凪いだ湖面は穹
白色の羊雲に
そうっとつまさきを乗せる
溶け出した肌色
ペティキュアの赤色が
波紋に引きずられるように
湖岸に打ち上げられるのを
静かに見つめながら
わ ....
赤に黄に僕の空を染め上げた
染め上げていたその欠片
欠片はアスファルトの上、ガサリ
ガサリと老いた祖父の手
手の皮膚の色と手触り
手触りすらもやがて朽ちて
朽ちて残る細い細い骨 ....
優しい歌になれ
赤子をあやす
母親の子守唄のように
美しい旋律を奏でる
きみの笑顔よ
優しい歌になれ

孤独の闇に眠る誰かの
あるいはそれはきみの
その心に届くのは  ....
梅雨を横切る
あをいそら
濡れた地面を蒼く染め
少女が被った麦藁帽子
雨をなみなみ閉じ込めた
水玉模様リボンを掛けて
口ずさむのは夏の風
海面アスファルト
踊る靴音五月 ....
海だった

湿度百十五パーセント
水蒸気の飽和したの六月の風
ビルに囲まれた灰色の世界に
潮騒と潮の匂いを届ける
風が吹き抜けるこの街は
海だった
気付いた君
ぬめつ ....
球体がこの世界に生まれる以前
人々は己が躰を傷つけながら宝飾品を纏い
雨は刃となって降り注いだ
ただ一つ存在を許された球は
人の眼窩に嵌め込まれた麗しき宝玉
眼球に記録されし世界の歴史
繰 ....
見上げれば透明なアクリル
水色の水彩絵の具
四時間後の空
連れてきたアキアカネ

薄く積もった白
描くのは乙女の髪を梳く風
乗せられてきたあえかな鈴の音
今や懐かし夏の日 ....
焼け蒸したアスファルトの
ざらついた風が人を攫い
ぼくを独りとり残す

カラン カラカラ
下駄が鳴らした残響に
道に落ちた綿菓子の
わりばしに集る蟻々に
砂利で跳ね  ....
配られた答案用紙
並んだ難解な問題も
複雑な方程式で
幾つかの整数で回答できる

だというのにわたしは
まだ書けないのでいるのです
用紙の右上区切られた四角の中
使い慣れ ....
姿を現した下弦の月は
その身に赤いワインをなみなみ{ルビ湛たた}え
少しずつ傾けながら一滴二滴
色の無い世界が浸るまで
あの子の涙が染まるまで

夜の終わり色を失くした月高く
 ....
銀色に輝く
紋白蝶の魔法の粉
きらきら

どれほど集めれば
自由に羽搏けるといふのでせうか
あをいそら

一枚二枚
母の髪を梳くやうに
幼い私
蝶の翅をもぎ取る ....
晴れた休日の朝
シャベルで宙を掻いている男に出会った
都会の街中の少しだけ開けた場所
陽光は空気中の水分に乱反射し
景色に鮮やかな色を落としていた
平和すぎる風景の中
男はシャ ....
夜が控えめな口で笑っております
ニコリと、いえニタリと
時折墨色のハンケチで覆い隠しながらも
笑うのをやめようとはいたしません
ウフフと、いえキヒヒと
奇麗な弧を描く口元に見惚れ  ....
トンテンカンテン
ボクはおもちゃの工場長
トンカチひとつふりおろし
ボクがつくるブリキのおもちゃ
ヒトのまねしたブリキのおもちゃ

みんないつでもニコニコえがお
だけどコイツ ....
見上げてみろよ
穹は鉛だ
のっ、ぺり とした 灰色!
今にも落ちてきそうだ
灰色! の穹に潰されるってのはどんな気分だ
灰色! の穹は重いのか 灰色! の穹は熱いのか
灰色!  ....
     一

春をあげるよ
ツバキの葉にうっすら積もった春を
人差し指でそっと集めて貴方に
栞にしてみてはどうだろう
本を開くたび春の匂いが漂うように
カーテンにしてみるの ....
コンクリートは今にも融けだしそう
足下はすっかりぬかるんでしまって
降り続く雨のせい

