あじさいの花びらがもうどんな雨がやって来ても
救いようもないほど傷んでしまう7月にもなると
電線に無数の皺が浮き出して
これも手のつけようのないくらいに撚(よ)れて撚れて
ほんとうの姿が剥き出 ....
あなたに贈りものがあります
送り主のなまえのない
誰に宛てたか 相手のなまえも書かれていない
不思議なプレゼント でもそれは
たしかにあ ....
うすももいろの花びらが
いちまい その色のまま おちる
その ひとひらは かるすぎて
ことばも おちる
初夏の陽射しに刺し貫かれ
薄片(はくへん)は
くものまの 空に吸われ

いちまい ....
長く 細い
透き通った階段を
降りていった

さっきまで
長く 長く 昇ってきたのに
 ....
空が生クリームをあわだてたようだから
もうすぐ雨がおちてくるころ

ぼくの足もとは
草原の小径にかわり
土のにおいが 近づいてきた

傘をひらくと傘のなかに
しずかな足音がひびいた
 ....
「おとうさん」

「おかあさん」

「ありがとう」

 ね

 なんて ふふ

「うそ」だよ

「お」 も

「あ」 も

 久しぶりに 言ったね

 アルコール
 ....
ひとはとしをとれば しんでしまうよ
どんなに ながいきしても
いなくなるよ
うつくしいひとも ふつうのひとも
せのひくいひとも ようきなひとも
としとれば としとらなくても
ひとはしんで  ....
きみはぼくの知らない
とおくを見つめて
あの道を
背すじのばして
進んで ....
学校には開けることのできない
扉がありました
旧校舎の階段の裏のあたり
七つの南京錠のかけられた扉でした
錠のひとつひとつに一匹の蜘蛛が巣をかけていて
人の手を遠ざけて 日曜日になると
し ....
毎日 雨の七月は
すずしくなるのはともかくとして
どことなく 鬱々として
なんだか 人生の遠景みたいです 煙っていますし

そんな気もしてくるんですけれど でも七月だから
庭に道に花は咲き ....
あたたかい雨の季節にこがれて
梅の実は ほそ枝に寄り添い
みどりいろの葉陰を肌にうつして
いっそう深い みどりに染まりながら
かぜに ゆれていた

「あたたかい雨は いつになるだろね」
 ....
あわあわ ぶくぶく
かには おでこが ひろいぞ
ひろい ひたいが なやんでるみたい
あおさめてるのは
柿の木のせい なんだろか

ぶつぶつ 言ってるのは
ひろい おでこが
ちょうどいい ....
ちゃん をつけて
呼ばれてた
こどものころに
たくさんの人から
父の声 母の声
いとこに おばに
友だちの声
ちゃん がひびいてる
ちゃん の呼び名が
この身に 耳に ついている
 ....
夕暮れてゆく空に
雲はただよう
見上げると
まるでこころのように
どんなかたちにも 見えない
どんないろにも 見えない
ただ流れて ゆれて 暮れて
なんてしんみりとしているだろう
振り ....
くちびるを

ささやきが 漏れでると

くちびるを

漏れでた ささやきは

ちょうどその時 部屋にある

オレンジ色の ひかりになる

それから 部屋の空気を

豊かにし ....
エレヴェータ に乗っている
ねても さめても いつでも
エレヴェータ の透明なガラスは
都市の骨を映し出して
エレヴェータ は昇る
いき あっても いきたえていても
エレヴェータ は香りに ....
また生きている

いまはもうないぼくのうちの
おもい雨戸をごとごといわせて
ようやくに閉めていると
ガラス窓がひび割れた音を立てる
夜の闇に音が駆け出す
入れ替わりに隙間から
夜気が静 ....
森をゆく足音は割れていて
でもそれは 決して
壊れてゆく訳でもなく割れていて
それはいくらか湿っていて
でもそれは 決して
濡れている訳でもなく湿っていて
微かに遠のくように響き
でもそ ....
日曜日
春が冷たい手で触れるから
さわられたぼくは立ち竦む

でも 散ってゆくものを
追いかける道は見つからない
東京はどこもかしこも
アスファルトで
ぼくたちの走る土は
見当たらな ....
あした て何だっけ
陽が昇ると それは朝 て気がするんだ
確か 記憶では
でも 暗いときもあったような気がして
それも朝だったように 思い出されて
朝 て何だっけ

あした て何だったか ....
おい 影
お前が眩しいぞ
その日々肥え太ってゆくお前の頭骨の
果てしのない蠢きが
輝かしい明日の空の白銀の雲のように見えるのだ

おい 影
お前には頭が下がる
そうして地に這いつくばり ....
今そこで
足音がしていたので
どこかに行こうとしているのだと思って
それは廊下の突き当たりにある部屋の中の
粗末な机の前なのかな
と思ったりもするが
その足音は
始めはせわしなく廊下を踏 ....
 詩を書くことと詩を読むこととは違うのだろうか。今、私がやっている「詩を読むこと」は、自分がやってきた「詩を書くこと」とは少し違っている。それはそれで良いことなのか、それともそうではないのだろうか。
 ....
ずっと寝ているんだ ぼくは
ふかふかの布団の中で
地球と一緒に

月が東の空を駆け昇るよ
西の空を駈け降りるよ

風が優しいような顔をして
ぼくを揺すり起こすけど
ぼくは我慢を続ける ....
遠い記憶よ
まぼろしの子に向けられた 狂おしい眼差しよ
おお 歩みくる子の哀しげな純情よ
抱きとめんとする刹那 走り去り
はるかな雲の記憶の内に 瞼を閉ざす
まだ 追いかける眼差しがある
 ....
なぜ これほどに哀しいだろう
秋は雨粒の輝きのように
軽々と走り去り
数々の贈り物を
私の町に残していった
その道を
にこやかな天使が歩み来るのに

あなたが私の朝となり
あなたが私 ....
青空だった
そこに一塊りの黒い雲が
漂うのだった
漏れでた存在の気品
のように流れ去るそこ
その空間に
手元から立ち昇る灰の揺らぐような
誇り高き 気品
取り巻いていたわたしたちの
 ....
刑部憲暁(27)
タイトル カテゴリ Point 日付
7月自由詩312/2/11 22:15
プレゼント自由詩112/2/11 22:09
はなびら自由詩010/5/13 19:10
青い薔薇自由詩307/11/9 21:56
自由詩407/8/31 19:06
「  」自由詩106/3/17 19:27
たぶん自由詩206/3/13 21:27
ぼくはさ自由詩106/3/11 22:11
学校自由詩206/1/15 10:49
雨が好きなの自由詩205/11/12 22:08
「梅の実」自由詩905/7/20 22:00
あわあわ ぶくぶく自由詩105/5/15 22:39
ちゃん自由詩004/12/25 21:39
自由詩404/11/25 9:44
自由詩404/11/4 14:31
エレヴェータ 自由詩604/9/28 6:40
また生きている自由詩504/8/30 18:21
森をゆく足音自由詩604/5/14 21:02
ゆく春に自由詩204/4/18 7:38
あした自由詩404/3/21 18:01
自由詩104/2/27 21:29
足音自由詩304/2/23 21:36
詩を書くことと詩を読むこと散文(批評 ...404/2/19 21:02
無題自由詩004/2/11 20:10
「詩人辻征夫に捧ぐ」自由詩204/1/5 10:30
なぜ これほどに自由詩203/11/28 18:55
焼き場にて自由詩203/11/13 21:16

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