涙を拭いた紙で酒を拭く
鳥か四ツ足か分からぬものが覗き込む
切りつづけ 喰いつづけ
泣きつづけ 呑みつづける


鳥の羽を持つ虫が
命の行方の地図を照らし
在るはずの無 ....
夜の蒼のなか 点滅する灯
赤と白と 碧の建物
鉄のかたちが 
径に横たわる


夜のなかの夜を見すぎて
暗い泡が浮かんでは消えない
目を閉じたまま何を視 ....
雨のなかの白を追い
ふたつの午後が終わってしまう
雨の後も白はひろがり
宙に音を描きつづけている


鳥が一羽
白をついばみ
描かれた音に
音をこぼす


金と ....
闇さえわたし
照らすことのない
光さえわたし


鉄柵の奥の
まぶしい水
冷たくひらく
ふたつの香り


二重の曇
二重の径
まがいものの絵筆の空を
白 ....
匂いの無いうたから
花は聞こえ来る
雨の針 雨の針
ひとつひとつに
霧を閉じた粒


さくさくと喰む曇の
ゆるやかな揺れゆるやかな揺れ
水が到く前の
手のひらの静け ....
雨のなかの声
とおりみち


夜に立つ
銀の生きもの
夜を 揺らす


曇の音
手をふるもの
雨の去る音


月が照らす海
小さな声
静かな ....
遠い遠い
遠い振動
真四角な
ひびき


降りて来そうで来ない手が
曇のすぐ下を漂っている
何も無いところから生まれ
流されることなく浮かんでいる


雨音が止 ....
真夜中に
外国人が部屋に来て
ジーンズを穿かせてほしいと言ったので
つぎはぎの古いジーンズを渡した
そのまま何日か
居つづけた



ある日 外国人が
 ....
乾くことのない水滴に
静かに静かに築かれる墳墓
月の動きを
見つめている


後ろに手を組んだ花
折れた櫛の先
人々は憤り
道に夜が来る


霧の雪
鳥居 ....
こぼすものなく
こぼすものなく
またひとつになる
雪の花が
雪の手に廻る



遅いまたたきが
音の背を見る
幾重にも連なる
虹の輪を見る


熱くて
触 ....
羽が水が糸くずが
身体の外を巡りつづける
拍手は砕け
曇空を覆う


枯れ葉の手が
枯れ葉を掴む
夜の階段をゆく
ひとしずく


青空のけだもの
降り ....
埃まみれの
赤と黒の上に降り
焼け途切れゆく痛みだけが
春の汚らしさをすり抜ける


夜の空の水時計を
径の光が照らしている
窓に溢れ やがて散る
一夜の ....
消えない泡が
夜の空を見つめ
やがて
もうひとつの夜になる


曇を見るたび痛む目に
雨は常に降りつづき
左側が
見えなくなってゆく


縦の紙を手に取る
 ....
揺れている時には揺れず
揺れていない時に揺れている
空箱の重なりのなかの本
再び飛び立つ時は来るのか
雨の集まり
光の素地
光の葉が泣き顔を隠し
涙の代わりに光を流す


白い家を覆う白い花
白い枝 白い径
色の失い風の
色の失いうた


石像に囲まれた ....
花に咲く水
銀の塔の窓
鳥を放つ子
放つ子 放つ子


さまざまにさかさまに
指と指に入り組んで
小さな声は地に落ちて跳ね
また葉をふちどる炎に還る


影の掻 ....
何も無い場所に触れると光が割れ
もうひとつの陽が現われた
うつしみ うつしみ
いつくしみのない ただよい


重さの無い象が荒れ野に降り立ち
風の内の水を見ている
光は ....
雨の鳥
夜は狭く
髪の内の海
霧は軋む


いつのまにか 朝は文字になり
昼には音になり 土に吸われた
夜は ひとりだった
夜は あたたかだった


む ....
幼いハリネズミの背に
指を乗せると
ハリネズミが言った
あなたの針は
おかしい
雪に埋もれた砂浜に
もうすぐ津波が来るのだという
家を出てから十五分
家に着くまで十五分
海の反対側の坂では
家より大きな黒馬が眠っている
もうすぐ津波が来ると ....
ひとくちの水ほしさに
幽霊は夜に立っていた
眠りと死の違いを
未だわからぬまま


