夢の中でキリンと友だちだった
野原や森を走り回って虫とりをした
僕の運転でドライブした
キリンはサンルーフから首を出して
ご機嫌に歌った
作ってきたお弁当を文句ひとつ言わず
ウィンナーも卵 ....
背もたれが
椅子を飲み込んでいく
水槽の言葉で人は話す

たとえ古くても
あなたが好きだ
いつも日なたに
消えてなくならないから

またひとつ閉めらる
ガラスの窓がある
そして代 ....
 
僕の頭の上に
女王様が巣をつくった
重みに耐えていると
紅茶の良い香りがする
きっと紅茶を飲んでるんだろう
「まあ、きれい」
きれいなものは誰が見てもきれいだ
僕はずっと
死んだ ....
コピー機の隣に
幼なじみが立っていた
靴を片方なくしてしまったと
挿絵のように
静かに泣いていた

右手を左手首のあたりに添えるしぐさは
昔と同じ感じだった
野で摘んできた白い花を ....
薄く繋がる皮膚の下に
どこまでも空は広がっていた
その空の下には
同じくらいの大きさの街があった
その街で確かにわたしは
皮膚の持ち主だった
だから夕べ
知り合いの人たちに
なるべくた ....
アシカが来る
明日来る
手作りの案山子を抱えて
遠くはるばる
明石海峡をわたってくる
足からくる
お菓子屋とガス屋の間を
通り抜けてくる
明るい春の陽射しを浴びて
皮膚がゆっくり乾い ....
 
父は毎日仕事で帰りが遅く
平日は構ってもらえなかった
父は日曜日になるとキャッチボールをしたがり
僕はよく公園に連れて行かれた
普段からあまり活発な方ではなかったので
あまり楽しくはな ....
街外れのバス操車場の裏に
遊園地はひっそりとあった
中心には音楽を鳴らしながら上へと向かう
ゴンドラのようなものがあった
一番高いところに着いても
近くにある民家の壁や窓しか見えなかった
 ....
小さな神様が
春の雨に打たれていたので
傘をさしてあげた
神様はありがとうを言って
釣竿を垂れると
雨粒の中から
虹色の魚を釣ってくれた
魚は苦しそうに跳ねていたけれど
自分は誰も苦し ....
ぼくの隣
静かなきみのポケットに
たぶん幼い
春が来ている

手を入れれば
指先に形のない手触り
必要な幸福は
それで足りる

春になったら
そう言い続けて
ぼくらは今
何を ....
金物店の前の交差点に
洗濯機が横たわっていた
横断中に大型の車にでも轢かれたのだろうか
歪に凹んだ体や散らばった部品に
朝いっぱいの陽射しを浴びて
きらきらと言葉のように光っていた
生 ....
ノックをしてみる
と、きちんとノックが返ってくるので
僕は待ってる

春になって数回目の風が吹く
見上げる空の青さも
鳥の羽ばたきも
風にさらされている皮膚も
本当は多分
言葉でしか ....
 
 
眼鏡を忘れた
喫茶店に忘れた
雨が降っていた
それは喫茶店の外だった
どうしても、とやはり忘れた、が
喫茶店は三軒目だった
ジャンバーを着込んだ人が
すぐ隣を通り過ぎていく
 ....
 
空をさす小枝のような
父の指に
赤とんぼがとまる
お父さん
声をかけると
赤とんぼを残して
父は飛んでいってしまった
驚かせるつもりなんてなかった
いい年をして、と
笑われるか ....
 
話す声が小さくなっていく、朝
きみは一冊の
ノートになった

軽くなった身体をめくって
話の続きを書く
これからは大切なことも
大切、とは少し違うことも
こうしなければきみに届か ....
 
郵便局の方から来ました
と言い残して校長先生は
ぼくの枕を盗っていった

庭ではぼくを産んで
その後育て続けた両親が
淋しい冬の作業をしている
三年前、僕の腕を
きれいな形だと褒 ....
使い古されたピアノが一台
早朝の小さな港から
出航する

ピアノの幅、奥行、高さ
しかもたないのに
言い訳をすることなく
ただ外海を目指していく

誰もが自分自身のことを語りたがる
 ....
オープニング
どこまでも行く
つきあたりを右折
空港がある
  教師のAさん(仮称)は空港を黒板に板書していく
  重要なところは赤いチョークで
  重要だがそれより重要度の低いところは黄 ....
 
