ


羽毛の軽さ
まつ毛の軽さ
この世でいちばん軽いものはなに?


飛んでいく風船
手放し ....
じめじめと湿った梅雨をはさんで
僕が夏に近づいているのか
夏が僕に近づいているのか


ふたりの距離が縮まるほど
僕たちははだかに近づいていく
高まる気温に 僕はシャツを脱いで
高気圧 ....
手に持った花だけが赤くて
微笑みは色づくことなく
そんな夢の残り香だけが
寝ぼけまなこに引っかかってる


言葉にした途端に取りこぼしてしまう
こころの音階
りんごをりんごと
恋を恋 ....
夕方 ボート池のほとりで
すずらんが 風に撫でられていた


父さんにほめられた子どもみたいに
よしよしされて 満足げに揺れていた


空気は甘く 池はしずかだ
ああこれでいいんだ  ....
小さな家のベランダに
くつしたが干してある


大きなくつしたはお父さん
中くらいのはお母さん
ちっちゃいのは赤ちゃん


足の家族
川の字に並んで
風に吹かれてる
空き地の真ん中に
青い椅子が置いてあった
誰かが捨てていったのか
少しだけ古ぼけて


四本の足をきちんと揃えて
誰かが座るのを待っているかのように
目に鮮やかな色たちの
間に間に空のかけらが見えて
深まる秋を吸い込めば
他の誰でもない僕がひとり


ああ こんな燃えるような色をして
今年もまた 瞳の奥に小さな手形を残していくのか
 ....
冬が来て
コートに首を埋めて
背筋を丸めて
どこへ行こうか?
短くなった昼のあいだに


すれ違う人はみな
まるまると着ぶくれて
その姿はなんだかとても
退屈だ
昼間の月は間が抜 ....
春がくると、みんないっせいに
春の詩を書き出す。
夏がくると、みんないっせいに
夏の詩を書き出す。


くるもの、こばまず。
過ぎてしまった季節のことなんて、
忘れて。
さむい間じゅ ....
汚すことを恐れて、
変えてしまうことを恐れて、
引っこめた寒い指を、
ため息であたためる。





好きで好きで仕方ないものには、
まなざしで触れるしかないのか。
言葉より目配 ....
川の流れに人生を重ねるほど
僕は傲慢ではないので
ただここでこうして
せせらぎに耳をすましているだけ


どこから来て どこへ行くのかなんて
考えるのはよそう
流れというなら僕の中にも ....
まだ伸びきっていない手足
幼さを残した横顔
君は頬杖をついている

窓の外には退屈な午後の空白
夏を控えた空はしかし
君を少しも動じさせない
期待と倦怠は同じものだと
その瞳は語ってい ....
八布(44)
タイトル カテゴリ Point 日付
エレミタ自由詩4+14/11/17 22:09
秋の雲散文(批評 ...214/10/24 22:44
夕焼け自由詩414/10/20 17:27
野分自由詩414/10/5 12:17
車窓自由詩1114/6/15 21:21
独活(うど)と白湯(さゆ)自由詩914/1/26 22:56
冬潮自由詩1014/1/19 10:36
はつ雪さんぽ自由詩914/1/10 22:36
マーメイド自由詩514/1/3 23:32
自由詩413/12/27 22:06
深層水自由詩813/12/19 23:02
冬ごもり自由詩813/12/15 11:50
日記買う自由詩1213/11/27 9:37
ストーリーテラー自由詩213/11/25 22:38
ハンドポケット自由詩313/9/29 22:24
はたた神自由詩213/8/22 23:38
さるすべり自由詩613/7/14 14:48
ソネット自由詩213/6/21 23:53
軽さ自由詩612/6/23 21:49
夏を待ちながら自由詩212/6/22 17:06
印象自由詩712/5/26 22:14
ボート池で自由詩512/5/17 23:21
素描Ⅳ自由詩512/5/14 23:09
素描Ⅰ自由詩212/5/13 22:13
もみじ自由詩311/11/25 22:36
冬が来て自由詩011/11/21 23:00
春がくると自由詩111/4/19 22:36
まなざし自由詩211/2/12 13:18
川面自由詩108/8/19 22:33
血潮自由詩208/8/12 18:31

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