あらゆる終わりに優しさは無く
ただ悲しみばかりが晴れわたる
舟漕ぎ人夫の
沈みゆく ....
これが言葉になった言葉
話しようもなく
離しようもない言葉
待つもののない
またたきの言葉
霧と緑が
空に到くほど昇り
その反対側は
水平線を覆い尽くしてのびている


夜と鴉は無言で争い
少しずつ異なる記憶が
水たまりの底に並ぶ
小さな波に歪みなが ....
左目の時間は遅くなり
右目は知らぬふりをする
雪になれない雨の日々
径に生える短いまぼろし


冷たい水のかたちたち
好きと同時に嫌いながら
指の数を限りなく
限 ....
右手を左に巻き
手のひらを横に
額に立てて
夜は夜を
ひとりはひとりを
両断してゆく
ひとつ そこにある霧の本
まだら漕ぐ月
そして心
曇間の惑星 曇間の惑星 


冷たく痛みの無い針の雨
左目から喉へ斜めに入る
触れずにいると
熱く 消える
 ....
もしかしたら
ずっとそのままかもしれないものたちにしがみつき
ぼろぼろに
ぼろぼろになってゆく
有限の 有限の 歩幅


途切れているにちがいない
だが
つづいている ....
わずかに開いた
夜の扉
ふくらはぎを
受信する耳


ふるえ ふるえ
どこか冷たい
縦も横も
どこか離れて


どの扉にも
開けたあとがあり
その幾 ....
鉱のような
父の服がある
洗ったはずだが
そうは見えない
裏地に牙が
見え隠れしている



















 ....
育てた蜘蛛が
ある日いなくなり
用意した餌の山を
生きたまま噛んでいる
木立 悟(2339)
タイトル カテゴリ Point 日付
火原 けだもの自由詩319/5/11 2:29
降り来る言葉 LXIX[group]自由詩219/4/29 9:11
夜 羽織る夜自由詩219/4/21 9:53
声と鉛自由詩119/4/8 19:42
ひかり ふるえ自由詩019/3/26 15:19
ひかり しずか自由詩219/3/14 23:02
ひかり 迷う手自由詩119/3/3 21:43
ノート(外国人とジーンズ)[group]自由詩019/3/3 21:42
ひかり 冬の手自由詩219/2/17 20:56
ひかり 放す手自由詩219/2/5 20:44
ひかり けだもの自由詩219/1/22 17:20
ひかり到く手自由詩319/1/9 20:11
ひかり注ぐ手自由詩418/12/29 19:26
ノート(本)[group]自由詩218/12/14 9:37
ひかり担う手自由詩018/12/14 9:36
ひかり歌う手自由詩118/11/30 12:28
ひかり結ぶ手自由詩118/11/19 19:56
ひとつ 警笛自由詩318/11/7 19:10
ノート(はり)[group]自由詩218/11/7 19:09
ノート(十五)[group]自由詩118/11/7 19:08
ひとり ぬかるみ自由詩518/10/27 10:08
ノート(ふりくる)[group]自由詩318/10/27 10:06
ふたつの色自由詩318/10/19 19:40
永き静けさ自由詩218/10/7 9:56
ノート(両断)[group]自由詩318/10/7 9:54
遠く 白く自由詩018/10/1 9:42
変と遍自由詩118/10/1 9:40
闇に在って自由詩218/9/24 20:24
ノート(牙)[group]自由詩318/9/24 20:22
ノート(噛む)[group]自由詩118/9/24 20:21

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