深夜0時
訃報が届いた
別に特別親しいわけでもなかったが
よく世話にはなっていた人
多分俺なんかよりずっと長生きする
そんな確信じみた思いすら抱いていた
そんな人があっさりと逝ってしまった ....
白い粒が視界を埋める
朱の浸食が終わり
黒の支配が始まる
茶色の世界を白く染めあげ
灰色の鎌が嘲笑う
もう痛みはない
もう疲れはない
不意に蜜柑色の影が
....
今この瞬間
この世界を壊してしまいたい
明日の自分
今日の自分
昨日の自分
すべてを積み木の城を崩すように
なにもかも壊してしまいたい
でもそれは叶わぬ夢
....
『生きることに疲れました』
生きることの何に疲れたんですか?
勉強ですか?
仕事ですか?
人間関係ですか?
それとも社会ですか?
勉強が嫌ならしなけりゃいい
....
夜の公園を一人歩く
渇いた靴音が暗闇に響く
だが渇いていたのは靴音だけではない
いつからかなんて覚えちゃいない
随分と前からかもしれないし
つい最近のような気もする
....
夕暮れ時
十年近く行ってない
お気に入りの場所へ行ってみた
昔は三十分もかけて歩いた道も
今では二十分足らずで着いてしまう
この場所から見るこの景色が
どんなものよ ....
水色一色で塗り固められた空
そこは一切の混じりもなく
澄んだ世界が広がる
鋼鉄の塊が通ることもなく
小さな鳥達すらいなくなった
空は常に黙し何も語らない
....
道を行くその途中で
名も知らぬ小さな花に
私は恋してしまった
その場で咲き乱れることなく
その存在を誇示することもなく
ただひっそりと
そこに一輪だけ咲いていた貴女 ....
都会の喧騒が疎ましい
だけど私は街を歩く
アスファルトからの跳ね返りが痛くて
路地裏へと逃げ込んだ
ポリバケツから虫の音が耳に届く
涼やかな音色が路地裏に響く
彼等 ....
つい
自分に残された時間は
どれだけなのだろうと
考えることがある
十年先
一年先
明日
もしかしたら一分後かもしれない
だから私は
今したいこと ....
彼の何気ない言葉で僕は傷つき
彼女の何気ない言葉で僕は怒り
あの子の何気ない言葉で僕は笑い
君の何気ない言葉で僕は癒され
僕は
言葉に踊らされ
僕は
言葉に縛 ....
今宵もまた月が満ちてきました
さ、唄を歌いましょう
この時間の空気はゆっくりと冷えてきて
昼間の暑さがウソのように溶けていきます
世界は藍色に染まり
空には散りばめられた ....
細長い三日月の船に乗り
私は夜を漕ぐ
辺りには小さな島大きな島
それは人々の儚き夢
その一つ一つに明日が詰まっている
私の明日は何処だろう
闇色に染まってた私の躰
....
悲しみに暮れる街並み
小さな水の粒子が彼女の頬をそっと濡らしていく
その涙は誰のため?
霧雨が街を
真っ白な彼女の喪服を濡らしていく
雨足が強くなる
その涙は誰のた ....
総ての物に内包されたソレは
等しく対等な季節の流れに身を委ね
いずれ訪れるであろう崩壊の刻を待つ
ある者はソレを畏れ
ある者はソレを歓喜し
ある者はソレを退けようと無駄な ....
月夜の晩に
風が優しく
私の頬を撫でていった
冷たく涼しい風は
ほのかに
夏の匂いを含んでいた
木々の葉が
海の波が
田の稲が
夏の訪れを囁きあう ....
しとしとしと
空から暖かな雫
大地に降り注ぐ
しとしとしと
それは山を濡らし
花を濡らす
しとしとしと
花を濡らした雫は
数多の香りを纏い
....
抜けるような蒼天の下
君は籠の中なにを思う?
羽を広げる場所もなく
餌と水のみを与えられ
大空羽ばたく仲間たちから隔離され
飛び方すら忘れてしまった
君は籠の中なに ....
昨夜まで隣に寝ていた君は
今朝にはもういなかった
貴方は旅の渡り鳥
風の向くまま気の向くまま
そんな貴方は渡り鳥
旅のお供は空と風
街から街への渡り鳥
捜し物 ....
朝
目が覚めとき
空は曇っていた
昼
休み時間
まだ空は曇っていた
夜
床に着く頃
そのころになっても
まだ曇っていた
ふと
目を閉じ ....
ようこそいらっしゃいました
わたくしどもはこれから宴を開こうとしていたところなのですよ
どうです?
貴方も御一緒に
遠慮することはありませんよ
何せ此処にお集まりの皆さん ....
ふとしたきっかけからの君との再会
君は僕を覚えているかい?
僕は一時として君を忘れたことなんてない
君と過ごしたあの日々を
君が見せたあの笑顔を
でもそれは……
忘 ....
窓に映る自分を見てた
隣の彼女は何かと話し掛けてくる
向かいのおばさんは世間話に興じている
何もかもが嫌だった
何もかもが鬱陶しくて……
自分でもわからないものに苛立って ....
こんばんは
『やぁ』
傷、痛くないかい?
『もうね、死んじゃったし』
ごめん
『なんで君が謝るの?』
同じ種族だしさ
『でもやったのは君じゃないんだよ?』
....
今宵はクリスマスである
世の恋人達は連れ添って
街へと繰り出すのだろう
私の町には雪が降らない
だからもちろん
『ホワイトクリスマス』
なんてものはほとんどありえな ....
電車の中で
窓に映る彼の顔を見つけた
目は虚ろで
その顔からは生気を伺うことはできなかった
「笑いなよ」
そう思ってみる
「何そんな不景気な顔してるの」
そう ....
いつの頃だったか
彼女は
「この世界は匣庭のようだ」
と、いった
あの蒼く澄んだ空も
あの色とりどりに染まった山の紅葉も
あの空に輝く月や星々も
すべてが見え ....
薄暗い部屋の中に一つ
薄汚れた小さな匣があった
その匣は幾重にも封がなされ
絶対に匣が開かないようにされていた
すぐ向こうから何人かの男女がこちらへと向かってくる
……
....
あるところに一人の男がいました
その彼は罪人でした
しかし彼はどこかの国の法に触れたわけではありません
彼自身の定めた約束を果たせなかったのです
彼は想います
「何故あん ....
いま目の前に
浅い
しかし広い水溜まりができた
やがてそこには
緑か芽吹き
足首くらいの
浅い海となった
しばらくすると
浅かった海は
私の身長ほどの
深い海となった
....
1 2
0.38sec.