ズボンを汚らしく染め上げた
地面を弾いた雨粒が
おぼつかない足取りで俯いた僕の

ビ ....
雨散らし喰われていく
薄紅の肌を持つ裸身の乙女
恥じらいを知り
萌黄の衣で己を隠す様に

汚らしく割れていく
白磁の肌を持つ少女の抽象画
{ルビ徒夢=あだゆめ}と知り
{ ....
「彼はなんと答えましたか?」

 『彼は』、と言おうとしたとき、『私は』という言葉が重なって出た気がした。しかし女には普通に聞こえたらしい。

「あの人は『僕は生きるために捨てた』と答えたので ....
おそいおそい冬の訪れ
あるいはそれは
いつの間にか駆けて行った冬の残り香

遅咲きの梅花
早咲きの桜花
世界の色は鮮やかに
春待ち人の思いは賑やかに

そこに舞い散 ....
「あの人?」

「えぇ、あの人。その髪もその口もその耳も貴方はあの人にそっくりだわ。だけど、やっぱり、眼が違う。貴方はまだ捨てていないのですものね。貴方の眼には、光があります。喜びや悲しみといった ....
 暖炉が凍った身体を幽かに融かし始めた。

「いつだったかしら? アレを捨てたのは。もうあんまり憶えてないんですの。だってそうでしょう? 必要なかったから、大切ではなかったから捨てたんですもの。そ ....
お日様の顔が上気しているのは
一日の仕事を終えて
お酒を飲んだからでしょうか
赤い赤いお日様に中てられて
おじいさんとおばあさんも
僕を残してお家に帰ります
「今日もよく働いた ....
「えーん、えーん」

なきむしのさっちゃんは
きょうもないています。

「えーんえーん、おかーさぁん」

なきむしのさっちゃんは
なきたくなると
いつもおかあさんのところ ....
真っ赤な靴を履き
真っ赤なドレスを纏い
真っ赤な髪留めをつけた
真っ赤な美しい女の
そのくちびるはなぜだかいつも
半分だけ真っ黒でした

女は
いつもの酒屋の
いつも ....
黒くすきとおる
きれいなみず
かっぷの底まで
みとおせて

すぷぅんでひとすくい
口にはこびます

こどものわたしには
とてもにがくて
なみだがでます

だから ....
ヒトのあかちゃんはね
うまれてくるときに
りょうてをにぎりしめて
うまれてくるのよ
ぎゅ〜って
それはもう
すごいちからで

それはね
このせかいにうまれてきた
 ....
魔法使いという名のおばあさん
今日もゆぅらり揺り椅子で
黒猫撫でてお茶飲んで
お日様相手にうたた寝してる
空飛ぶ箒に引っ掛けた
雨呼ぶ帽子もゆらゆらと
風に{ルビ戯=あ ....
陽気の中で囀る小鳥
陽気に響くその歌声
あてつけのように

心待ちにしていたのは私
軽やかに舞い踊る水色の空気
柔らかに頬を撫ぜる緑色の風
そこに見つけた新たな季節
 ....
幼き日
草むらに寝転がり
背中に土の感触ひんやりと
地球を背負い
太陽に翳した小さな手
肉と血を朱く透かしながら
太陽は皮膚の中に溶け込み
僕の顔を赤く染めた

時を ....
朝原 凪人(32)
タイトル カテゴリ Point 日付
文書グループ
掌編小説『しゃしんの女』文書グループ07/5/19
投稿作品
入水回帰自由詩6*08/6/29 0:43
遺影自由詩1*08/6/22 13:42
優しい歌になれ自由詩5*08/6/19 23:03
嗤う梅雨自由詩6*08/6/15 20:56
水風自由詩7*08/6/14 22:19
balloon art earth自由詩0*07/11/10 18:06
あきいろ自由詩507/10/15 22:22
『祭り後』自由詩207/9/2 11:33
まだ書けない自由詩507/6/24 21:21
月が死んだ理由自由詩6*07/6/21 22:08
搾取自由詩8*07/6/15 22:00
空を掘る自由詩5*07/6/10 19:05
二日月自由詩7*07/6/9 10:45
ふぇいく自由詩407/6/4 21:49
灰色オセロ自由詩2*07/6/2 0:33
春憬自由詩8*07/5/27 0:56
水玉世界自由詩607/5/26 11:43
侵緑自由詩307/5/23 21:20
掌編小説『しゃしんの女』 〜下〜[group]散文(批評 ...107/5/21 21:26
名残り雪自由詩607/5/20 12:58
掌編小説『しゃしんの女』 〜中〜[group]散文(批評 ...107/5/20 1:26
掌編小説『しゃしんの女』 〜上〜[group]散文(批評 ...107/5/19 14:40
案山子の観る風景自由詩207/5/19 11:01
絵のない絵本のような散文(批評 ...1*07/5/15 20:27
赤ノアイ自由詩2*07/5/12 14:16
ぶらっくこうふぃ自由詩0*07/5/10 20:38
それは母の読むおはなしのように自由詩4*07/5/8 20:11
優しい魔女狩り自由詩5*07/5/7 22:13
追憶自由詩3*07/5/6 15:55
透けえぬ光自由詩207/5/5 9:52

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