砂漠の真ん中で
洗濯機が回っている
インド綿のシャツを着た官吏が
時々中を覗きにやって来る
 
飛行機が上空を通過する
やり場のないコウモリ傘や
目新しい嘘を乗せて
 
真夏日 ....
 
ページを捲っていくと
その先に
廃線の決まった駅がある
名前の知られていない従弟が
ベンチに座って
細い背中を掻いている
とりとめのない
日常のようなものは延々と続き
梅雨の晴れ ....
 
 
駅のホームで
卵が列車を待っている
やがて快速が到着すると
卵は意を決したかのように
勢いよく転がり
身投げをした
このことは明日の朝刊に
ダイヤの遅延情報とともに
小さく ....
  
ファミリーレストランで食事をしていると
同じ形をしたファミリーがやって来て
西の方角から順番に着座した
 
ブラザーはシスターに
シスターはマザーに
マザーはファーザーに
それぞ ....
 
 
味噌汁の中をラクダが泳ぐ
どんなに泳いでも
沖などあるわけがないのに

僕はボートに乗って
ひたすら豆腐を網ですくう
今晩の味噌汁の
具にするために

いつまでこんなこと ....
 
動物の名前を書いていると
人がやってきて
他人事みたいにほめてくれる

交差点のあちらこちらでは
初夏が観測され始め
立入禁止の札もまた
ゆっくりと音をたてている

このまま一 ....
波に揺られてクラゲたちが
選挙をしている

立会人の父を乗せた船は
月の美しい遥か沖に
沈んでしまった

僕は道路の繊維をほぐしながら
罪のない嘘を口ずさんでる

台所では
 ....
コンビニの灯りに集まるクラゲを
殺し屋はすべて撃ち落とした
その間にも人は計画を作り続けた
幸せになることはとても簡単だった
書いたばかりの遺書を握りしめて子供が走る
町はずれまで行 ....
海の近くに本が落ちている
頁をめくると
漁師町の屋根はどこまでも続き
伝えたいことは
すべて終わっている
誰に叱られることもなく
海鳥が飛び方を記憶している
バイクが走っている
私の名前を引きずっている
どうしてだろう
フェンスばかりが青くて
言葉は汗ばんでいる
買ったばかりの紙袋が風になびく
その側で人が笑っている
 
 
アパートに似た生き物が
背中を掻いている
古い窓を開ければ子供の声が聞こえ
秋の風も入るようになった

父が死に
母が死に
君は僕と同じ籍にいたくないと言った
もう昔みたい ....
 
自転車の花が咲いたよ
靴ひもの言葉で
僕は君に告げた
今日も生活の中で
信号は赤から青へと変わる
軟らかなコンクリートの
優しさに包まれながら
もう少し眠っていたいけれど
僕の身 ....
妻の誕生日に
新車を買って帰ることにした
プレゼント用ですか
と聞かれたので
綺麗に包装してもらった

走り出して
一つ目の信号にも行かないうちに
タイヤの辺りから
包装 ....
 
 
カモメが空を飛ぶ
カモメの目の中で
僕は溺れる
溺れる僕は
工事現場をつくる

工事現場で犬は遊ぶ
どうして産まれたのか
なんて、犬のことなど
人は気にしない

大 ....
 
 
夜、本から紙魚が出てきて
僕を食べる
文字じゃない、と言うけれど
紙魚はお構いなしに
僕の身体を食べる
だから負けずに
僕も紙魚を食べる
本当は枝豆の方が好きなのに
食べ続 ....
 
 
昆虫が窓を開ける
五月と
そうでないものとが
出て
入って
混ざり
離れる
言葉の中で
空はまだ
青く
美しいのだ
日用品と
出来立ての虹を買って
君が帰ってくる ....
 
 
カエルがサーカスをしていた
とても上手にしていたので
拍手をした
カエルは何事もなかったかのように
澄ました顔で水に戻った
その後、近所の銀行に行って
金融商品の説明をしてもら ....
 
 
5と6と7は同じ価値
かもしれないし
かもじゃないかもしれないし
シーソーに乗れば
5は浮き
7は沈む
高層の建物では
7は上
5は下
この6でなし
と言えば
5と7 ....
 
