あなたは物静かだった
あなたを背負うと
その軽さの分だけ物静かに温かかった
だからあの家は部屋は
この空の下突っ立つ一人の人間は世界は
今でも物静かなまま
極めて物静かで
見渡す限り ....
電車を降りると
点字ブロックが
花野に埋もれていた
あなたはここにある花の名を
一つとしてしらない
見えることもない
それでもその眼は
厳かなほどに瞬きをするから
見えているも ....
裁判の隣際
法廷内の竹林の近く
肩車と風車がくるくる
かけっこをしている
被告人として茫洋としてみる
窓の外を見る
どちらかの肩を持つ
たとえ裁判長でも
それらは許されない
....
ずっと
船に乗ってた
訳も分からず
切符を持っていたものだから
夜空が美しい
けれど夜が汚い
信じていた
その濃色を
波が輝いている
チェロの音色が聞こえてくる
離さない
....
プロペラが分裂していく
男の目の前の
さらに前時代に
雨が降って椅子ができた
その椅子に男が一人
座って森を見ている
何を見た
プロペラでできているのに
男は台の上にのぼり ....
空が横倒しになり
星が包まれるとき
そのとき私は
包丁を刻み
煉瓦で川をつくり
小麦で塔を建てるでしょう
そしてできた塔にお客をお招きし
窓際にテーブルを置いて
楽しく喧嘩する ....
光を見る眼はもう外れたよ
今私が見ているのは心の中
昔の話が全てを創っている
昔の話は夢の話
祈りは宙を舞って時から逃げていく
永遠と引き換えて手に入れたもの
取り返しのつかない卵
....
島に行けば分かる話
自転車置き場が輝いているのは
真っ赤に燃えてるから
太陽と青春の衝突によって
折鶴を高層ビルの屋上から落としてみると
鏡のような窓にぶつかってから
風に吹かれて ....
春夏秋冬の後ろに小さく
くっついてくるものがある
やたら弾けている
その癖おどおどと温度との
距離を図ったりしている
君は器用にそんな季節を丸めこみ
情緒の中に埋めこんだ
....
言葉がほしい言葉があったなら
あったなら後は後でどうにかなるのに
あ、から始まっても
ん、から始まってもいい
言葉ばかり求めてこんな今でも
*
ヘビースモーカーの刑事は
スパス ....
今日は霊園の日
場所を知らないので
どうやって歩くか知らないので
案内人に手をひいてもらって辿り着く
太陽のない青空の中に降りてみると
約束どおりあなたがいた
誓ったとおり覚えたままの ....
今日も元気に穴を掘ろう
やろうと思えばどこでだってできる
ただ道具は常に新しくなくてはならない
頼んだぞ二十九番目のスコップ
以下、穴掘り中の音声を録音したもの
再生というより復活
....
この両手はいつも
空を抱き締めて
あなたを描いている
どこにもいないものを
感じるということは
悲しいことではなくすばらしいこと
あなたが教えてくれた
後半は僕による捏造だとしても
....
奇跡を実験することにより
首が長すぎるシマウマと
首が短すぎるキリンが宇宙にやってきた
昔から彼らは争うことをしない
シマウマは地面に生える植物を
キリンは木に生える植物を
ゆとりを望 ....
あれはチューリップだ
これはチューリップだ
それはチューリップだ
それでもチューリップだ
交通渋滞はチューリップだ
あなたはチューリップだ
私はチューリップだ
あなたも私もピーナッツはチ ....
お母さんが人を殺した
お母さんでなく岡さんだった
それでもお母さんと呼んだ
遺灰を砂浜の砂に混ぜると
砂の数罪の数優しさの数
同じだと知った
位牌を抱えた人に伝えようと
見回そう ....
桜って詩になりやすいね
きれいだし儚いし日本的だし
でも今はさ無理だよ
もう散ってるとかそういう
問題じゃないって分かるだろう
もう桜でどこまでどれだけ
詩を連ねたか分からない
....
インサイダー取引も
アウトサイダーに扱われるのも
もうお腹いっぱいだね
喉なら結構渇いてるから
休憩がてらに
賢治も愛したciderでいっぱい
cidersider
昨今は上手に生きてます
花の咲かし方も覚えたし
友達もたくさんできました
君の傍にいる時間も増えました
気になることといえば
ずっと瞼裏に黄昏が広がってることなんですが
その下に見知ら ....
地図の上に鉛筆を立てて
転がった位置まで歩いてみると
道路の真ん中にアルマジロがいた
それから早幾年月
アルマジロの実の弟
ジローに出会った
普通の人間の形をしている
折り目正しくス ....
姉とハンバーグを作る
この広い大草原の中で
寂しさを潰そうと捏ねて変形させようと
焼いて楽しくしてやろうと
玉葱を切って遥か経つが
姉の涙は止まらない
それはこの世で唯一の水
私 ....
星になるなら今しかない
新しい星へと
たったこの時
たって掴んで掴めそうで
死後やタレントやそんなんじゃなくて
もっとクールに斬新に
かつエレガントに
センチメンタルに
は ....
心に頼り心で確かめ心で伝える
心が無くなれば宇宙も消える
確かめるというのは常に
その一瞬一瞬でしか使われない
後のことはともかく
こうして二人だけの永遠ができた頃
どこにも君はい ....
押入れの果てから恋人を取り出すと
降り積もらずに溶けた雪の手触りだった
少し寝ぼけてるようなので
縁側に運び春の陽射しを浴びさせる
庭先の木に落ちずに枯れる寸前の椿の花がついている
....
東京に空なんて
ないじゃんもうやだこんな息苦しいとこ
とあなたは昔とは違い
ストレートにまくしたてます
その興奮によって必ず
主観と客観を微調整するチャンスを失っています
そうだねと相 ....
郵便屋さんご苦労さん
手紙が十枚落ちました
燃やしてあげましょ
いちまーい
ボウッ
にーまい
ボウッ
さんまーい
ボウッ
よんまーい
ボウッ
ごーまい
ボオッ
ろくまーい
....
死んだ人を愛することは
じゃんけんに似ている
思うことは
与えてくれたものには勝てず
与えてくれたものは
あなたには勝てない
そうしてあなたは
思うことに勝たない
何故なら彼らはひとしずくの馬鹿だったからです
何故なら理由などいらないからです
「怖い」という言葉が似合わない馬鹿どもだったからです
真っ白な平原をカタカタと
おとなしく戦車が走っ ....
生まれたときから傍で横たわってた溺れたての見知らぬ人が
見えなくなった今日という日
あの人が選んだのは私でなくて日常と私を繋ぐ糸であり線だったと
悟りつつある今という瞬間
さよなら糸さ ....
「全てを許してからもう一度会おう」あの人との約束を守るために
ひたむきに何もかも許していく道を選んだ
あのときの理不尽な別れも許してから
許すことは途方もなく単調で集中的な仕事で
気を抜く ....
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