子供たちが整列をしていた
何をしているのだろう、とよく見ると
整列をしていた
身体の隅々にまでしみわたる雲のように
なだらかで滑らかだった
透明な水を植物にあげて
話すことなどもう ....
加藤さんが五大大会三連覇を達成する
という快挙を成し遂げた
まだ梅雨は明けきらず
朝からの小雨で唸るような湿気の中
お風呂をはじめとする各箇所のカビ取りは
一向に捗らないが
せっかくなので ....
午前、ほんの少し
台風があった
鉛筆を削る時によくやるような
些細な手違いが続き
新しい橋の開通式は
関係者とその親戚とで
執り行われていた
濡れた草むらには
観覧車が乗り捨てられてい ....
新しい童話ができました
美しくて優しいお話でした
子供たちは喜んで読みました
けれど一番夢中になったのは
大人たちです
雨上がりには虹が出ると
いつまでも信じ続けました
どこから ....
雨の形のまま
わたしたち、地下鉄で
産道を進む
透明に敷き詰められた窓
向こう側に続く暗くて
滑らかな景色
輪郭は線となり
わたしは葉っぱを並べる
あなたは選挙の人にもらった紙が
 ....
校庭でゼリーが息絶えていた
音も無く
オレンジ色の匂いがした
樹木の間から
整体、の看板が見えていた

看板が見えるのは校庭の高さが良いからだ
と、かつてあなた言った
それはここと ....
雲が空のように見えた
走り書き
眠たいだけが取り柄だった
バス停が点在するこの街で
列車の駅を見つけた
小さくて冷たい
それだけの駅
草の夢で躓いて
命を生きることにも
少し ....
夕方、アイロンをかけていると
背中のすぐ後ろまで
海は来ていた
昔と同じ懐かしい波音が聞こえる
泳ぐことは得意ではないけれど
波打ち際で貝を拾ったり
足の指の間にある砂が
引いて ....
窓を開けると五月の風と一緒に
校長先生が入ってきた
自分で握ったんだよ、と
おにぎりを食べてみせ
そのまま駅のプラットホームに並んだ
太陽の高さや空気の感じなどで
今日が午後であることはわ ....
幼い頃から崖があると
覗き込む癖がある
特に興味があるわけではなく
崖の下に何があっても
それはそれでよかった
街中
路線バスの中
会議の最中など
崖はいたるところにあって
時々 ....
右目がごろごろするので
鏡で確認すると
目の中に台風が発生していた
降った雨が可哀想な人のように
涙となって溢れ出した
眼科に行ったけれど
不用意に右目を覗いたお医者さんは
風で目の ....
私が私について語っている時に
兄が遠い県からやってきて
市民会館の職員と結婚した
つう、と言えば、かあ、なのに
我が子の名前を考えるのに夢中で、最後は
おまえに任せる、兄、つう
ラクダがい ....
わたしの洗濯機が洗濯を始めた
洗濯機は洗濯する音だけを立てて
幼い頃わたしが溺れたことのある海は
こんな音は立てなかった
玄関からだと遠回りですね、と言って
洗濯機を運んできた男の人は
 ....
町の外れに歩道橋ができた
町道の行き止まりのあたりで
民家はほとんどなく
小さい子供がいる地域でもない
町長の公約だから
それだけでできた歩道橋だった
町長は毎朝早くから
歩道橋の掃除を ....
未明のラジオ体操で
待ち合わせをしていると
あなたは幹線道路の方から
しろやま公園に入って
産声をあげた
町内会の会長さんは
壇上に上がり
体で体操をしている
お手本だから左右 ....
洗濯したシャツを畳んでいると
シャツに畳まれている私があった
痛くないように
関節が動く方向に畳んでくれた
畳み終えると皺に注意しながら
シャツはそっと私をタンスに仕舞った
衣替え ....
靴の波形が
朝に眠っている
せっかく書いた
花粉の名がついた遺書を
私たちは窓に落としてしまった
加工場から続くダクトの
先を曲がると
梅雨が始まる
身体が雨のようになる
そ ....
エスカレーターに乗って下りていく
一定の速度で
後から呼吸は追いついてくる
道に迷わないよう
所々に掲示された簡易な地図を
確認しながら下りていく
同じ段にはザリガニもいて
甲殻類に ....