 
最近6なことが無いよ、
と7が言うので
6が無ければ7も無いんだよ
と言うと
7は5になって
軒下で雨宿りをする
押し出された5は
黙って雨に打たれている
水にも溶けないか ....
 
 
父は会社を辞めて
小さな薬局を経営していた
母は近くの
ガソリンスタンドで働いていた
僕が社会に出る頃には
薬局もガソリンスタンドもなくなって
父と母だけが残った
僕の仕事は ....
 
 
短い枕の中で
魚が溺れている
手紙を
食べ過ぎてしまったから

夏の道路を整備する
乾いた犬の
音が聞こえる
気持ちだけはいつも
敷地みたいに眠たい

ノートの中に
 ....
 
 
耳の奥の
遥か彼方から
青い空が
聞こえてきます
それが
歌でした

鳥は少しの記憶
むかしあったのに
触ろうとすると
水にも
よく溶けました

雲がぼんやりと
 ....
 
 
空飛ぶ円盤が池に落ちた
脱出した宇宙人は池に溺れた
溺れた宇宙人は池の鯉が食べた
その頃、僕は恋に落ちて
恋に溺れていた
今思えば、身勝手な恋だった
鯉が溺れなかったのが
唯 ....
 
 
川沿いを歩くと
ピクニックによく似ていた
共通の友達がいてよかった、
と話す

命のものと
そうでないものに
毎日は囲まれて
離れていくものにもきっと
誰かが名前をつけて ....
 
 
吐き出した言葉が
気泡になって
無人のブランコを揺らす
 
目を瞑ると
魚たちが
瞼を触りにやってくる
 
部品を捨てながら
自転車は走る
ただ一つの
点になるために ....
 
 
五月の窓がある
五月の肩幅になった
私が映っている
外には五月が広がっていて
部屋の中は
五月が凪いでいる
四月の私はもういない
確かに昨日までは
ここにいたはずなのに
 ....
 
 
昼休み、お弁当を開けると
中には凪いだ海があった
これはどうしたことだろう、
と電話をしても妻は出ない
それどころか、
海の中から聞き慣れた着信音がする
海が見たい、と言ってい ....
 
 
人が眠っている
僕の夢の中で

たぶん僕は眠っている
その人の夢の中で

無人の乳母車を押しながら
桜並木の下を歩く人がいる
置き去りにされた赤ん坊が
何も無い春に泣いて ....
 
 
駅前で女が
ヴァイオリンのように泣いていた

男がやって来て
指揮者のように煙草をふかし始めた

観客のように
人々は足早に通り過ぎた

銀色の魚が身を翻し

都会は ....
 
 
今年も年に一回の 
メリーゴーランドが
広場にやってくる 
君は朝から鏡の前で
お洒落に余念がない 
 
僕は教わったイチゴ水の
作り方を思い出しながら 
除草剤を作った ....
たもつ(1817)
タイトル カテゴリ Point 日付
真夏日自由詩1315/6/8 22:50
梅雨自由詩1315/6/5 22:58
遠足自由詩3+15/5/28 22:19
ファミリーレストラン自由詩815/5/25 22:57
味噌汁自由詩715/5/24 11:39
はげ自由詩415/5/20 19:30
選挙自由詩415/5/17 8:44
simple plan3自由詩914/3/30 18:53
simple plan2自由詩1214/3/24 18:39
simple plan自由詩814/3/23 18:27
電話自由詩2313/9/9 21:56
生活自由詩913/9/8 22:32
新車自由詩1013/6/18 21:29
海岸を歩く自由詩613/6/15 21:11
紙魚自由詩1013/5/16 22:03
息切れ自由詩913/5/12 19:50
終わりの春自由詩513/4/30 21:29
5と6と7と自由詩913/4/26 20:55
7,6,5自由詩813/4/25 21:51
家族の仕事自由詩713/4/24 20:04
草むらを走る自由詩613/4/22 20:07
歌は自由詩913/4/16 19:44
住処自由詩413/4/14 20:54
毎日は自由詩613/4/8 20:36
夕暮れは自由詩1213/4/7 22:49
肩幅自由詩413/4/6 18:46
海弁自由詩1613/3/26 21:21
春に見る夢自由詩413/3/24 21:08
都会魚自由詩713/3/23 22:10
メリーゴーランド自由詩413/3/21 20:06

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