名を知らぬ花の前で立ち止まっていると
すぐ後ろから
「ママ、雪柳が綺麗だよ」
という声がするのでした
明日はパパと3人で動物園に行くのですか
ごめんなさいね
春は小さな物音にも ....
いろんなものがぶら下がっていたので
ついつい拾ってきてしまった
天井から吊るすと
いろんなものがいろんな色に光り
窓を開ければ夏の風に吹かれて
いろんな音をたてる
シャリン、チャリ ....
夢の中で
年老いた象が悲しそうな顔をしていた
どうしたのか、と聞くと
故郷のアフリカに帰りたいのだと言う
草原で捕獲され
動物園に運ばれてからの調教師との親交や
子供を出産したこと ....
台所に落ちていたピーマンを
コロコロと転がす
窓の外
喪服を着た人が数人通り過ぎていく
誰かの死はいつも何気ない
昨日より少し蒸す部屋に
何の比喩にもなれない私がいる
....
駅前で冷蔵庫が名刺を配っていた
私も一枚欲しくて列に並ぶ
冷蔵庫の中が無性に見たくなって
ドアを開けようとすると
少しムッとしたみたい
ガサガサ音をさせる
もらった名刺には冷蔵 ....
ようかんが街をつつんで
今日も夜がやってきました
駅からの帰り道なんですが
星々は百円ショップのようにチープにまたたいて
さしずめ月は壊れたひょうたんってとこですか
秋の虫がいい ....
虫歯が痛んだので歯医者に行った
虫歯を治してください
口をあんがあと開けたのはいいけれど
白衣を着たおじさんに
ここは目医者ですと言われてしまった
仕方なく
僕は自動車の整備工であ ....
ねえ、雨
+
音
+
遠い
+
いつも
+
記憶
+
遠い
+
ねえ、雨
+
崩れる?
+
崩れない ....
1.
顔を洗って髭を剃ると
私の顔は鏡の中にあった
洗面所の窓
その外にはいつも外があって
夜がまだ薄っすらと残っている
貞淑なやす子は朝食の後片付けをしている
今までの毎朝 ....
二十数年前
大量の醤油を飲んで自らの命を絶った科学者がいる
それが私の父だ
いったいどれくらいの醤油を飲んだのか
警官が説明しようとすると
母はそれを遮り
私の手を引いて長い廊下を歩き ....
【透明人間の憂鬱】
透明人間の悩みは
最近、髪の毛が薄くなってきたこと
これでも若いころは
リーゼント、ヨロシクきめて
ハマのあたりでバリバリに透明だったぜ、ってなもんで
今ではバ ....
ボーリングの玉をひとつ持って
旅に出たことがある
あてのない旅だった
いつ終わるともわからない旅だった
右手に
疲れたら左手に
15ポンドの重量を感じる旅だった
旅路のはて
帰るこ ....
道端に膝が咲いていた
膝が咲いていた?
膝が咲いていたとはどういうことだろう
膝は、知りませんよ、とばかりに
風にゆれ、少し音を立てている
春も終わるころ
ぼくは何の確証も持たずに
....
夏痩せしたみたい
はり金が差し出す腕は確かに細くて
どこまでが腕でどこからが腕なのか
わからないままに、痩せたね、とさすると
そこはこめかみよ
拗ねたふりをする
食卓には温めたロー ....
(一)すべてのものは
日が翳っている
四月は末日
冷たい図書館の
その片隅で
ある日、男が生まれ
ある日、死んでいった
たった二行の
歴史書が
誰にも読まれること ....
ラッコといっしょにお風呂に入る
ラッコは不安気にぷかりと浮いている
タオルをお腹に巻いて
その端を栓に結んであげると
やっと安心したようだがまだ不満気だ
そこで軽石を二つ持たせると
嬉 ....
街中ですっ転んだ
視界にあるのは人の脚
何事も無かったかのように通り過ぎる脚
立ち止まってこちらに視線を投げかけている脚
スーツの脚
ジーパンの脚
スカートの脚
ルーズソック ....
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