夜更け
車窓に映るわたしの影
扉にもたれて
窓外を見ても
映っているのは
疲れた車内
電車を降りれば
きっと夜風が吹いていて
わたしをやさしく家まで連れ帰ってくれるだろう
け ....
10センチしか
開かない窓と
網格子のガラス
誰も逃げ出さないよう
注意を重ねて
それなら
私が私から
逃げ出さないよう
力を貸して
もう
あっちの世界に
還 ....
どうせなら
完全に見捨てて
おねがい
半端にやさしくしないで
やさしくするなら
もっと
明日が
世界の終わりだといいな
なにもかも
誰もがいなくなる
ううん
やっぱり
いなくなるのは
わたしだけでいいかな
終わりの日は
もうすぐそこに
ある気がしてるの ....
精神病院に
ずっと閉じ込められていると
雨にうたれたい
日の光を浴びたい
霧の中を歩きたい
足の裏で
土の感触をたしかめたい
なんて贅沢な時間だったんだろう
自由って
....
ずっと
雲に話したいことが
あるの
でも雲は
なにも話さないの
聞いてくれてるのかな
パンドラは慌てて箱を閉めた
希望だけを中に残して
ロトの妻は思わず振り返った
ソドムの滅亡を自身確かめるために
ノアは箱舟を作った
自身の家族と動物たちを載せ
その扉は神が閉め ....
あたしの傷口
なめてみて
きっと
すごくしょっぱいよ
塩がたくさん
塗りこまれてるから
白いばらは
青い水を与えられて無理に
青いばらに
わたし
何色に染まってるんだろ
あのひとの色や
今日出会ったひとや
今までに会ったひと
そんな色彩に染まって
わたし
自分が何色か
わからない ....
濁った太陽が
地上に灼熱の渦をもたらす
手にしたソフトクリームは
一瞬にしてドロドロに
アスファルトはうねり
猫は爪先立ってそっと歩く
消費電力はうなぎのぼり
エアコンの熱風が
....
夜のまんなかで
佇んでいるあのひとを
みつけた
何ヶ月ぶりなのかな
なにも考えられなくて
考えるなんてとても無理で
でもこれは
必然でも運命でも偶然でもなく
ただそこに ....
たいせつなものが
ばらばらになっていく
もしかしたら
拾い集めて
いつか
きれいな連なりに
眠れなかった寒い朝には
あったかいココアなんか
飲みたいな
ふたり
ひっついて
離れないで
パジャマ着たままで
そろそろ出かける時間だなんていいながら
はやく着替えなきゃなんて ....
病院内で知り合った
女の子が
儚くなった
茶色い長い髪を
くるくるとカールさせて
フリルやレースの
かわいい洋服を着て
いつも微笑を湛えていた
その彼女が
もうい ....
たぶん
わたしは退院したら
ポッケに手を突っ込んで
口笛吹いて
どこまでも歩いていくだろう
ポッケは空っぽ
だって
もう怖いものは
なんにもないんだもの
どこまで ....
仰向けになって
ずっと天井を見てると
なにか
いろんなものに見える
小さい頃の
熱を出した時のように
あの点とこの点を
くまにしたり
小鳥にしたり
だけど
点と ....
ぽつぽつと
雨のように
私の体に入りこんでくる液体
ひと雫
ひと雫
数えるのにも
飽きてしまった
ゆっくり過ぎていく時間
1日
1日と
数えるのも
もう
飽きてしまった
明日は来なくても
....
うさぎが毎日ついてるお餅
食べてみたいな
きっと
ふんわりやわやわで
ほんのりあったかくて
やわらかな光を湛えてるのかも
だって
あんなに毎日
うさぎがついてるんだもの
小さな
天窓から
刺す光
この光が
こころを
蘇えらせてくれるのか
この
切り取られた空が
夕暮れに浮かぶ
大きなお月さま
きっと
あのお月さまは
夜中になれば
やさしい灯で
この街を
包んでくれる
やさしい灯が
病室にも
射し込むだろう
たぶん
私の眠りを
見守るように
精神科病棟に
閉じ込められた私に
夜景が美しすぎて
これは
天使の迎えを
失敗した罰
神さまは
私を
見捨てたんだろう
神さまが
もう いいよ
って
言ってくれるまで
わたし
待ってる
天使の迎えを
何十年も
他人の話を
盗み聞きしてきたソファに
座ってみた
革はただ
つやつやして
知らん顔して
深く深く
うけいれてくれた
でも
今日は
盗み聞きできないよ
だってわたし
独りで座ってる ....
あまりにも
刻が過ぎるのが
早すぎて
すっくと立った
一本の大木
何十年も
独りきりで
淋しくても
動くことさえ
できないんだ
あとどれくらい
独りでいなきゃ
ならないんだろ
泣きながら眠った
秋の夕暮れ
深夜に起きて
鏡を見て
あぁと失望
こんなむくんだ顔
誰にも見せられない…
と思って
気がついた
明日は日曜日
いいや
また存分に泣いて
眠ることにしましょ ....
やっとの思いで
いちばん下まで
堕ちて
堕ちて
それでも
そこも
誰かの気配が
ざわめきが
誰もいない
暗闇さえ
ない
名も無き花。
なんていうけど
ちゃんと誰かが名前をつけてあって
どんなものにも
名前がついてる。
どうにもならない気持ちだって
どうにもならない気持ちっていう
名前があるし
....
諦めと
手をつないだ
諦めはやさしく
とても甘美で
でも
まだ
溺れきれないわたしは
悪あがき
こころに
貼るものが欲しい
まだ
瘡蓋さえ
できてないから
夏は
出番が過ぎたのか
まだいてもいいものか
わからずに
うろうろと彷徨っている。
秋が後ろからせっついて
夏は途方に暮れる。
もういいから
夏よ、おやすみ。
ゆっく ....
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