巨大なショッピングモウルには
きらびやかな自由時間が陳列されていて
選んでいる間は 人生一時停止
「ごゆっくりお愉しみください」
アナウンスがスロウメロディに混ざって流れてくれて
何だか安心 ....
満ち足りているのだと
わかり易い言葉に暗号をたくさん隠して
心の内を告げるその奥で
もう 今すぐに!
わたしのいない未来を
突きつけてあげたいと
恭しくその頬に指を添える
とろけそう ....
本屋で居合わせた人の顔を見て
奇遇ですね
と、会釈こそすれ
とりたてて話す事も無く
本の波に逸れていく
濡れそぼった傘の先
伝う雫さえ落ちぬ間に
外は雨
早い台風の予兆をはらん ....
「嫌な事って、忘れてしまって
いい事しか 残らないんですよね」
カラリと笑った女の子の言葉が
終電の空席に余韻を残して
その言葉の隙のなさに
胸がグッとなること 数回
夜が遅くな ....
では ここで分岐
右 or 左?
わたしは分厚いコートを着ていて
それは寒いからじゃない
かすり傷だって負いたくないから
物事は余裕を持って
でしょ
勿論!
その質問には
....
「迷っていたけれど
そういうふうに
生きていく事にしました」
密やかな決意を
胸の中で繰り返し
そこへ行き着いた
あなたの思いに対し
親指は言葉を探せなくて
携帯電話を閉じまし ....
幹線道路を渡ったら
もうペダルを踏まなくても
なだらかに坂を滑り
海に向かう
港町で生まれて
港町で暮らしている
潮風で錆びた自転車のホイール
刻んだ文字
いつかは消える 其れ ....
君以上に大切な僕なんて
そんなのは駄目だ
一番大事にすべきは自分だ
それが出来たら
誰かを
「自分と同じくらい」
大切にできるんじゃないかな
突き放しているわけじゃないよ
....
うだるような夏休みの夜
水を求めるように
冷凍庫から氷をとり
口に入れる
がりがり
噛み砕いたり
飴玉のように
ゆっくり溶かしたり
氷は40度に満たない
僕の身体にすぐ溶 ....
こちらは支度ができました
夏をむかえる
そちらはどうですか
どうですか
どうですか
どうですかは
反響し合って
どうなんですかと返す頃には
星彩に似 ....
優しくてまるいものと
強く冷酷であるものを
全く違う世界をちゃんと作った
全く違う人がつくったものを
何かの拍子に
同時に
僕が
欲したら
失礼だ
と、誰 ....
共有はしないけれど
否定はしない
と、いうスタンスを
貫くが
そこに感情がないわけではない
眠るひとの
額に口をつけるとき
その日一日
足りなかった言葉を添える
それ ....
耳障りがいいからといって
散らかしてしまった言葉を
解いて文字にかえしています
また
本当に
必要な時が
来るとわかっているんです
今の私には
お下げしてよろしいで ....
春めいてまいりました お元気ですか
雨が降るこちらです お元気ですか
会いたくありませんが お元気ですか
私が元気な事は教える気はありませんが
君は元気ですか
抽き出しに ....
眠れる彼に口づけをすれば
凍てついた私の身体は溶け出して
彼の中をゆらりと満たす
戸惑いにも似たうすべに色の吐息に
待ちわびた生命たちが歓喜する
みずみずしく謳歌する
すべてが覚醒をす ....
穏やかな好日のようなさようなら
あの誓いもそのようなものであったなら
言葉まで酔いに任せて
逃がしてあげる事ができたでしょうに
梅見の宴にて
「桜の花 ....
蕾のようなあなたを信ずる事
翼の無い少女のあなたを信ずる事
深く潜っていた事で
光を失ったという錯覚は
今
君のゆるやかな一歩で
打ち砕かれました
僕は僕の中で眠っていた ....
切なさと手を繋ぎたがる秋に囚われる前に
それら足下の落ち葉と一緒に踏みしだく
弱気なため息より早く決心をして
カケラになど成ると煌めいて厄介なので
塵に変わるまで粒子に還るまで ....
指先から綻んでしまったものが
冷たい夜空に還っていく様を
あつあつのコーヒーと見送った
おいで
おいで
手の鳴るほうへ
曖昧なお菓子をあげましょう
左の翼は死んでしま ....
君が爪弾いたギターから
粗野な音がばらまかれて
僕の部屋の天井に沁みを作る
それらは光をうけて
くすくすと輝きながら
一つずつゆっくりと
確かに覚醒してゆく
指先で繋げて ....
「楽しいから美味しい」
この事を忘れずにいようね
あの時の不思議そうな顔
ずっと忘れないわ
意地悪を言ってしまった
カフェ事件
どういうわけか
暑さにとんと弱く
夏の多くは廂の内で過ごす
生きにくい季節なのだな
私はそう解釈している
極々私的な話がある
と友達から連絡があったので
私は誰にも秘密が ....
ましろいゴンドラが空の青に冴えて
綺麗だとモンスターが言った
光も音もない腹の中で
私の指が微かに動く
私を喰って消してください
生暖かい風が吹くと
記憶が反響する
....
大人になっても手のひらサイズだという
仔犬の栗色の毛を撫で付けながら
この命はいつでも私に掌握されているのだ
と、思う事で
わりと穏やかな生活をおくることができる
上手に泳ぐ事を ....
僕が地球の裏側に行くまで知らなかった真理を
産まれ落ちた瞬間に すでに携えた人もいる
羨んで
贈った賛辞の
純真さ
いかほど
虚勢をはって
したり顔でからっぽな優雅さ
誰に ....
ダフ屋のおやじよろしく
少し猥雑な夜へ昇る
赤いゴンドラ君の手をとって
電波錯綜パチンと切って
インターネットの濁流を
泳ぎきるという 決意
僕らの街はぴかぴかの偽物だ!
....
恋人同士の言葉が
私の夏を少し惑わせて
環状線の波に酔う
頬を染めた女子高生達の
隠しきれない純朴さ
物語の行間にちらちら盗み見る
同じ早さで揺られて
全ての人は
各々の街に帰 ....
いつも目の前に
「もしも」
を二つ用意する
願っていない方の
もしも
だったとしても
驚きすぎたり
悲しみすぎたり
しないように
少しでも
耐性を持っていようと
思って
....
あなたが切り離そうとしてるもの
悩むくらいなら
私が愛してあげます
思い出に罪は無いと
信じていたいじゃないですか
いつか私を
そのように切り離したりしないで
そっと信号を発して ....
僕たちは
自己愛が強いのか
愛情過多なのか
つまり
屈折していて
言葉を介して
真っすぐ伝え合う事が出来ない
濡れそぼるデュランタの儚さは
強さをもたないわけではないのよ
....
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