1

そのときぼくは、病室の硝子窓に額を強く押しつけていた。
室内はとても清潔だった。舌を噛み、顰め面を浮かべたぼくは、
見知らぬ突然の抱擁のように、背後の扉をノックする、
<ラストシーン> ....
 Loser、うながされるまま射精する、この夜の果てにダダダダダ。

 これはついこの間ぼくが書いた詩の最終行なのだが、なにはともあれ話は射精についてである。何が好きといって、ぼくはセックスほど好 ....
夜のなかを流れる夜、橋上を吹きぬける無色の風。
 暗い浴室の排水口。サーチライト、夢遊病者を追跡する。
紙幣を数え直す音。こめかみに突き刺す人さし指。
 刃こぼれした剃刀の反射に、鏡のなかを流れ ....
 八月の午後だった。風はそよとも吹かず、その年の最高気温を記録するほどの暑さだった。視野に入るものはどれもみな輪郭を曖昧にして、そのまま溶けだしていくようにも思われた。唯一、水銀を流し込んだような往来 .... 1.核時代の終焉

新宿上空を、二台のヘリコプターに吊るされている。
モニュメント、蒸気、モニュメント。
「あれも一種の知性改善論だな」
「えっ」
「だから、スピノザだよ」
そう言い残す ....
生牡蠣色した夜明けの都市を
雨は重たい鉛のように撃ちつける
聖母像を運ぶ男と
地球儀を回しつづける女が
顔を上げて同時につぶやく
――あなたは誰?

ぼくは鉄路に耳を当てている
いくつ ....
引力のタクト、舞い上がるZip、
 Zip、口移す、真冬の火花。

  白より白く、真冬の火花、むすんでほどいてまたむすぶ。
   半径25メートル内を、白より白く、
    むすんでほどい ....
紙ナプキンとソーセージ
煤にくすんだ造花の窓
冷めないスープ
「マルクスか死か」
明るくて清潔なレモンの腐敗
すべて食卓には神話がある
 目を覚ますと、ぼくは全裸で浴槽に横たわっていた。身震いするほど寒かった。ぼんやりした頭で浴室を見回すと、急にそこが見覚えのない場所であることに気がついた。無理な体勢で寝ていたせいか、起き上がると身体 .... ひとつの出来事も観察者によってさまざまに解釈される。
また、画一的な解釈の反復と強化は、一種の暴力であり他者の排除に繋がるとされる。
ひとつの出来事を多面的に読み取る、または読みかえる努力が広くに ....
なぜひとはふいに空を見上げるのだろう。
休止符のような空の底から、問いだけが止まずに降り注ぐ。

ひとは空を塗りつぶそうとする。止まない哀しみを注いでみたりする。
さよならの代わりに虹を咲か ....
今までに聞かれたことはもちろん、今後聞かれることもまずないだろうが、
もしも、好きな詩人は誰かと聞かれたら、ぼくは真っ先にハート・クレインと答えるだろう。
彼のような難解、というよりも下手糞な詩人 ....
地上12階から遠望する 驟雨沛然 死ねないシネマ
顔をしかめて しめやかに濡れる ショパンという名の失業者

住所不定 慢性的に胃弱の犬が 活発な殺意で吠えている
名前を忘れた囚人たちよ 明滅 ....
A

ジャック・ケルアック「路上」を読む。
これは主人公サル・パラダイスが狂人ディーン・モリアーティに翻弄されつつ
各地を旅してまわるという、いわばDiscover Americaの物語である ....
床でじかに眠るものにも
朝の玄関はあらわれる。(堀川正美)

1.

狂気じみた情熱をもってしても、われわれがその謎を解き明かすことが出来なかったのは、
何よりもそこにはひとつとして謎が存 ....
あるシネ・ポエム

1.マネキン

首からボードをぶら下げている。ボードには何も書いていない。
ふいに見えない手が現れて、ボードを裏返す。
「Are you sleeping, Broth ....
なんでもレイモンド・チャンドラー「長いお別れ(ロング・グッドバイ)」が
村上春樹による新訳でこの度新たに出版されるらしい。

ぼくは村上春樹についてよく知らないのだが、話のついでにせっかくなので ....
・逆光のなかで革命家はとても大きく見えた(1958年)

・痙攣する運命を前に、私たちが正気のままでいられなかったのは、
 なによりも私たちが多数だったからである(1997年)