 
鳥として生まれ
鳥として逝く
その間にいくつかの
鳥ではないものがある

車の通り過ぎていく音を
人の小さな話し声を
洗濯物が風に揺れて触れ合う姿を
幸せと同等のものが包み ....
 
 
夜になると
鳥は空を飛ぶことを諦め
自らの隙間を飛ぶ

高い建物の立ち並ぶ様子が
都会、と呼ばれるように
鳥は鳥の言葉で
空を埋めていってしまう

知らないことは罪ではな ....
 
 
海賊が泣いていた
アスファルトの水たまりを見て
海を思い出していたのだろう

海の歌を歌ってほしいと言うので
何曲か歌った
関係ない歌もいくつかあったけれど
気づかれることは ....
 
長いものに
巻かれている
巻かれたまま
雨にうたれている
門柱に汚れた表札
無い
と思う

年末の大掃除の
音と匂いが
街を満たす
そんなに好きなら
大掃除だけしていれば ....
 
 
男の人が白い塀に寄りかかってる
ぼんやりした格好で
衣服には模様のようなものがついている
何をしているのか聞くと
誰かの夢の中なので勝手に動くことができないんです
と言う
かわ ....
歯ブラシを持って
弟がどこまでも走っていく
小さいころから助走をつけないと
歯磨きのできない子だった
誰よりも美しい
世界で一番の助走だと思った
最近人の目を見て話ができるようになった ....
時計は空を飛んだ
時間のことなどすっかり忘れて

町工場の青い屋根と
遊園地の小さな乗り物と
チャペルへと向かう花嫁が見えた
風景はずっと続いているようだった

やがて良い感じのする原 ....
 
 
瞬きをすると虹が溢れてしまう目があるので
笑うと発音しないPを吐いてしまう口があるので
まだ誰にも褒められたことのない君が
冷蔵庫に自分の耳を並べている

僕は機関車と同じ匂いの ....
指専用のバス停に
思い思いの格好で指が並んでいる
やがて指専用のバスがくると
指たちは順番に乗り込んでいく
おそらく指にしか
行けないところがあるのだ
慰めが必要だったのは
本当は誰だっ ....
乾電池が足りない
と昨夜寝言を言ったあなたは
夢の中で久しぶりに
何を作っていたのだろう

今日は朝から雪が降ってる
あなたの故郷のように
たくさんではないけれど

もう誰も
あな ....
薄い網戸の向こう
何かの割れる音がする
今日は朝から寂しいものが降っているから
話しかけるみたいに一日を生きたい

消えていくシャーペン工場で作られた最後の一本が
同じ価格で店頭に並ぶ ....
どこまでも伸びていく高層ビル
の死体が落ちていた
凶器の不完全な空が
垂直に突き刺さっていた

その空は途切れ途切れに
けれど果てしなく広がっている
という噂話を
人々はこよなく愛 ....
たもつ(1817)
タイトル カテゴリ Point 日付
夢のキリン自由詩908/4/4 14:11
古事記自由詩1208/3/27 19:32
景色自由詩1408/3/26 17:37
挿絵自由詩1208/3/22 12:28
さよなら自由詩408/3/21 8:53
アシカ自由詩308/3/17 18:54
卒業式自由詩26*08/3/15 10:52
百合自由詩1108/3/13 18:55
神様自由詩12*08/3/11 8:38
裏木戸自由詩3008/3/7 13:16
黄砂自由詩808/3/4 19:42
ノック自由詩2408/2/27 11:04
待つ自由詩208/2/21 16:47
赤とんぼ自由詩2908/1/29 14:33
軽い身体自由詩2108/1/28 11:13
後姿自由詩408/1/23 17:36
沈黙自由詩1908/1/16 11:16
オープニング自由詩808/1/9 22:21
鳥の間に自由詩708/1/6 16:29
鳥の隙間自由詩24*08/1/3 9:27
大晦日自由詩1507/12/31 12:15
見送る自由詩607/12/27 8:59
夢を見る人自由詩1407/12/24 18:34
助走自由詩907/12/23 19:02
準備自由詩907/12/18 19:47
機関車とくじら自由詩1307/12/16 12:34
窓ガラス自由詩1207/12/12 18:55
スノードーム自由詩1307/12/10 20:13
網戸自由詩807/12/9 13:37
証拠自由詩1207/12/7 11:42

Home 戻る 最新へ 次へ
14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 
0.44sec.