窓の外に水溜りがある
水溜りは晴れている
天気のことや外のことが好きだった
十二歳くらい
それくらいに
固定されているものがあった
お向かいのベランダには
シーツの類や
名前のわか ....
英語のリスニングをしています
聞こえるものだけがゆっくりと
あたりを漂っています
味方はいません
けれど敵もいないので
リスニングは続きます
リピートして、あなた、もっと丁寧に
 ....
手荷物を運んでいる途中
手荷物の無い手で触って欲しい、と人に言われ
代わりに国鉄時代の記念切符をあげた
質感が気に入ったようで
喜んで人は去っていった
遠くから連れてきた犬を飼い
笑っ ....
強い南風だった
私は風になど飛ばされたくないから
作文を書いた
父は私が何をしても
優しい様子で褒めてくれたけれど
作文だけは
夜、眠る前に読んでいたようだった
下水道の早期敷設 ....
声を触っているうちに
忽然とある日ひとだった
言葉は貧弱だけれど
壊れることのない強さと温かみがあった
恋をしていたのだと思う、生きるということに
固形の身体と
呼吸はいつしか覚え ....
毛糸の陽だまりにも春は来ていた
健気に母が計算した数式は
今朝、消しゴムで消しておいた
経験だけではどうしようもない
結論や結果があって
けれども僕らは
健康な明日を願うのだった
 ....
草が夏を繰り返している
雲になることを空想していた少年は
九九の練習を終えた後
空港事務所の職員になった
苦痛ではない、けれど確かな痛みが
暮らしの中、靴にも降り積もっている
空気 ....
花の話をしていると
何で花の話をしてるんだろうね
という話になって
僕らが花だからじゃないかな
ということでよく見ると
お互いに花だったね
とわかって
笑って
咲いて
入学す ....
あなたは僕の大切な人
世界に向かって開かれた
僕の唯一の窓
僕の名を一番呼んでくれる人
僕の名を一番理解してくれる人
人生の半分以上をあなたと生きた
それでもまだ
あなたに触れよ ....
私たちの地下鉄は地下を進む
地下を進むからいつしか
地下鉄と呼ぶようになった
図鑑で虫の名を当てて遊び
折にふれ季節の果物を食した
軋む音、擦れる匂い
鼓動と呼吸の合間を縫って
 ....
駅からの階段を降りると
小さなバスターミナルがあった
植込みか歩道か曖昧なあたりで
蟻たちが作業をしていた
バス乗り場は三番線まであって
各所に行けるらしい
一番線から総合病院 ....
ニューヨークに人がいるね
ここはニューヨークではないけれど
人がいるね
ささやかな日々があって
日常があって
ニューヨークではないけれど
収集車が僕らのゴミを運んで行くね
話す時 ....
たもつ(1817)
タイトル カテゴリ Point 日付
夏の場面自由詩723/6/16 19:18
加藤さんにインタビュー自由詩5*23/6/13 18:32
台風自由詩223/6/12 12:47
童話(童話)[group]自由詩523/6/7 7:48
閃光自由詩10*23/5/31 17:41
準備自由詩3*23/5/30 17:41
水鳥自由詩223/5/26 7:11
背中に海自由詩423/5/25 6:57
失投自由詩423/5/23 17:43
夜空を見上げる理由自由詩623/5/22 12:09
目の台風自由詩323/5/20 19:07
干し草自由詩123/5/19 19:10
塩辛自由詩123/5/18 12:40
歩道橋のはなし自由詩223/5/16 17:47
未明のラジオ体操自由詩123/5/11 12:24
衣替え自由詩12*23/5/9 17:45
梅雨自由詩5*23/5/7 9:04
体温自由詩4*23/4/28 12:58
水溜り自由詩2*23/4/18 21:29
リスニング自由詩123/4/17 17:16
手荷物自由詩12*23/4/12 7:36
急傾斜地自由詩5*23/4/8 15:42
自由詩5*23/3/24 19:43
景色自由詩623/3/21 10:46
繰り返す夏の自由詩823/3/16 8:19
花の話自由詩523/3/3 22:07
あなたは自由詩123/3/2 7:39
地下鉄自由詩1023/2/20 18:57
バスターミナル自由詩423/2/17 18:41
日常自由詩322/12/28 7:13

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