アリクワナイ【蟻食わない】:アリクイの中で突然変異によりごくまれに生まれます。生涯何も食べないので生まれてすぐ死んでしまうんで、未だに誰にも発見されていないんです。
ベータヅカイ【ベータ使い】 ....
夕凪燃ゆる光の隙間
寝過ごした夢の途中で死んだ
黒猫拾ってきたよ
存在をかき消すように生きてきた
時折鳴るベルの音に自覚を
ああここに俺はいたんだ
早くそっちへ行きたか ....
あははと踵の硬く白くなったところを爪でぐいぐい押しながらこらえきれなくなった笑いを爆発させる。ここ、ここ、ここ、ここ床一面に広がった牛乳を指差して必死に叫ぶ。その上をつーっとフィギュアの選手気取りで滑 ....
みじめな欲望じゃけえ、今目の前で失うても構わん。ヒクヒク鼻を近づけて臭てもろても構わんけん、その代わり腰をくねらしたシルエットはきれいやと言うて。朝ごはんに作る味噌汁に何の具を入れるんか考えることだけ ....
闇夜に咲く花はきれいやね、と言うお前はこんな真っ暗なところで一体何を見ているというのだ、と僕は思うけれど、そうだな、と同意する。お前は満足したようににやりと品無く笑い、また夜道を歩き出す。その足先はい ....
腕切るわなんて言い出すから、せやったらやってみいよというと、困った顔になって、ほら見たことかそんな度胸もないくせにと笑って冷蔵庫のビールを取り出して、だからお前はいっつも脅すだけで何にもできへんねんな ....
僕たちは汚れた道を
掃除しながら歩く
次から次へ
また汚れるのを掃除する
道はきれいになった
誰かが俺の道だと言った
僕たちは入ることができなくなった
また違う汚れた道を
僕たちは ....
まあるい形をした絶望
あっちへほうり、こっちへほうり
子どもら原っぱ駆けながら
何でも遊び道具に変わる
月のにおいが漂い始め
みんなのお腹がぐうと鳴る
明日も一緒に ....
喉が渇いたから水星を飲んだ
火星を太陽で丸焼けにして
火の玉みたいにして遊んだ
金星のお金で土星のネックレスを作って
たっぷりお洒落して宇宙を遊泳しながら
デザートに木星を食べる
最後 ....
鍵っ子が道を尋ねてきた
僕の帰る方向はどちらですか
僕は少しいじわるをして
どちらでもない真反対の道を指さした
鍵っ子はありがとうとお礼を言って
その方向へと歩き出した
僕 ....
顔のない女の顔に
雑誌のモデルや
女優の顔を見ながら
僕は毎晩好みの女性の顔を描いた
僕たちは抱き合ったり
キスをしたり
僕のものをくわえさせたり
卑猥なことをして遊ん ....
耳の聞こえない少女は
街中の人気者です
街の人たちは
人には言えない汚い言葉を
ここぞとばかりに少女にぶつけます
シンジマエ
アバズレバイタ
ジゴクヘオチロ
....
女と旅に出た
列車に乗って
読み方の分からない駅で降りた
駅員のいる改札を
通り抜けるときに
よい旅をと
駅員に声をかけられた
ありがとうと言い返したが
もう駅 ....
大雨が降って
やっと箱船日和がやってきた
世界が終わるまでに
なんとか間に合いそうだ
どれだけの長い日照りが続いたろう
以前に用意していた女たちは
皆ひからびてしまった
....
あちこちの地面に張り付いた影たちが一斉に声を張り上げる。
「細身の影はこっちだよ。ちょいと太めのあんさんも、きれいなシルエットに写してあげるよ。」
「おちびちゃんはこっちへ ....
橋の上で頭を垂れて
道行く人に小さな段ボール箱を差し出している
一人の老婆に
あなたはさっと歩み寄り
その汚い箱の中に
箱よりも小さな希望を入れました
何の重さもないそれに
頭を ....
少女は影と仲良し
毎日毎日一緒に
日が暮れるまで遊んだ
少女は
周りの大人たちの話す陰口や
虚飾に包まれた世辞を聞いては
呆れ果てていた
大人になんかなりたくないわ ....
線路の上に
等間隔に人が寝そべった
その上を
列車が通り抜けていった
バラバラになった体を
適当につなぎ合わせて
新しい組み合わせの人間が作られた
通勤途中だったサ ....
アスファルトに焦げ付いた影を切り取って
家へ持って帰った
壁に立て掛けて
白いチョークで
目を描いた
耳を描いた
鼻を描いた
口を描いた途端
影はしゃべり出した ....
あまりの暑さに
体が溶けだした
それは両足から始まった
僕はそこから動けなくなった
そのうちに体全体が溶けていった
僕は完全に溶けてしまった
でもいいさ
今日はこんなに暑いのだから
....
両親が好きな子がいた
どんな両親が好きなの
そう尋ねると
それはそれはたくさんの条件が出てきた
まだ続きそうだったので
それを遮って
ところでその条件にあてはまる両親はいたのと聞くと
ま ....
真っ白な切符が出てきた
何も書かれていない
小銭がなかったので一万円札を入れたのに
お釣りは出てこない
駅員さんに文句を言おうと切符を見せると
カチッとスタンプを押して
改札を通して
....
尻尾が生えた
触ってみるとなんだか少し
気持ちが良い
女がいた
押し倒して
女の中に尻尾をねじ込んだ
女は身をよじりながら喘いだ
町行く人は
尻尾を見てひそひそ ....
私は死んだので
私の体を抜け出した
いつか死んだらきっと飛べるだろうと思っていたから
私は飛んだ
町中を飛び回った
何人かの人と目が合った
けれど何も尋ねられなかった
飛ぶことができ ....
腕を切ったら
赤い温かい血が流れて
ああ、こんなに温かいのに
体にあるときは気づかない
私は思って
そんな風に思って
湯船に世界地図のように広がる赤い水面に
行って ....
マンホールを開けて
すっぽと中に入った
地球を抜けて
ずっと抜けて
だんだん熱くなって
手足が溶けて
胴体と頭が
どろどろになって
固まって
真っ黒になった ....
鬼がやってきて
かくれんぼをしようと言った
僕たちはちょうど
何をしようかと考えていたところなので
いいよ、いいよと
鬼に賛同した
鬼が百まで数えている間に
僕は境内の ....
白い服を着た少女
向こう側からやってくる
黒い服を着た少年
反対側からやってくる
少女と少年は出会う
少年は少女を犯す
少女の白い服に
小さな赤い斑点が滲む
....
ある旅人は言いました
世界の果ては海だったと
もう一人の旅人は言いました
世界の果てにはただただ高い
山があったと
私は彼らに言いました
世界の果てには
一人の少女がいたと
....
湯船の上にぽちゃんと咲いた彼岸花
天井から落ちる水滴が
少しでも、少しでも
薄めようとして
私はまた一つぽちゃんと
花を咲かせます
ぽちゃん
ぽちゃん
少し ....
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