・誠実もま ....
ひとそれぞれだという。十人十色だという。解釈はそのひとの自由だという。
それはそれできっと素晴らしいことなのであろう。
ただここで残念なのは、いくらそう声高に主張してみても、
どうやら世の中に類 ....
書くという行為を問題にするとき、いくつかの進め方が考えられる。
「なにを書くか」「どう書くか」「なぜ書くか」などなど。
これらはそれぞれ截然と独立している問題なのではなく、混淆としているのが実際の ....
1

スタンドミラーの前に彼女は立っていた。
肩越しに覗くと、ブロンドの髪の少女と目が合った。

女装クラブの更衣室は、何故かG・K・チェスタトン「木曜の男」を思い出させた。

2

 ....
彼はそこにひとりでいた。しかしそこにいたのは彼ひとりではなかった。
その屋上プールではたくさんの人間が半裸のまま死んだ魚のように浮かんでいた。
それは誰かが水中に劇薬の類を流しこんだからに違いなか ....
扉が開く
扉が閉まる
最後の客人が去って
君の誕生日は終わる
ソファーに残ったやさしい温もり
弾けないピアノ
吸えないタバコ
ところで
光より速いものが存在しないのならば  ....
あなたはいない
あなたのかなた
それゆえ速度のないConfetti
かたくなに知ることを拒んでいる
風はいつでも控えめに眩しい

春は花のなかで眠った
冬はその腕に抱かれて眠った
建築 ....
ひとつには態度の不徹底である。
こちらのひとには我慢できないことでも、あちらのひとでは平気で看過できる。
脳味噌が足りないのは仕方のないことではあろうが、
足りない脳でもせめて最大限使うよう努力 ....
白(shiro)氏の「5つの返答」について。

1について、ぼくは非を認めたいと思う。
蛾兆ボルカ氏がどちらもテクスト上では大差ないと言ってくれていて、
その点ではぼくもそう思っていたのだが、 ....
水色の
セーターを着て 姉は
蛛形類の姿態

冬期臨時急行列車は
ぼくらを冷凍魚にする



シガレットの灰
つぶれたチューブ
青と赤だけの平行線

海の ....
おそい夏の日の海岸に
光が二筋 射し込んで
無人のボートが沖合いへと流されてゆく
それを呆然と眺めている
あの少年は一体誰か

ぼくの寝室の壁には
一枚の記念写真
姉が首 ....
   言葉は明らかに理解を強要し、蹂躙し、すべてを混乱に陥れ、
   人を無数の空虚な論争と無益な空想に追いやる(フランシス・ベーコン)

1.

漫然としたものでも、生きていればそれなりに ....
薔薇が燃える。――溶ける花びらは血のようであり、
触れてみると、事実、それは血なのである。

派手で濃い目のメイクを要求する。金で買った女だから、
手は触れない。服も脱がさない。君はひたすら喋 ....
んなこたーない(95)
タイトル カテゴリ Point 日付
ラストシーン自由詩407/4/6 2:14
射精についての覚書、あるいはボードレールについての覚書散文(批評 ...107/4/4 22:03
ある夜自由詩107/4/2 2:36
狼よ、おれたちも敗走する!散文(批評 ...007/3/29 16:48
モーター狂は警鐘を鳴らす自由詩207/3/22 16:43
愛について自由詩607/3/19 0:08
Snow Queen自由詩207/3/17 16:41
囚人自由詩607/3/16 7:29
自分は見た散文(批評 ...307/3/16 7:04
グルーブは可能か散文(批評 ...007/3/15 17:51
遠くまで自由詩307/3/14 18:41
聞かれないことに答えるひと散文(批評 ...207/3/13 19:29
夜へ自由詩007/3/11 2:55
「路上」から始まるABC散文(批評 ...2*07/3/10 16:03
既にそこにあるもの—1散文(批評 ...007/3/9 6:01
付け狙われている!自由詩107/3/8 1:11
皮肉について散文(批評 ...1*07/3/5 16:02
年表未詩・独白007/3/5 1:35
ひとそれぞれということ散文(批評 ...407/3/5 1:05
なぜ書くか、あるいは15分間で何が書けるか散文(批評 ...007/2/26 16:21
Queen of the town自由詩107/2/22 17:43
彼の場合自由詩307/2/20 20:05
パーティー(Party)自由詩507/2/19 16:49
(あなたはいない……)自由詩207/2/18 5:06
笑いたい、腹が痛くなるまで笑いたい散文(批評 ...2*07/2/17 18:43
補足などなど散文(批評 ...1*07/2/16 19:59
日記自由詩107/2/16 17:04
記念写真[group]自由詩207/2/16 16:53
5つの報告散文(批評 ...207/2/15 11:02
シャドー・ワーク(Shadow Work)自由詩407/2/14 17:41

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